『ムーンライト』『レゴ(R)バットマン ザ・ムービー』ほか、4月のおすすめ映画ガイド<洋画編>

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映画『ムーンライト』(C)2016 Dos Hermanas, LLC. All Rights Reserved.

映画ライター岸豊がおすすめ作品を紹介する連載の第5回。今回は4月に公開を迎える洋画作品から、アカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』、ケネディ大統領暗殺後の夫人ジャクリーンの知られざる姿を描いた『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』、『レゴ(R)ムービー』に続く「レゴ映画」の最新作『レゴバットマン ザ・ムービー』、名コンビが放つ脱出パニック・アクション『バーニング・オーシャン』の4本をピックアップ。それぞれの魅力を紹介する。

『ムーンライト』(公開中)

新鋭のバリー・ジェンキンズ監督が、タレル・アルヴィン・マクレイニーの戯曲をもとに、孤独な少年が大人になるまで、そして彼が胸に秘め続ける愛を3つの時期に分けて描く感動のドラマ。

特筆すべきは、アカデミー賞・脚色賞を受賞したジェンキンズ監督による脚本である。ジェンキンズ監督は新人離れした作劇によって、意図的かつバランス良く物語に隙間を空け、この隙間をキャラクターそれぞれが経験した出来事や心境の変化を匂わせるための小道具として効果的に機能させている。この「隙間のテクニック」が特段の輝きを放つのは、物語のラストだ。主人公のシンプルかつストレートな告白によって、それまで空けられていた隙間にピュアで美しい想いがはめ込まれ、物語は1つのピースとして完成される。この瞬間に生まれる爽やかで心地よいカタルシスには、「こんな映画を見るために、私は映画を見るのだろう」と実感させられた。主人公を演じ分けた3人の俳優を筆頭に、主人公の恩人にふんしてオスカーに輝いたマハーシャラ・アリ、主人公の母を怪演したナオミ・ハリスらの演技も極上。

『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』(公開中)

かつて『ブラックスワン』でオスカーに輝いたナタリー・ポートマンが、チリにおけるピノチェト独裁政権の恐怖政治を描いた『NO』で知られるパブロ・ラライン監督とタッグを組み、ケネディ大統領の暗殺後のジャクリーン・ケネディ大統領夫人の姿を描いたヒューマンドラマ。

葬儀に至るまでの数日間にスポットが当てられているため、ジャクリーンの人間的な変化は深く描かれないが、「夫を亡くした妻」と「大統領夫人」という二つの立場の間で揺れ動くジャッキーの感情の機微を、危うく、美しく、そして繊細に表現したポートマンの演技は、『ブラックスワン』で見せた熱演同様、見る者の心をつかんで離さない。今は亡き名優ジョン・ハート(『ハリー・ポッター』シリーズのオリバンダー役など)が投げかける含蓄のあるセリフや、マデリーン・フォンテーヌ(『アメリ』『イヴ・サンローラン』など)が手掛けた美しい衣装も見どころだ。

『レゴ(R)バットマン ザ・ムービー』(公開中)

ハリウッドで最もアイコニックなキャラクターの一人であるバットマンを、レゴの世界観に落とし込んだギャグアニメ。『レゴ(R)ムービー』と同様のテンションで繰り広げられるアクションと冒険は、構ってちゃんなレゴ(R)バットマンと、脱ぎたがりのロビンの爆笑必至な掛け合いを軸に、大人も子供も笑えるギャグが盛りだくさん。

DC作品ということで、マーベル作品に対して愛のあるディスリスペクトを送っているのも面白い。レゴ(R)バットマンを振り向かせようと奮闘するジョーカーも、かわいくて愛さずにはいられないし、アニメだからこそ実現できる、ワーナー・ブラザース作品に登場するキャラクターの大集結には拍手を送りたくなる。これまでのバットマン作品はいずれもダークな世界観を持っていたために敬遠する人も多かっただろうが、本作はとにかくポップで楽しい作品になっているので、そういった映画ファンにこそ、ぜひ鑑賞してほしい一本だ。

『バーニング・オーシャン』(4月21日より公開)

2010年4月にメキシコ湾で実際に起こった海上石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」の炎上事件を、『ローン・サバイバー』以来となった、ピーター・バーグ監督×マーク・ウォールバーグのコンビで描く脱出アクション。枠組みとしてはパニック映画の名作『タワーリング・インフェルノ』に重なるものがあるが、同作が危機的な状況下における人間の心理を掘り下げた一方、本作はとにかく映像で魅せる。

映画界で知らぬ者はいないILM(インダストリアル・ライト&マジック)が手がけた映像表現は大迫力で、主人公のマイク・ウィリアムズ(ウォールバーグ)が、脱出に向けて上司のジミー・ハレル(カート・ラッセル)ら仲間たちとともに奮闘する中盤以降の展開においては、思わず声が出そうになってしまう、恐ろしい火炎の描写が数多く登場する。圧巻の映像表現を交えながらスリリングな脱出を描くだけでなく、終盤にかけてマイクが心の奥底で抱いていた「死に対する恐怖心」をハイライトすることによって、単純な英雄譚ではなく、リアルな人間ドラマとしての色味を帯びて完結するのも素晴らしい。

(文:岸豊)

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