新作映画『人生タクシー』を観るべき3つの理由――もはや発明! 映画製作を禁じられた映画監督は、いかにして新作を撮りあげた?

(C)2015 Jafar Panahi Productions

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『人生タクシー』ってどんな映画?

イランを代表する映画監督のジャファル・パナヒが運転するタクシーには今日も、次々とテヘラン市民――死刑制度について議論する路上強盗と女教師、品揃い豊富な海賊版レンタルビデオ業者、バイク事故にあった夫と泣き叫ぶ妻、映画の題材探しに苦心する監督志望の大学生、金魚鉢を手にした年配の女性二人組、カメラに夢中な小学生の姪っ子、強盗に襲われたセレブな旧友、政府から停職処分を受けた弁護士――が乗り込んでくる。

観るべき理由:1――世界3大映画祭制覇の巨匠、なぜタクシーを運転している?

メガホンをとったのはイランを代表する映画監督にしてカンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界3大映画祭で名誉ある賞に輝く実績者ジャファル・パナヒ。そんな彼が自らタクシーを運転し、ダッシュボードに置いたカメラで撮影したのが本作『人生タクシー』だ。

そもそも、なぜ世界的巨匠がタクシーを運転しているのか? 実はイラン社会の実像を真摯に描き続けた結果、国際的に評価される一方、イラン国内では“政府への反体制的な活動”を理由に2010年から20年間にわたる“映画監督禁止令”が下されているのだ。それでも映画製作を諦めないパナヒ監督は、自宅での軟禁生活を記録した『これは映画ではない』と発表し2011年のカンヌ映画祭に出品! 今回も再び当局の監視を逃れながら、“舞台”を自宅からタクシーに移した最新作を完成させてしまったのだ。そのアイデアと手段はもはや発明! 何より逆境に負けず、映画を撮り続ける不屈の精神にグッときてしまう。

観るべき理由:2――これはドキュメンタリー、それとも…?

そんな本作が切り取るのが、イランが抱える社会的な闇、そこに暮らす市民の日常と“本音”にほかならない。ただ、シビアな現実を背景にしながら、映画そのものは非常に軽やかで、ユーモアたっぷりなのが本作の魅力。例えば「コソ泥なんて、死刑にすべき」と過激な持論を展開する男が実は路上強盗だという皮肉、金魚鉢を持ち「とにかく急いで!」とせっつく老婆コンビのシュールさ、愛する妻への遺言をスマホで撮影させる夫の切実な滑稽さ、頭が良い分、口も達者でちょっと生意気な姪っ子のキュートさなどが絶妙にミックスされ、愛すべき人々の織りなす群像劇に仕上がっている。

まるでドキュメンタリーのような作品だが、実際は? そんな虚実が縦横無尽にクロスオーバーする作風もとても刺激的だ。

観るべき理由:3――乗り合いは当たり前!イランのタクシー事情

映画を見て、一番驚かされるのは、たとえ先客がいても、路上で手を上げる人がいれば、普通に停車し、ガンガン他の客が乗り込んでくるというイランのタクシー事情。特に大都市テヘランの渋滞はひどく、タクシーを捕まえるのも一苦労なだけに“乗り合い”が当たり前で、車内ではさまざまなドラマが生まれる。お金を積めば“貸し切り”も可能で、映画の中では海賊版レンタルビデオ業者が、あこがれのパナヒ監督と二人きりになり、大喜びしている。

それ以上に驚きなのは、パナヒ監督のような“なんちゃってタクシー運転手”が車を走らせている点。イランでは会社帰りのサラリーマンが、車で帰宅するついでに“客”を乗せて商売することも珍しくないのだとか。厳しいのか、ユルいのかわからないイラン社会の“矛盾”を図らずも浮き彫りにしている映画でもあるのだ。

(文・内田涼)


映画『人生タクシー』
4月15日新宿武蔵野館他、感動のロードショー!

監督・出演:ジャファル・パナヒ(『白い風船』『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』『これは映画ではない』)
2015年/イラン/82分/ビスタ(16:9)/5.1ch/原題:TAXI
配給:シンカ
提供:東宝東和
協力:バップ

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