【レビュー】映画『バーニング・オーシャン』―圧倒的な映像表現と深みのある心理描写で魅せる、脱出アクションの新たな傑作!

 

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『テッド』シリーズで広く知られているマーク・ウォールバーグは、ともするとコメディアンとして認識されているように思える。しかし彼は、類まれな演技力と運動神経によって、ソリッドな人間ドラマやハードなアクションでも輝きを放ってきた。4月21日に日本公開を迎えた『バーニング・オーシャン』も、ウォールバーグの魅力がまばゆい輝きを放つ必見の一本である。2013年に公開した『ローン・サバイバー』以来、ウォールバーグがピーター・バーグ監督と二度目のタッグを組んだ本作は、2010年にメキシコ湾で起こった「人類史上最大の原油流出事故」で、仲間を救おうと奮闘した男の姿を描く感動のドラマだ。

物語の舞台は、メキシコ湾に浮かぶ海上石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」(以下DWH)。愛する家族を残して同地に赴いたマイク(ウォールバーグ)は、施設主任のジミー(カート・ラッセル)らとともに仕事に取り掛かろうとしていた。しかし、石油会社の管理職社員ヴィドリン(ジョン・マルコヴィッチ)が、掘削作業の遅れを取り戻すために安全テストのカットと泥水の排出作業を命令。懐疑的なジミーとマイクを尻目に、ヴィドリンが作業の再開を命じた結果、原油が流出し、DWHは爆発・炎上。作業員たちが次々と爆炎に飲み込まれていく中、マイクとジミーは一人でも多くの仲間を救おうと奮闘することになる。

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バーグ監督は、『ローン・サバイバー』でもそうしたように、「人間ドラマ」と「サスペンスフルなアクション」という二つの骨子を両立させ、見応えのある物語を構築している。まず注目すべきは、導入部で描かれる質の高い人間ドラマだ。バーグ監督は、マイクが妻のフェリシア(ケイト・ハドソン)や娘と触れ合う姿を映し出すことによって、彼が家族に対して抱く深い愛情を観客に印象付ける。そして、マイクがDWHに到着してからは、ジミー、メカ好きなアンドレア(ジーナ・ロドリゲス)、陽気なケイレブ(ディラン・オブライエン)といった誠実な作業員たちとの絆、そしてヴィドリンら石油会社の管理職社員との対立関係を積み上げていく。こういった人間関係がしっかりと構築されているからこそ、脱出に向けて奮闘する人々の姿には、観客の胸を打つドラマが生まれることになる。

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ヴィドリンの暴挙が誘発した爆発により、DWHは爆炎に包まれる。これ以降に展開するサスペンスフルなアクションを交えた脱出劇では、映像制作会社「インダストリアル・ライト&マジック」による映像表現と、巨大なDWHのセットをはじめとする実物表現の調和によって、思わず声を上げてしまいそうになるド迫力のシーンが断続的に登場する。作業員に次々と襲い掛かる火炎などは全てがCGではなく、アクチュアルなものも含まれており、あるシーンでは実際にウォールバーグに火が点けられている。無論、彼は防火服を着用しているのだが、合理性と安全性を追求したアプローチではなく、表現することが難しく、なおかつ危険が伴う「生もの」としての演出が組み込まれているからこそ、マイクらが繰り広げる脱出には、真実味のある恐怖と焦燥が伴う。

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炎に負けず劣らずの熱さを感じさせるキャストの演技も素晴らしい。ウォールバーグは英雄的な男としてのマイクの雄姿のみならず、終盤にかけて見せる英雄的でない姿でも観客の心を震わせる。というのも、マイクは一つの目的を達成したのちに、それまで秘めていた感情を一気に爆発させるのである。その姿は聖人的な行いを果たした英雄というよりも、生物にとって絶対的な結果である「死」に対して恐怖を抱く、普通の男としてのイメージを強烈に伝えるものだ。英雄的な行いを果たしたという事実が前振りとして存在し、なおかつ等身大の男としてのマイクの姿をしっかり表現するという人物描写の対比を、これまで『ブギーナイツ』『ザ・ファイター』といった作品で確かな演技力を証明してきたウォールバーグが実践しているからこそ、見る者の胸には大きな感動が生まれる。

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ウォールバーグに加え、かつて『バックドラフト』で炎に挑む消防士にふんしたラッセルも、流石の演技を見せている。特筆すべきは、痛みの表現だ。まず観客の目を釘付けにするのは、身体的な痛みの表現である。最初の爆発後、ジミーは大けがを負うことになる。無論、実際にラッセルが怪我を追っているわけではないのだが、ラッセルが見せる苦悶の表情、そして響かせる苦しみの叫びは、まるで彼自身が傷を負っているように錯覚させるほどリアルなのである。肉体のみならず、精神の痛みの表現も素晴らしい。ジミーはマイクとともに作業員を救おうと奮闘するが、やはり全員を助けることはできない。この厳しい現実に打ちひしがれるジミーの姿からは、肉体的な痛みと対をなす精神的な痛みがしっかりと感じられるし、その痛みから逃げることなく、一人でも多くの仲間の命を救おうと、血塗れになりながらも奔走するジミーの姿を、ラッセルは見事に具現化している。

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物語の枠組みとしては、脱出アクションの名作『タワーリング・インフェルノ』に通じるものがあるが、実話ベースの本作には、社会的なメッセージ性も含まれている。例えば、爆炎を吐き出しながら逃げ惑う作業員に襲い掛かるDWHの姿には、単純に恐ろしさを感じるだけでなく、環境との付き合い方や、ヴィドリンが象徴する利益追求主義の愚かさについて、深く考えさせられるものがあるはずだ。単純に脱出によってカタルシスを与えるだけでなく、エンドロールを通じてこうしたテーマを租借させられることも、本作が魅力的な作品であることを証明している。

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ウォールバーグとバーグ監督は、良質な映像表現と、キャストの熱演やプロダクションデザインなどの生の表現を調和させることによって、本作を魅力的な一本として完成させた。最初のタッグを組んだ『ローン・サバイバー』も素晴らしい作品だったが、本作もまた素晴らしい映画である。果たして2人は、次のタッグでどんな作品を見せてくれるのだろうか?一映画ファンとして、筆者の期待は早くも高まっている。

(文:岸豊)


映画『バーニング・オーシャン』
4月21日(金)より全国ロードショー

監督:ピーター・バーグ(『ローン・サバイバー』『ハンコック』『バトルシップ』
出演:マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン
配給:KADOKAWA
2016年アメリカ映画/107分/G

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