新作映画『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』を観るべき3つの理由――収集家の「宿命と使命」を称える、静かなる“戦いの歴史”

Hermitage Revealed (C) Foxtrot Hermitage Ltd. All Rights Reserved.

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『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』ってどんな映画?

フランスのルーブル美術館、アメリカのメトロポリタン美術館と並ぶ「世界3大美術館」のひとつに数えられ、そのうちで1764年設立という最も古い歴史を誇るのが、ロシアのエルミタージュ美術館だ。エカテリーナ2世の絵画コレクションに始まり、絵画や彫像、宝飾品、陶磁器、武具など300万点を超える所蔵品は世界一と称され、年間約366万人以上の入場者が訪れる“宮殿”の魅力とは? 250年に及ぶその歴史に迫る珠玉のドキュメンタリー。

観るべき理由:1――美術館を通して知る、ロシアが歩んだ激動の歴史

女帝エカテリーナ2世が軍事力に留まらず、文化水準においても西欧諸国と同レベルだと誇示するために、収集に情熱を注いだエルミタージュ美術館。この場所は単なる美術館に留まらず、幾多の騒乱や政治の舞台になった、いわば「ロシアの歴史そのもの」のような場所。美術館の歴史を通して、ロシアという大国が歩んだ激動の歴史を知ることができ、ドキュメンタリーの枠を超えた1つの大河ドラマとして楽しめるのが、本作の大きな魅力になっている。

本作のために、美術館側は史上初となる内部撮影も許可し、これまで公にされていなかった超貴重なコレクションや立ち入りが制限されたエリアまで披露してくれる。現地に足を運んでも体験できない“贅”を味わえるチャンスは絶対見逃せない。

観るべき理由:2――当事者が語る静かなる“戦いの歴史”とは?

もちろん、映画は単なる“館内ガイド”では終わらず、ミハイル・ピオトロフスキー館長や各専門の学芸員、著名彫刻家や世界的建築家らも登場し、各コレクションの背景にある物語をひも解いていく。そこに隠されているのは、時代に翻ろうされる美術品を守り抜こうとした名もなき人々の静かなる戦いの歴史だ。

さらに「美術館のスタッフは全員、彼女(エカテリーナ2世)と同じ情熱を持たなければなりません」というピオトロフスキー館長の言葉通り、現場で働く人々の並外れたプロ意識にも光をあて、収集家の「宿命と使命」に敬意を捧げる。海外の美術館と積極的に交流することで、芸術作品を異なる文化間の橋渡しにと尽力する館長の姿勢は、こんな時代だからこそ、なおさら胸が熱くなってしまう。

観るべき理由:3――映画を見たら“本物”も! 六本木で大規模展示が開催中

映画を見終わった後、足を運びたいのが現在、六本木・森アーツセンターギャラリーで開催されている「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」だ(6月18日まで開催)。映画の舞台となったエルミタージュ美術館の常設展示作品から、16世紀ルネサンス時代のティツィアーノや、17世紀オランダ市民絵画を代表するレンブラント、18世紀フランスを象徴するロココ主義のヴァトーといった巨匠たちの作品約85点をこの目で確かめられる貴重な機会だ。

第1章「イタリア:ルネサンスからバロックへ」を皮切りに、国や地域別に分かれた展示室内が赤や緑、ゴールドと各章のイメージに合わせて色分けされている点も、美術初心者にはうれしい配慮。作品のキャプションに王冠マークがあれば、それはエカテリーナ2世の在位中に収集された印であり、その審美眼に対し、時空を超えた想像を膨らませることができるはず。

(文:内田涼)


映画『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』
4月29日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

監督・脚本・製作:マージー・キンモンス
出演:ミハイル・ピオトロフスキー館長、建築家レム・コールハース、彫刻家アントニー・ゴームリー、トム・コンティ(声の出演)
2014年/イギリス/カラー/英語、ロシア語/83分
後援:ロシア連邦大使館、ロシア連邦交流庁
配給:ファインフィルムズ

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