山下敦弘が選ぶ「ダメ男が美しい映画」10本

山下敦弘監督が選ぶ“ダメ男映画”10選

山下敦弘監督が選ぶ“ダメ男映画”10選/映画『ビッグ・リボウスキ』

山下敦弘監督曰く「すぐに思い浮かんだ」という“ダメ男”映画10本。自作でもたびたび描かれるダメ男の魅力と、映画作りに影響を受けたポイントなども語ってくれた。

※ピックアップ作品は、2011年末に発行された『シネマハンドブック2012』掲載のものとなります。ご了承ください。


山下敦弘が選ぶ「ダメ男が美しい映画」10本

ビッグ・リボウスキ

『ファーゴ』に続き、コーエン兄弟が手掛けた奇妙な人間ドラマ。同姓同名の大富豪と間違えられたしがない無職の中年男がギャングに襲われたのを引き金に、さらなる騒動に巻き込まれる。主演はジェフ・ブリッジス。
※ジャケット写真はブルーレイのレンタル版です

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さらば冬のかもめ

二人の海軍士官と、彼らに護送される窃盗犯の青年との奇妙な友情をつづったアメリカンニューシネマの佳作。主演はジャック・ニコルソン。メガホンをとったのは『夜の大捜査線』の編集マン、ハル・アシュビー。

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ドラッグストア・カウボーイ

ガス・ヴァン・サント監督の長編映画デビュー作。70年代のオレゴン州で、ドラッグ欲しさに薬局荒らしを繰り返す若者たちの悲劇。'11年、英エンパイア誌の「最高の米インディペンデント映画50本」にも選ばれた。

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アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち

メタリカやスレイヤーなど多くの人気バンドに絶大な影響を与えるが、自身はブレイクしなかった不遇のメタルバンド、アンヴィル。彼らが夢をあきらめずに地元でバンド活動を続ける姿を追った音楽ドキュメンタリー。

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ハッスル&フロウ

プロのラッパーになる夢をあきらめ、ポン引きとして生計を立てていた男が巡ってきた最後のチャンスに懸ける姿を描いた人間ドラマ。主演テレンス・ハワードがラップシーンを吹き替えなしで演じ、話題となった。

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台風クラブ

東京近郊の中学校に台風が接近。やり場のない憤りを感じていた中学生たちは感情を異常に高ぶらせていく。監督は『セーラー服と機関銃』の相米慎二。第1回東京国際映画祭ヤングシネマ部門大賞受賞。

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プラットホーム

80年代半ばの中国山西省を舞台に、激動の時代に翻弄されていく小さな町の劇団員4人の10年間を描いた青春ロードムービー。第57回ヴェネチア国際映画祭で最優秀アジア映画賞を獲得した。

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殺したいほどアイ・ラブ・ユー

ケヴィン・クライン主演のコメディ。ピザ店を営むジョーイは働き者のよき夫だが、外では浮気三昧。ある日夫の浮気現場を目撃した妻ロザリーは、ピザ屋店員と共謀し、夫殺しをたくらむ。

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Lie lie Lie

中島らもの小説を基に、詐欺を働く3人の男女を描くコメディ。寡黙な写植オペレーター波多野は、同級生、相川から幽霊が書いた本を売りだす詐欺を持ちかけられる。
※VHSのみ

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岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS

井筒和幸監督が人気お笑いコンビ、ナインティナインを主演に迎えた青春グラフィティ。1975年、大阪・岸和田を舞台に、ケンカに明け暮れる悪ガキ二人組の日常を描く。

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『ビッグ・リボウスキ』―こういう中年の男たちの無邪気な感じをいつか撮ってみたい

『ビッグ・リボウスキ』

『ビッグ・リボウスキ』

コーエン兄弟にはもろに影響を受けていて、その中でも特に大好きな映画。あれだけ意味のない話をあそこまでうまく見せられるテクニックはやっぱりすごいなと思います。キャラクターや役者に引っ張られてるところも大きくて、ジェフ・ブリッジスなんて10代のころはピンとこなかったですけど、今はそのよさがどんどん響いてきてます。いつかこういう中年の男たちの無邪気な感じを撮ってみたいですね。あと、昔、地元帰るとカラオケとボーリングとファミレスしかなかったけど、“その3つだけで映画撮れるんじゃないかな”と思えた作品でもあります(笑)。

『さらば冬のかもめ』―ニコルソン扮する“ダメな若者をかばうダメな先輩”が魅力的

『さらば冬のかもめ』

『さらば冬のかもめ』

ジャック・ニコルソンってクセが強くて10代のころは苦手だったんですが、この映画ですごい役者なんだと気づきました。ダメな若者をかばうダメな先輩で、情に厚く、黒人の同僚ともども中年具合がなんかいい。きっとニコルソンは脚本を読む力があるんでしょうね。とにかくキャラクターが魅力的なんです。それと、誰もいない冬の公園でバーベキューをするシーンがあるんですが、あの、あまりにも無意味な感じが好きですね。冷たい冬のイメージにあこがれていて、『どんてん生活』の冒頭にも風が吹きすさぶ場面を入れました。今でもたまに観る作品です。

『ドラッグストア・カウボーイ』―寒くて冷たいイメージなど映像的にも影響を受けた作品

『ドラッグストア・カウボーイ』

『ドラッグストア・カウボーイ』

それまでマット・ディロンってアイドル扱いされてたと思うんですけど、僕ら世代はこの映画が入口。色気があっていい役者だなと感じました。と同時にガス・ヴァン・サント監督に出会った1本でもあり、強烈な印象でしたね。いろいろ撮っている器用な監督ですが、根っこは地元ポートランドの人。彼の撮る寒くて冷たいイメージが好きで、僕も最初の3本(『どんてん生活』、『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』)はひたすら“寒く”撮っています。コマ撮りで撮られた雲など映像的にもかなり影響を受けていて、自分も最初のころは雲ばっかり撮ってましたね。

『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』―端から見たら美しくはないけど腐りかけの友情に男泣き

『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』

『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』

もう男泣きしちゃいました。ダメなボーカルとドラマーの関係性がいいし、それを囲んでる家族という構図は、ある意味“バカボン”といっしょですよね(笑)。バカボンのママがいて、男たちはワーッと騒いでる、みたいな。甘えも許されるほどの魅力が本人たちにあるし、端から見たら美しくはないけど、腐りかけの友情というテーマが個人的に好きなんですよ。二人のケンカのシーンもすさまじく悲しかった。観てる間は彼らを応援したくなって思わずCDも買いましたが、家に帰った途端、“いや、これは反面教師にするべきでは”って冷静になりましたけど(笑)。

『ハッスル&フロウ』―浪花節のようなどろ臭さと劇画漫画のような気持ちよさがある

『ハッスル&フロウ』

『ハッスル&フロウ』

いろんなダメさがあると思うけど、女を働かせるこの主人公は相当ダメ。でもなんだか共感してしまったなぁ(笑)。底辺から這い上がる男の話ですが、浪花節のようなどろ臭さと劇画漫画のような気持ちよさがありました。この映画みたいにある狭いコミュニティを描くことにあこがれていて、スコセッシも自分の地元で撮っていますけど、愛知の片田舎じゃムリがある。そういったものへのあこがれをねじれた形で吐き出したのが『ばかのハコ船』。都落ちしたカップルが地元で奮闘する姿を通して“結局、地元は何もないところだよ”という描き方をしました。

『台風クラブ』―『リンダ リンダ リンダ』の雨降らしはこの映画を再現した

『台風クラブ』

『台風クラブ』

三浦友和さん扮する先生が酔っぱらいながら生徒に諭したりと、とにかくダメで。それが強烈だったので『松ヶ根乱射事件』にも情けない親父役で出てもらいました。友和さんがアイドルではなくなった分岐点ですよね。あと『リンダ リンダ リンダ』の雨降らしは『台風~』の土砂降りの雨を再現しました。雨って気持ちいいし、テンション上がるんですよ。“あ、映画撮ってるな”って感じがする。俺、そんな必要ないのに、わざと濡れながら「カット!」って言ってましたから(笑)。“誰もいない校舎”っていうシチュエーションもワクワクしますよね。

『プラットホーム』―ライブシーンのインパクトはいまだに忘れられない

『プラットホーム』

『プラットホーム』

いろんなことをあきらめきれずに旅を続ける主人公を演じたワン・ホンウェイを観てるだけで、もう興奮しっぱなしでした。後半、主人公が野外フェスみたいなところでライブをするシーンがあるんですが、急にきったないパーマをかけて登場するんですよ。あのときのインパクトはいまだに忘れられませんね(笑)。バンドのメンバーのイケてない感じも含め、なんだか切なかったんですよ。ロングバージョンは吉川晃司の『モニカ』を歌ってるんですよね。それにこの映画も、ダメな男を見守っている女性がいるという“バカボンスタイル”です。

『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』―ケヴィン・クライン扮するイタリア男は観てて気持ちがいい

『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』

『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』

いわゆるドタバタ喜劇で、何回も観ている映画ですね。ケヴィン・クラインリヴァー・フェニックスキアヌ・リーヴスウィリアム・ハート…見てくれはイケメンが集まってるんですけど、まぁ全員どうしようもない男です。キアヌとウィリアムはシャブ中の役だし。ケヴィンは精力あふれるあざといイタリア男を演じてるんですが、観てて気持ちがいい。この印象が強すぎて、普通のケヴィン・クラインを見ると違和感覚えますね(笑)。この映画も最後は“女が許す”パターンですね。

『Lie lie Lie』―佐藤浩市さんのダメ男ぶりが面白くて僕の映画にも出てもらった

この映画の佐藤浩市さんと豊川悦司さんの三枚目な感じが好きで。男前な鈴木保奈美さんとの対比も面白い。特に佐藤さんのダメ男ぶりが面白くて『天然コケッコー』の頼りないオヤジ役にキャスティングしました。僕の映画って女性がしっかりしてて男が頼りない場合が多いんですが、最初はダメ男だと思って撮っていないんですけどね。でも自然とそうなるというか、ダメ男を演出しているときはどっかで楽しんでいるかも。

『岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS』―井筒監督は演技経験のない人を役者にする力がある

主人公二人も同級生も主人公の父親もみんなダメで、それを母親や彼女が見守る構図はまさに自分の映画に影響を与えてるなと思いますね。僕らの世代の印象として、お笑い芸人が映画に出はじめたのは北野武監督や井筒監督の作品以降。武さんが芸人を記号として選んでいるのに対し、井筒監督は『ヒーローショー』もそうですが演技経験のない彼らを“役者”にしてしまう力がある。なかなか真似できないですね。


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プロフィール

© Kiyoe Akechi

山下敦弘

1976年生まれ、大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。
大学の卒業制作『どんてん生活』(’99)が国内外で高い評価を受ける。以後、代表作に『リンダ リンダ リンダ』(’05)『天然コケッコー』(’07)『味園ユニバース』(’15)『オーバー・フェンス』『ぼくのおじさん』(’16)など。『映画 山田孝之3D』が2017年6月16日公開。
独自の作家性を保ちながら、さまざまな題材で意欲的に作品を発表しつづけている。

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アーティスト情報

山下敦弘

生年月日1976年8月29日(41歳)
星座おとめ座
出生地愛知県

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