中江和仁監督、初長編作『嘘を愛する女』で“映画づくり”の難しさを実感-TSUTAYA CREATORS’ PROGRAMトークイベント

中江監督、ヤング・ポール監督/TCPトークイベント

中江和仁監督、ヤングポール監督/TCPトークイベント

TSUTAYAが主催する、映像クリエイター発掘プログラム「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM(以下、TCP)」。5月17日(水)、都内某所にて本コンペ第3回応募説明会とトークイベントが開催。イベントには、初代TCPグランプリ受賞者で『嘘を愛する女』中江和仁監督と第2回準グランプリ受賞者のヤングポール監督が登壇した。

企画で選ばれるコンペ…その映画作りの実態は?

本当に面白い企画をコンペで選出し、映画化するTCP。受賞作には5,000万円以上(初年度は上限5,000万円)の総製作費と制作体制をTSUTAYAがバックアップ、さらに完成した作品は全国のTSUTAYA店舗やTSUTAYA DISCAS、TSUTAYA TVなどでオリジナル作品としてレンタル・販売や配信が行われる。

中江監督は、長澤まさみ高橋一生吉田鋼太郎ら豪華キャストを迎えて『嘘を愛する女』の撮影を終え、2018年の公開に向け絶賛編集中とのこと。そんなTCPでの映画づくりについて中江監督は「ギャップ」があったことを明かした。

中江:もともとアート系の映画が好きだったので、脚本もそのようにしたいと思っていました。最初は製作費も5,000万円ほどだと思っていたのですが、審査員の阿部秀司プロデューサーが僕の脚本をかってくれて、東宝も企画に乗ってくれて予算も増えました。それによって脚本もエンタテインメント性の要素を加わえていって、それまでの方向性からは変わっていきました。より多くの人に見てもらえるわけですから、それが悪いとは思っていませんが、それまでと方向性を転換することが自身の中で大変でしたね。尚且つ興行成績的にも当てなければならない…。そんなプレッシャーもあるので、商業映画ですから、自主制作映画とは違って、自由に楽しく勝手に作れないジレンマはありますね(笑)。

中江和監督

中江和仁監督

昨年実施された第2回TCPにて、『ゴースト・マスターズ(仮)』で準グランプリを受賞したヤングポール監督は中江監督の話しについて共感がする部分があると話す。

ポール:これから撮る身としては、嫌な話を…嫌ではないですね! 良い話です(笑)。でも、TCPが企画のコンペだからだと思うんです。出来上がった作品やシナリオの優劣で競うコンペではないですからね。企画のコンペは、映画のタネとしての題材をプロデューサーや制作会社、TSUTAYAと一緒に集まって練り上げていくので、ポジティブな面で色々な想いが混ざっていくのを感じますね。

ヤング・ポール監督

ヤング・ポール監督

実際に映画をつくるとはどのような事なのか…。多くの映画ファンに観てもらうためには、必ずしもすべてが自由ではないというリアルな話に会場の参加者も食い入るように聴き入っていた。

プレゼンの映像に幾ら使った? ポール監督が驚愕…

また、話題はTCPの審査会での話となった。両名は、最終審査会の企画プレゼンでふたりが製作した映像作品についてコメントした。

中江:自分が参加した初年度は、2次の結果発表と、3次の最終プレゼンまで1週間しかなくて、映像をつくる期間が全然なかったですね。瀬戸内海を舞台にしていて、そこでの撮影にかけられるのが1週間だけだったので、とても大変でしたね…人を集めるのも大変で、お金も掛かりました。

ポール:僕の時は、初年度の反省もあってか、1ヶ月ほど期間がありました(笑)。カメラマン、メイク、何でもやってくれる友達ふたりとボクの5人で、山梨で撮影して、やり始めると楽しくてセーブできなかったです。ほうとう食べたりしで、それらも全部込みで20万円くらい掛かりましたね(笑)。

最終プレゼンで、重要なカギとなる映像作品について言及したふたり。TCP事務局の遠山大輔氏から「中江さんは幾らかけたんでしたっけ?」と質問が飛ぶと、中江監督は「僕は、200万円くらい。瀬戸内海だったので…」とコメント。これにポール監督も「何考えてんすか、大丈夫ですか! 千葉とかでもよかったのでは…(笑)」と驚きを隠せない様子。また遠山氏から「第3回目からは、最終プレゼンの審査用の映像の費用はTCP事務局側で多少負担しようと思っています…」と明かされると、ポール監督は「ええ~~~、第3回からやればよかった…(笑)」とリアクションをとり会場を沸かせた。

マス向けが受けるのか? 作家性が重視されるのか?

また、イベント後半では、応募を考えている参加者から「企画の内容としては、マスに受ける企画が重視されるのか、作家性が重視されるのか?」と質問が飛んだ。

中江:自分が参加した初年度の審査員は、これまでにメジャーな作品を作られている方が多かったので、誰が見ても面白そうなものが評価されると思っていました。

でも、第2回目の最終プレゼンで同じ事務所に所属しているCMディレクターの箱田さんの『ブルーアワー(仮)』が特別賞で受賞した時は「すごいな…」と思いましたね。自身を投影した田舎コンプレックスがテーマで、誰もが共感できる作品でしたが、商業映画を作ることを目的としたTCPの審査で、みんなが膝を打つような作品ではなかった。だから審査を見ていて正直「落ちるな」と思っていました(笑)。でも、そういう作品も救われて、TCPには生き残れる枠があることは希望を感じました。やりたいことを出さないと後悔するのではと思いました。

ポール:受賞した作品のジャンルも、結構バラバラで何がウケるのかは、傾向としては実際良くわからない。ヤマをはってやっても、自分が乗れなけれは辛いし、やりたくない企画に合わせて映画を作るのは辛いと思います。

テクニック的には1次審査は書類で3分以内に読み終わる企画書にしようと思いました。あんまり詳しく書かずに…400作品くらいの企画書を観ているだろう審査員のことを思って親切設計で作りましたね(笑)。

ウケのよさそうな作品、受賞しやすそうな作品を考えるのではなく、自身が作りたい、面白いと思う作品を応募することが大事だと語ったふたり。遠山氏は「“TSUTAYAで開催しているので、TSUTAYAの店頭に置ける作品”が最終地点。TSUTAYAにはジャンルは色々ありますから、さまざまな可能性があります。やりたい企画を作ったほうがいい、想いが入っていることが大事です。但し、エンタメの会社なので、エンタメを求める傾向があるのも事実です」と運営側の意見も話した。

応募締切は6月13日! 熱い想いをぜひ、企画に!

イベント最後には、中江監督、ポール監督が応募者に向けメッセージを発信した。

中江:実際に撮影に入るまで…1年4か月くらいかかりました。企画を考えるよりも、出してからの方が長いので、本当に自分の好きなものを出さないと後々辛いと思います。みなさんも好きなものを書いて、それがいかに楽しくお客さんに受けるかを考えて欲しいです。

ポール:やはり、締切があると本気で考えるし、自分が何を考えていたか向き合う機会にもなります。それは成長するチャンスだと思うので、まずは書いてみるのがいいと思います。あとは、企画を提出してから結果がくるまで1ヶ月ほど待つので、その間ソワソワします。そんな気持ちも味わえます(笑)。

「作りたい作品」を映画として作り上げるため奮闘する姿を見せてくれた受賞者のふたり。TCP第3回、WEBエントリー締め切りは2017年6月13日(火)まで。ぜひ、奮って応募して頂きたい。

>応募について、公式ページはこちら

(取材・文/nony)


映画『嘘を愛する女』
2018年全国東宝系公開

監督:中江和仁
脚本:中江和仁・近藤希実
配給:東宝
製作:「嘘を愛する女」製作委員会
製作プロダクション:ROBOT

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