熊切和嘉監督を「本当にワクワク」させた村上虹郎の魅力―映画『武曲 MUKOKU』インタビュー

村上虹郎と熊切和嘉監督

村上虹郎と熊切和嘉監督

父親との決闘のせいで生きる気力を失ってしまった矢田部研吾と、ラップのリリック作りに夢中ながら類稀な剣の才能を秘める高校生・羽田融が、それぞれの過去を抱えながら剣でぶつかり合う姿を描く映画『武曲 MUKOKU』。研吾を演じた綾野剛が圧巻の憑依性を見せた一方で、融役の村上虹郎は瑞々しい輝きを放つ演技を披露した。去る4月某日、「竹刀を持って庭に入っていくカットだけでゾクゾクしました」と撮影を振り返る村上、そして「圧倒的にキラキラしていた」と村上を評する熊切和嘉監督に、撮影中のエピソードなどについて話を聞いた。

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「まだ漠然としていた融の像が具体的に見えたんです」(熊切監督)

熊切監督は村上との初対面が印象に残っているようで、「会った時に、まだ漠然としていた融の像が具体的に見えたんですよね。剣道の稽古などで生意気な感じとかもそうですし(笑)」とにっこり。また、「虹郎くんで一番良かったなと思うのは、過去を抱えているけれども、どこかあっけらかんとしているというか、それを乗り越える強さがあるということですね。生命力みたいなものをすごく感じたんです。大変だったとは思いますけど、撮影ではいかに彼をのびのびと活かすかを考えました」と村上が持つ独特な雰囲気を称賛する。

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

綾野剛との距離感は最低限に―「頑張って抑えていたほうだと思います(笑)」(村上)

「デビュー作の監督(『2つ目の窓』河瀨直美監督)が、役作りをする上で、憎しみ合うんだったら本当に憎しみ合わせるくらいの演出をする方だったんです。なので、そういったリアリティのようなものが、僕の中にはあるんです」と明かす村上。矢田部を演じた綾野との現場における距離感について聞くと、「熊切監督としても、綾野さんと僕が親しくしているのはあまり嬉しくないだろうなとは分かっていました。でも逆にこの作品では、特にアクションがそうなんですが、話し合ったりコミュニケーションを取らないと成立しない部分があるので、最低限のやり取りはしていました」と述懐。「そんな印象ないけどね」と熊切監督が続くと、「僕おしゃべりなので、現場では頑張って抑えていたほうだと思います(笑)」と照れ笑いを見せる。

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

村上の躍動感への驚き「撮っていて本当にワクワクしました」(熊切監督)

綾野について、「『こんな男くさいことをするんだ!』って。もちろん脚本の時点でイメージはするんですけど、完成した時にここまでのものになるんだっていうふり幅にびっくりしました」と賛辞を惜しまない村上。そんな村上を熊切監督は「圧倒的にキラキラしていた」と絶賛する。「躍動感というか、瞬発力というか...。多分、得意な役と得意じゃない役があると思うんですけど、自分の中で違和感があるとすぐ顔に出るというか(笑)、嘘をついてまでは演じないというか...。この作品でもいろいろと無理はしてもらっているんですけど、パシッとはまった時の躍動感は、撮っていて本当にワクワクしましたね」

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

「竹刀を持って庭に入っていくカットだけでゾクゾクしました」(村上)

劇中で最大の見どころは、台風の中、10分以上にわたって融と研吾が繰り広げる決闘だ。このシーンで、熊切監督は“黒い雨”を降らせるという独特な演出を披露している。そのこだわりを聞くと、「二人の中にある過去のトラウマであったり、そういったイメージが押し寄せてくるような、過去のイメージも含めてぐちゃぐちゃになっていくような感じにしたかったんです」と解説。一方、「もう一回は...やりたくないですね(笑)」と苦笑する村上は、懐かしそうな表情を浮かべながら「竹刀を持って庭に入っていくカットだけでゾクゾクしました」と振り返る。

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

俳優としての哲学は?「一人の人ばかりは信じられない」(村上)

矢田部は劇中で剣道と向き合うことができなくなる。若手として俳優道を歩んでいる村上は、演技と向き合えなくなったことはまだないと話すが、「苦手だなと感じる役はあります」と打ち明ける。「演じたいものだけ演じることができたら最高ですが、そういうわけにもいかないので...。僕らの仕事は、自分をだましてから他人を説得する仕事だと思いますが、僕の場合、今はまだ自分をだますことすら難しいなと感じる部分があります」

(C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

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次は戦争映画?村上×熊切監督コンビの今後

演技について語る際の鋭い眼差しと、仲の良さが伺える監督をいじる時に見せる少年のような笑顔。無限の可能性を感じさせる役者としての一面と、等身大の若者としての一面が同居した村上の姿には、自然と向き合う者を引き付ける魅力がある。熊切監督は、そんな村上を主演に迎えた戦争映画を、いずれ作りたいと思っているとのこと。映画『武曲 MUKOKU』で才能を爆発させた両雄は、果たしてどんな作品を生み出すのだろうか?このコンビの復活に、早くも期待が高まる。

(取材:文・岸豊)


映画『武曲 MUKOKU』
2017年6月3日、全国ロードショー

【物語】
海と緑の街、鎌倉。矢田部研吾(綾野剛)は、幼い頃から剣道の達人だった父(小林薫)に鍛えられ、その世界で一目置かれる存在となった。ところが、父にまつわるある事件から、研吾は生きる気力を失い、どん底の日々を送っている。そんな中、研吾のもう一人の師匠である光村師範(柄本明)が彼を立ち直らせようと、ラップのリリック作りに夢中な少年、羽田融(村上虹郎)を送り込む。彼こそが、本人も知らない恐るべき剣の才能の持ち主だった──。

原作:藤沢周『武曲』(文春文庫刊)
出演:綾野剛 村上虹郎 前田敦子 風吹ジュン 小林薫 柄本明
監督:熊切和嘉
脚本:高田亮
音楽:池永正二
配給:キノフィルムズ

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アーティスト情報

綾野剛

生年月日1982年1月26日(36歳)
星座みずがめ座
出生地岐阜県

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