【レビュー】『LOGAN/ローガン』―ヒュー・ジャックマンが最高のピリオドを打つ、『ウルヴァリン』シリーズ最終章!

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

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昨今の映画界はスーパーヒーロー映画が席巻しているが、その先駆けとなったのは2000年に公開した『X-MEN』である。同作から17年にわたって、不死身のミュータント:ウルヴァリンことローガンを演じてきたのは、オーストラリアが誇る名優ヒュー・ジャックマンだ。ジャックマンは、6月1日に全国公開を迎える『LOGAN/ローガン』で同役を卒業する。その結末には多くの映画ファンが期待を寄せていることだろうが、はっきり言おう。ジャックマン、そしてメガホンを取ったジェームズ・マンゴールド監督は、シリーズに最高のピリオドを打った。

物語は、ミュータントの大半が死滅した2029年の、メキシコ国境近くの荒野で幕を開ける。ローガンはアダマンチウムによって肉体を毒され、治癒能力を失い、もはや不死身ではなくなっていた。チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)とともに海の上で平和に暮らすため、身分を偽り運転手として働いていたローガンだったが、ある日突然、彼の前にヒスパニック系の看護師・ガブリエラが現れる。彼女は連れていた少女・ローラ(ダフネ・キーン)を、カナダに国境を接するノースダコタへ連れていくよう依頼。拒否するローガンだったが、彼は成り行きでローラを保護することになり、ローラを執拗に追うドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック)率いる謎の武装集団との戦いに巻き込まれていく...。

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『X-MEN』シリーズが「マイノリティへの迫害」という社会的なテーマを前面に出してきた一方、『ウルヴァリン』シリーズはアクションで魅せることを主眼に置いてきた。その分、幅広い年齢層にウケるシリーズであったことは事実なのだが、やはり深みに欠ける嫌いはあった。しかし、最終作ということを踏まえてか、マンゴールド監督は本作をこれまでの『ウルヴァリン』シリーズとは一味違う、深みのあるアダルトな内容に仕上げている。序盤で注目すべきは、ローガンとローラの関係性だ。ローガンはローラを越境させることになるが、“越境“”アメリカとメキシコ”という物語の要素を鑑みると、マンゴールド監督は明らかに現実世界における移民の問題を象徴させている。

本作が過去の『ウルヴァリン』シリーズと異なる点には、R指定で制作されていることも挙げられる。マンゴールド監督はもともとスタジオにR指定で制作する意向を伝えていたそうだが、これによって本作にはシリーズ最高の暴力性が伴うこととなった。劇中の描写は実に激しいものである。ローガンは、次々と襲いかかって来る敵という敵の顔面に、アダマンチウムの爪を突き刺しまくるのだ。ジャックマンの熱演も相まって、スクリーンにはマーベル作品、いや、これまでに制作されたアメコミ映画でも屈指と言える暴力性が表れており、筆者自身、思わず息を止めてしまうことも少なくなかった。

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

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素晴らしいのは、その暴力性が単なる暴力としての意味を持つだけに留まらないことである。筆者が本作を鑑賞したときには、隣に女性が座っていた。その女性は、ローガンが敵の顔に爪を突き立てるたびに目を覆っていたが、同時に指の隙間からローガンの雄姿を見つめ続けていた。つまり、スクリーンに圧倒的な暴力性が存在することは事実なのだが、そうした過激なローガンの戦いを描くことによって、スクリーンには守ると決めた者を守り抜こうとする男、そして悪を挫こうと力を振り絞る男の確固たる信念が浮かび上がり、これが観客の目を奪い続けるストーリーの吸引力を、絶えず生み続けるのだ。

また、アクションにおいてローガンの「老い」が描かれている点にも注目してほしい。関節の痛みやスピードの劣化、絶えず浮かべる苦悶の表情...。今までローガンが繰り広げてきた戦いとは趣が異なる、“必死さ”が垣間見える戦いの数々からは、外見の内側に隠れているローガンの老いが明確に感じ取れる。往々にして、全年齢をターゲットに制作されるヒーロー映画では、若者や中年男性の活躍が描かれがちだが、その真逆を行く本作からは、老いたヒーローがいかに尊い存在であるかを再認識させられた。

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もう一つの物語の核として、キーンの演技にも言及しておきたい。信じがたいことに、この少女は本作で映画デビューを飾ったのだが、テレビシリーズで培ってきた演技力は、名子役と称すべきレベルにある。特に、序盤から中盤にかけて見せる「語らない演技」が素晴らしい。子役は往々にして言葉に頼った演技を見せてしまいがちだが、キーンは語らずしてローラの秘めたる感情、触れたことがない文化への興味、爆発させる怒りを余すところなく表現している。この「語らない演技」が前振りとしてあることによって、少しずつ「語る演技」が増えてくる後半では、ローラのヒロインとしての輝きが増していく。これに伴い、ローガンとの関係にも深みが生まれ、物語には奥行きと厚みが出た。

迎えた終盤。ローガンは自分の中に秘められていた“今までにない感情”に突き動かされ、傷ついた体を起こし、最後の戦いに挑む。もはや治癒能力を失った彼が、銃弾を浴びて血まみれになり、“最強の敵”に苦戦しながらも、ひたすらローラを守るために戦い続ける姿は、見る者の心を熱くさせる。悲劇的であると同時に、カタルシスを感じさせる結末も、「これ以上は望めない」と言えるほどに素晴らしい。ジャックマンはまさしく、最高のピリオドを打ったのである。前作『ウルヴァリン:SAMURAI』ではその作家性に陰りが見えたマンゴールド監督も、本作では『3時10分、決断のとき』『17歳のカルテ』を作った名監督としての面目躍如を果たした。

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アメコミを基にするヒーロー映画では、『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイアや、『バットマン』シリーズのマイケル・キートン、『ダークナイト』シリーズのクリスチャン・ベイルなどが“はまり役”として好演を見せてきた。しかし、アメコミ映画というジャンルにおいて、17年にわたって一つの役を演じ、支持され続けた俳優は、ジャックマン以外に存在しない。シリーズ最後の作品で、まさしく有終の美を飾ったことにより、ジャックマンは映画史に“伝説”としてその名を刻んだ。映画界では早くも、その後継者が誰になるのかに注目が集まっているが、正直に言って、筆者は想像することができない。欲を言えば、ジャックマンではないローガンの姿は見たくないものだ。それほどまでに、ジャックマンが演じ続けたローガン(ウルヴァリン)は、象徴的な存在になったのである。

(文:岸豊)


映画『LOGAN/ローガン』
公開中

監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート
20世紀フォックス映画配給

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