新作映画『メアリと魔女の花』を観るべき3つの理由――ジブリという魔法を失った米林宏昌監督が踏み出す第一歩とは?

(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

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『メアリと魔女の花』ってどんな映画?

大叔母が暮らす赤い館村に引っ越してきたメアリは、不思議な力に導かれるように、霧深い森に迷い込み、7年に1度しか咲かない不思議な花“夜間飛行”を見つけ、一夜限りの魔法の力を手に入れる。空飛ぶほうきに乗って、たどり着いたのは魔法世界の最高学府であるエンドア大学。そこでついた1つの嘘をきっかけに、村で知り合った人間の少年を巻き込む大事件が発生し、強大な魔力に立ち向かう無力なメアリの冒険と戦いが幕を開ける。

観るべき理由:1――「深夜0時」に込められた決意と覚悟

スタジオジブリで『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を手がけた米林宏昌監督の最新作である本作は、同制作部の解散を機に、ジブリを退社した米林監督と西村義明プロデューサー(『かぐや姫の物語』)が2015年に設立したスタジオポノックの第1回作品。社名はクロアチア語の「深夜0時」に由来し、まさに新たな1日の始まり、アニメーションスタジオとしての第一歩を踏み出す決意と覚悟が込められている。

こうして誕生した『メアリと魔女の花』には、米林監督が約20年にわたりジブリで培った技術とノウハウが凝縮されており、「いつか観た、あの懐かしいジブリ作品」「でも、今のジブリでは決して作ることができない作品」として、夏休みのスクリーンを飾るにふさわしい色彩豊かで、躍動感あふれる王道の冒険ファンタジーに仕上がった。

観るべき理由:2――実は『魔女の宅急便』とは正反対

もちろん、ジブリ出身の米林監督があえて今、“魔女”を題材に「ジブリっぽい」作品を生み出したことに、賛否や議論が巻き起こるのは当然かもしれない。それでも名作『魔女の宅急便』が、生まれながらの才能をもった魔女の女の子が主人公だったのに対し、『メアリと魔女の花』はたまたま、魔法を手にした普通の少女の物語。しかも、物語の途中で、魔法の効力は消えてしまい、自らの力だけを頼りに、逆境を乗り越えなければならないのだ。

その姿が、ジブリという魔法を失いながら、それでもアニメーション映画を作り続けると決めた米林監督に重なるのは言うまでもない。過去の2作品が、切ない別れを描いていたとすれば、今回はグッと前向きで、観る者の背中を押す結末が待っている。正統な評価を得るのに時間がかかる可能性もあるが、だからこそ今こそ観ておきたい作品なのだ。

観るべき理由:3――“師匠”宮崎駿は「観ていない」!?

さて、気になるのは、米林監督にとって“師匠”とも呼ぶべき存在の宮崎駿監督が本作をどう受け止めているかということ。先月、都内で行われた完成報告イベントに出席した米林監督によると、「完成した作品をジブリに持っていったんですが、宮さん(宮崎監督)、『おれは観ない』って(笑)。ただ、スケジュールが遅れに遅れて、心配をしてくれていたので、『よく頑張った』と言ってもらえた」のだとか…。

完成披露の様子

完成披露の様子

ちなみに高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーは映画を鑑賞し、それぞれ「好感の持てる映画です。ただ私が好感を持つということはこの映画の成功は危ういんじゃないか」「よく頑張ったな。ジブリの呪縛から解き放たれるとお前らもこういう映画を作るのか。素直に伸び伸びといい作品を作った」と感想を述べているという。果たして、夏休みの映画シーンに魔法をかけることはできるか?

(文・内田涼)


『メアリと魔女の花』
公開中

キャスト:杉咲花
原作:メアリー・スチュアート(KADOKAWA刊)
脚本:坂口理子
脚本・監督:米林宏昌(『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』)
音楽:村松崇継 プロデューサー:西村義明
制作:スタジオポノック
製作:「メアリと魔女の花」製作委員会

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