「映画はたまにはだまされないと」映画「まんが島」守屋文雄監督&水澤紳吾インタビュー

水澤紳吾と守屋文雄

水澤紳吾と守屋文雄

映画を観るとき、どんなことを期待して観るだろうか。おそらく映画『まんが島』は、そうした期待を本当にいろいろ意味で裏切ってくれる。そもそも絶海の孤島が舞台であり、売れない5人のマンガ家がそこでマンガを描く話という、およそ想像が付かない世界観なのだ。

今年3月から劇場公開された作品が、このたびDVDとしてソフト化された。今作が長編初監督となった、『キツツキと雨』『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』などの脚本で知られる守屋文雄と、マンガ家・永沢伸太郞を演じた水澤紳吾に話を聞いた。

守屋:最初は都内で貧乏マンガ家みたいな話を考えていて、それと、もともと無人島が好きっていうのがあって。吉村昭『漂流』という小説があったり、『キャスト・アウェイ』を観て面白かったり、『ふしぎな島のフローネ』という子供のときに観たアニメだったりとか、無人島ってむやみにワクワクするなみたいな(笑)。

水澤:はたから見たいワクワクだけどね(笑)。

守屋:どのタイミングかは覚えてないんですけど、ある日、それがひとつになったんです。

(C)2017守屋文雄

(C)2017守屋文雄

一見すると、荒唐無稽のような島とマンガ家という組み合わせが誕生した経緯を、守屋監督は振り返る。そうやって生まれた今作だが、その始まりも撮影もかなり破天荒な出来事の連続だったという。

水澤:撮影のために初めて集合したときからみんな仲よくて。初めて会う人もいましたけど、なんとなく和気あいあいって感じがありました。

守屋:都内から地方のロケ地に向かう途中で、撮影の高木(風太)が三脚を借りに行って戻ってきたら、スタッフを1人、スチールを撮ってくれた内堀(義之)なんですが、捕まえてきて(笑)。「今日は結婚式があるから行けないけど明日から行けます」と言って、本当に来てくれました。今回きりだとは思いますけど、そういう空気はあったのかもしれないですね。

水澤:撮影中では、観た人からよく言われる海の中に入るシーンも、嵐の後で波が荒くて、やってるときは壮絶。でも画にしたら…という感じでした。

守屋:映像で見る以上に強烈で、身の危険を感じたぐらい。

水澤:入らない俳優も2人いて、うまいこと宇野(祥平)さんと政岡(泰志)さんは入らなかったんですよ。

守屋:宇野さんはひどい(笑)。引きの画でみんな坂道を降りていく途中で、宇野さん転ぶんだけど、立ち上がって追いかけてくればいいのに、転がったまんま『わーっ!』って(笑)。これでちょっと後れを取ってしまい、海に入れませんでしたみたいな雰囲気を出していて、ずるいな、と。

(C)2017守屋文雄

(C)2017守屋文雄

危険を顧みず撮影に挑む姿は、映画としても圧倒的な迫力で迫ってくる。そんな守屋監督と水澤は、小学校5年生のときに出会って以来の長い付き合いだが、長編の監督と俳優として臨んだ現場で、互いに何を思ったのだろうか。

水澤:撮影に入る前、マンガを描く練習なども兼ねて共同生活していたのですが、その頃からいつもとは違ってました。墨汁のフタとか、しっかり閉められなくて苦手なんです。ジップロックとかも。そのクセをえらい怒られました。

守屋:墨汁って開けっぱなしにしておくと、乾いちゃって粘り気が出てくる。描いているときは開けっぱなしですけど、休憩などペン作業をやめるときは閉めないといけないし、本当に描いている感じは、そういう小さな動きひとつにも出ると思ったので、細かいことをいつもよりもしつこく言いました。

水澤:でも撮影のときは、(守屋演じる)守吉がホワイトのフタを閉めなかったんですよ!「あっ、これ乾いちゃう」って僕が閉めたんですけどね(笑)。あれはやってないと、怒られていないと出なかったかな。

守屋:あれはよかった(笑)。ただ、(水澤の)普段を見過ぎているので、もっと楽しそうにしているときだったり、もっとむちゃくちゃにやっているときを見ているから、「いつもはもっとでしょう」というのは感じました。『まんが島』の場合は特に、ちゃんとやることよりも、もっとこう、なんて言うか下手でも壊れていてもいいから全力でやってほしいというのがあったから、そこで「もっともっともっと」と現場ではなったところもありました。

(C)2017守屋文雄

(C)2017守屋文雄

観ていても、次はもっと何かをやるのではというワクワク感がどんどん強まってくる。どこまでめちゃくちゃやるのだろう、と。そんな中、守屋監督は守吉文彦役として出演も兼ねている。

守屋:台本も編集も大事なんだけど、映画ってやっぱり現場で、それもカメラと役者さんの間の、あの特別な空間で産まれるっていうか、起こるっていうか。あの空間には、ふつう撮影中は監督も立ち入れなくて。自分が出演したことで現場でみんなには迷惑をかけたけど、あの特別な空間を出たり入ったりしながら、映画をひとつ作れたのは幸せだったんだなと。これはあとあと感じました。

水澤:今後の監督・主演はあるの?

守屋:ないと思う。「ここはもうちょっと寄りたかった」とかが全然できなくて、映画としての演出が今回はできなかったな、と。どういう規模でできるか、やるのかはわかんないけど、次は監督に専念しなきゃと思った。

全精力を注いで撮影された映画の世界観を際立たせるのに、そのロケ地やBGMも一役も二役も買っている。

守屋:最初は島の中でエレキギターが鳴っているとか、そういうイメージをなんとなく想像していて、そっちの方面で人を探そうと思ったんですけど、Aki-Ra Sunriseさんを紹介してもらい、『まんが島』ってこういう音楽の映画だったんだって見方が変わりました。

水澤:BGMは洞窟に録りに行ったんでしょう?

守屋:そうそう。紹介してくれた録音の弥栄(裕樹)さんが、『Aki-Raくんの音楽を録るならあそこの洞窟』というのを決めていて(笑)。洞窟の中にマイクを15~20本ぐらい立てて、あっちの反響とこっちの反響と全部録ってミックスしています。

水澤:洞窟のストックがあるんだ! 何個あるんだろうね。あそこの洞窟と言うぐらいだから。

(C)2017守屋文雄

(C)2017守屋文雄

充実感たっぷりに語る2人の表情から、言葉では伝えきれないほどの魅力が伝わってくる。

守屋:『まんが島』って、キャッチーなタイトルではあると思うんですよ。そこに引っかかったら、とりあえず観てほしいです。

水澤:感想を見ていても、『すごい!』『圧倒された』のようなものが多く、中には『なにこれ』みたいなこともある。う~ん…人に勧めづらい(笑)。

守屋:何かものを作ったりとか手を動かして何かやっている人は、比較的、何か感じてくれるみたいなんです。仕事だけではなく、趣味でやっている方も含めて、そういう人は終わった後に感想が止まらないみたいな感じになる人も結構います。自分ではあまりピンと来ていないんですけど、初期衝動があるとも、よく言ってもらえます。

水澤:映画は何ができるかみたいなのを考えて作ったら、そういうのは伝わるんじゃないのかな。

守屋:そうだよね。こっちが考えたことそのままじゃなくても、その人の分野で考えることってあると思う。もしかしたら響き合うかもしれないし、響き合ったらすごくうれしい。映画は、もっといろんなことができるはずなんですよ。

水澤:映画のキャッチフレーズと同じく、『来るな来い!』だね(笑)。

守屋:まあ、たまにはだまされないとさ映画は(笑)。

(取材・文・撮影:遠藤政樹)


DVD『まんが島』
好評レンタル&発売中!

水澤紳吾『SRサイタマノラッパー』シリーズ/守屋文雄/松浦祐也『太陽を掴め』/宇野祥平『セーラー服と機関銃‐卒業‐』/政岡泰志『ディアーディアー』/川瀬陽太『ローリング』/柳英里紗『くも漫。』『ローリング』

監督と脚本と編集と制作 : 守屋文雄『キツツキと雨』、『ディアスポリス −DIRTY YELLOW BOYS−』共に脚本
音楽の楽器演奏:Aki-Ra Sunrise
漫画:岡田悠

撮影:高木風太『味園ユニバース』
照明:秋山恵二郎
音響・音楽のMIX & Recording:弥栄裕樹『コープスパーティー』
美術と特殊美術:谷脇周平 谷脇慎吉

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アーティスト情報

水澤紳吾

生年月日1976年9月2日(41歳)
星座おとめ座
出生地宮城県仙台市

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宇野祥平

生年月日1978年2月11日(40歳)
星座みずがめ座
出生地大阪府

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