今回の章は「芝居」―『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第三章「純愛篇」小野大輔×福井晴敏インタビュー

小野大輔 (C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 2202 製作委員会

小野大輔 (C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 2202 製作委員会

10月14日に初日を迎えた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第三章「純愛篇」。本作から古代進役の小野大輔とシリーズ構成の福井晴敏にインタビュー。お互いの想いや見所などを聞いた。

――第二章がヤマトのピンチで終わりましたが、第三章はどのような展開を見せるのでしょう?

福井:第三章「純愛篇」の予告にもあったとおり、ヤマトの頭上にはガトランティス増援艦隊の大群が現れて、それを前にして波動砲を使うのか、決断が迫られます。古代にとって波動砲を撃つという行為は魂に対する裏切りになる。自分の魂、沖田さんの魂、そして地球の恩人であるスターシャに対してもそうです。彼が何を納得して、あるいは納得できずに引き金を引くのかどうか……そこがまず最初の見どころになってくると思います。

小野:古代は幾度も選択を迫られていますが、第三章は特に「古代、選べ!」となっていて、そこはずっと辛かったですね。演者としても一個人としても、古代の気持ちになるとかわいそうで仕方がない。本当に福井さんは酷い人だと思います(笑)。

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

――アフレコ時のエピソードを教えてください

小野:クラウス・キーマン役の神谷浩史さんは印象的でした。キーマンはひとことで言えば「暗躍しているんじゃない?」と思える人物です。ですから先のことをわかっていないと演じられない役柄だと思うんです。それで神谷さんが、福井さんに熱心に質問をしていたことが印象的でした。アフレコブースを出てまで質問をしていました。それが、「俺は知りたいんだ」と行動するキーマンの役柄然としていたし、現場の士気を高めるファクターにもなっていました。

面白かったのは森雪役の桑島法子さんです。雪はストーリー上、少し出てこない期間がありますので、桑島さんもその間アフレコがお休みでした。だから、やっと出てきたテストの際に、「2カ月ぶりですね」みたいなアドリブを入れていて、雪っぽいなと(笑)。これだけ登場しないと雪も拗ねるはずで、「ああ、やっぱり長い旅を続けてきただけあって、役のままに見える。そこが素敵ですごいなあ」と思えました。

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

福井:今回は平たい言葉で言えば「泣き」の芝居が古代には多い。泣きといってもめそめそすることではなくて、感情の発露で立っていられないという芝居です。アニメはやはり絵なので、長回しで一人の動作を追うことは避けて、どんどんカットを切り替えて話を動かしていくのですが、今の作画技術であればもっと踏み込めると感じていました。第七話や第九話には、そういうシーンがあります。

小野:第七話の古代が迷うシーンですが、迷いと不安が極限状態になって、沖田さんの魂にある意味すがるんです。古代がここまで自信をなくしてしまっていいのか? と思っていたら福井さんがアフレコに来てくださって、「迷っていいです。情けないくらいやっていいです」と言われたので、タガがはずれました。古代って、こんなに泣くかなと思ったのですが、思い出してみれば『2199』の最後で、みっともないくらい泣いているんですよね。彼のメンタリティは、衝動が発露したときはなりふり構わない部分も持ち合わせているんですよ。

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

――第二章で登場人物が出そろった感があります。この第三章では誰の動きに注目すれば?

福井:古代は言うに及ばずですが、キーマンが「そもそもなんなの?」というのがわかってくると思います。

小野:キーマンはクールで俯瞰的に物事を見ている人なので、納得のいくセリフが多くありました。ヤマトの人達に向かって「古代にばかり責任を押しつけて」みたいなことを言うのですが、「この人ただの嫌なヤツじゃないんだ」って(笑)。古代の背中を押すような部分もあるし、ヤマトに寄り添って大事なものが見えている人なのかなと思いました。

福井:たとえば企業の問題点も、内部の人間よりも外からやってきた協力会社の人のほうがわかるわけです。ただ、わかっていても、言うか言わないか、という選択がある。キーマンは言ってしまいます。あの立場にいる人物としては迂闊なことなはずだけれども、彼は愛せる人だし人情家ですね。キーマンともう一人、ズォーダーも注目です。ガトランティスがどのような敵なのかがわかってくる。圧倒的に強大な敵という存在ですが、何がどのように人類に脅威なのか? これが見えてきます。人間ともガミラスともまったく違う存在が、「愛」を外側から見て嗤う、忌み嫌うのですが、逆に言えば、愛を外から見ている彼らだからこそ、愛について語れる部分があるわけです。

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

――第三章のサブタイトルである「純愛」の意味するところを教えてください。

福井:愛というのは、それこそ「愛は地球を救う」であって、輝かしい部分もあるのですが、反面こわいものも含んでいます。世界を見渡せばさまざまな事件が起きていますが、それも間違いなく愛のもとでやっているわけです。でも「そういうことじゃない、愛する人のためだけで人間はいいのではないか?」と言っていたのが『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』だった。しかしその、愛する人のためということも、結局はエゴに転換してしまうのではないか? 第三章「純愛篇」は愛の輝かしい部分を描いていますが、今後は愛の暗い部分も出てくることになると思います。その両面を描くことが大事なのです。先ほど言ったズォーダーはその問題点を非常によくわかっていて、今後もそういう描き方をしていきます。第三章はその所信表明みたいな回ですね。そういう意味では、実はちょっと皮肉なタイトルです。

小野:違う愛も描くからこその、この時点での「純愛篇」となると、僕=古代としては辛いなあと思いました(笑)。ただ、古代としての愛の表現や生き方は、僕は共感ができています。人が好きとか、何かが好きというのは突き詰めていくと理屈ではないと思っていて、理由は後付け。それを俯瞰して問いかけてくる存在も必要だとは思うのですが、ただそれに対してはやっぱり、理屈抜きで「俺は好きなんだ」って、胸を張って言えるかなと思います。

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

福井:古代は、これまでのヤマトではある意味ヒーローだったのですが、『2202』の古代は人間です。その“人間・古代進”は、「決断」とまでも言えない……とっさの反射によって大きく背負ってしまうものもあります。「人間ってやっぱりこうしちゃうんだよ、とっさには」ということです。逆に言えば、人間のそうしたところを、覚悟して受け止めたうえで何をするか、ということだと思うんですよね。そのあたりは深く描いています。ヤマトってもともとそういう人の深層にリーチしようとしていたアニメなんじゃないかと感じますしね。

小野:面白いですね。面白いけれども(古代は)辛いっていう(笑)。時代を映し出していますよね。福井さんがそのように描いているからというのが大きいと思いますが。

――最後に、第三章の一番の見どころをお願いします。

福井:今回の章は「芝居」ですね。役者さんの芝居をすごく粘って録っています。絵も、実は相当リテイクがあって、熱を入れて描き直しなどが行われています。もちろんヤマトらしいメカのアクションやスペクタクルもあるのですが「アニメーションってこれくらい突っ込めるんだ」というところの一端を見ていただけるといいなと思います。ストーリーとしても、方向が見えてきます。第二章までの『2202』は『2199』の続きであり、『さらば』かもしれないし『2』かもしれないしという、言ってみれば三要素の中の複雑な経路をどうやって渡っていくのか? という答え合わせをしてきた部分がありました。第三章からは、それらがクリアできたのはわかったけれど、どこに向かうの? という部分が、初めてちょっと明らかになるのかなというところですね。

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

(C)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

小野:福井さんに「芝居」とおっしゃっていただけましたし、僕もそこなんだなと実は思っていて、完成直前の映像を見てゾクゾクしたんです。生の感情がそこにある気がして。ヤマトはSFアニメですが、やっぱり生きているなって思える映像でした。生々しいまでの生を感じていただきたい。そこにはやっぱりアニメーションを作るすべてのスタッフさん達の技術と、「好き」という“想い”が詰まっていますので、みなさんにも感じていただければと思います。


映画『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第三章「純愛篇」
2017年10月14日(土)より全国20館にて劇場上映中【3週間限定】
バンダイビジュアルクラブ・上映劇場にてBlu-ray特別限定版 発売!

<第三章「純愛篇」CAST>
古代 進:小野大輔/森 雪:桑島法子/島 大介:鈴村健一/真田志郎:大塚芳忠/南部康雄:赤羽根健治
相原義一:國分和人/太田健二郎:千葉優輝/徳川彦左衛門:麦人/西条未来:森谷里美/アナライザー:チョー
佐渡酒造:千葉 繁/桂木透子:甲斐田裕子/加藤三郎:細谷佳正/山本 玲:田中理恵/篠原弘樹:平川大輔
斉藤 始:東地宏樹/永倉志織:雨谷和砂/沖田十三:菅生隆之/土方 竜:石塚運昇/バレル:てらそままさき
キーマン:神谷浩史/ズォーダー:手塚秀彰

<STAFF>
製作総指揮:西﨑彰司/原作:西﨑義展/監督:羽原信義/シリーズ構成:福井晴敏/副監督:小林 誠
キャラクターデザイン:結城信輝/ゲストキャラクター・プロップデザイン:山岡信一
メカニカルデザイン:玉盛順一朗・石津泰志/美術監督:谷岡善王/色彩設計:福谷直樹/撮影監督:堀野大輔
編集:小野寺絵美/音楽:宮川彬良・宮川 泰/音響監督:吉田知弘/音響効果:西村睦弘
オリジナルサウンドエフェクト:柏原 満/CGディレクター:木村太一/アニメーション制作:XEBEC
製作:宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

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アーティスト情報

福井晴敏

生年月日1968年11月15日(49歳)
星座さそり座
出生地東京都墨田区

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