ジェシカ・チャステインだから出せる“女性の格好良さ”の体現がここに―『女神の見えざる手』【連載コラムVol.34】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第34回目はジェシカ・チャステインがロビイスト(政府を影で動かす戦略のプロ)を演じる『女神の見えざる手』。彼女が演じるエリザベス・スローンに魅力を感じるのは、信念を貫くキャラクターであると同時に本物のプロフェッショナルだということ。その姿には性別問わず惚れること間違い無し。


(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

女優ジェシカ・チャステインが好きだ。彼女が映画デビューしたのは31歳のとき。映画女優としてはやや遅いスタートだったので、彼女を知ったのは5〜6年前になるが、ニューヨークのジュリアード学院で演劇を学び、20代はドラマに出て経験を積み、映画デビュー後は次々と良作に出演している、いわゆる演技派女優。

確かな演技力があるからこそ良作に巡り会えるのだろうけれど、『ツリー・オブ・ライフ』『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』『ラブストーリーズ コナ―の涙エリナ―の愛情』といった人間ドラマから、中東専門のCIA分析官を演じた『ゼロ・ダーク・サーティ』、火星探査チームを率いるリーダーの地質学者を演じた『オデッセイ』など、演じられる役の幅広さに驚かされる。毎回その演技に引き込まれる。そして、また彼女の出ている映画を観たいと思う。

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

最新主演作『女神の見えざる手』もそういった理由から「観てみたい」と思った映画だ。しかも今回の題材はロビイストの世界。ロビイストとは、政府を影で動かす戦略のプロ。特定の団体のために政党や議員に働きかけ、政治的決定に影響を与える。日本では馴染みの薄い職業だが、現在アメリカには3万人のロビイストがいるとされている。

この映画の主人公はスゴ腕のロビイスト、エリザベス・スローン。彼女が仕掛ける大胆な戦略、敵対陣営からの反攻や巧妙な罠などを描いたサスペンスで、原題が『Miss Sloane』であるように、エリザベスの生き方、女性の生き方もしっかりと描かれる。男女問わず楽しめる映画であることは間違いないが、男顔負けの仕事をしながらもファッションは女性らしく、14〜15センチのハイヒールで颯爽と歩く姿は働く女性として憧れる。ちなみにエリザベスはワシントンのトップ・ロビイストなので、年収は100万ドル以上だと推測し、スタイリストが自分に合ったアイテムを持ってきてくれるという設定だ。デキる女の服の選び方も参考になるだろう。

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

それ以上に惚れるのは、エリザベスの信念の強さ。新たな銃規制法案に向けて、銃擁護派団体から、女性の銃保持を認める働きをして廃案に持ち込んで欲しいという依頼がくるが、迷わず断る。引き受けないならクビだと上司に言われれば、屈することなく会社を辞め、大手から小さなロビー会社へと移籍。そこからこの物語が始まる。

ロビー活動とは「相手の先手を打つこと」「騙しても騙されないこと」であり、エリザベスの生活は24時間仕事で埋められている。恋人もいない。だから男性への欲望は高級エスコートサービスで満たしているのだが、働く女性の肉体的欲望を意味のあるストーリーとして組み込んでいるのもいい(違法合法問題は別として)。そして、エリザベスとそのエスコートサービスの男性とのエピソードのなかにも、本当の意味でのプロフェッショナルとはどういうことかが描かれていて、好きなエピソードだ。

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

(C)2016 EUROPACORP-FRANCE 2 CINEMA

エリザベスという女性は、単独行動は当たり前、夜中であろうと部下を起こす、必要とあれば味方も騙す、敵にも味方にもしたくない人物に映るだろう。それでも彼女の生き方を格好いいと思ってしまうのは、信念を貫くキャラクターであることと、やはりジェシカ・チャステインの魅力──。

ペイド・バック』以来2度目のタッグとなるジョン・マッデン監督はこう語っている。「ジェシカは当時、ダイヤモンドの原石。強烈な輝きを放っていたので、エリザベス・スローン役は彼女以外に考えられなかった」。経験を積んだ原石は磨かれ、より一層きらめくダイヤモンドになった。そのきらめきが存分に現れているのは、この映画のラスト、約7分間におよぶエリザベスの語りのシーンだ。権力を持つすべての人に特に観て欲しいシーンであり、よくぞ言ってくれたと拍手したくなるシーンであり、最後の最後まで「そういうことだったのか!」と驚かせてくれるエリザベス・スローンは、やっぱり格好いい! 女も男も惚れる女だと思う。

(文・新谷里映)

>その他紹介タイトルはこちら

新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani 

映画『女神の見えざる手』
公開中

監督:ジョン・マッデン
出演:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・バサ=ロー、ジョン・リスゴーほか
2016年/フランス=アメリカ合作/英語/カラー/シネマスコープ/2時間12分/日本語字幕:松浦美奈
配給:キノフィルムズ/木下グループ
映倫区分:G指定
原題:MISS SLOANE

フォトギャラリー

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

ジェシカ・チャスティン

生年月日1977年3月24日(41歳)
星座おひつじ座
出生地米・カリフォルニア・サクラメント

ジェシカ・チャスティンの関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST