製作陣が熱望し、出演が叶ったヒロイン―映画『チェリーボーイズ』釈笛子役・池田エライザ インタビュー

池田エライザ

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とある田舎の田園風景。そこにポツンと映るトヨタ・スープラ。社内には覆面姿の3人の男。彼らの目線の先にいるのは、真っ赤なMA-1に黒いレザーのミニスカ、ブーツをまとった一人の美女。彼女は「もう後戻りはできない」と何かの覚悟を決めた彼らの標的となり…。

古泉智浩による同名コミックを映画化した「チェリーボーイズ」は、脚本に松居大悟(映画『私たちのハァハァ』 『アズミ・ハルコは行方不明』、TVドラマ『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』)、主演のチェリーボーイたちに林遣都栁俊太郎前野朋哉という絶妙なトリオをキャスティング。三者三様の悩みはあれど「脱童貞!」という共通目標に向かって突っ走る彼らの純粋過ぎるエネルギーが画面から溢れる作品だ。

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

このチェリーボーイたちのターゲットとなる釈笛子を演じた池田エライザは近年活躍が目覚ましく、いわゆる“女”を武器にした女性としての描かれ方も増えてきている。池田は映画で初ヒロインを務めた3作目の『みんな! エスパーだよ!』(園子温監督)で早くも下着姿を披露し話題となった。

「そういう作品の依頼が多く来るということもあったんですけど、男性が思い描く女性のヒロインをやりがちかな…とは思います。『エスパー』の時は園さんと喧嘩して受かるというハプニングでしたけど(笑)、結果、見出していただいたありがたいハプニングで。でも(それらの作品に出ることで)別に性の象徴の女優になろうって思っているわけでもないですし、最近は『出演作が続いたなぁ』っていう感じですね」

ちなみに、取材時の参考資料にあった監督らのインタビューには「笛子をやってくれる女優はいないんじゃないか」ということで、一旦企画が頓挫したということや、「キャスティングで最後まで決まらなかったのが笛子」と、そのハードルの高さが記されていた。だが、池田は引き受け、映画が完成することになる。

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

「かなり話し合いをして決めましたね。事務所に皆さんで来てくださって、笛子の良さとかを沢山語ってくださって…結果『これやれるのはエライザしかいないかな』って思っちゃえるくらい説得されてしまって(笑)。監督含め皆さんの熱意が凄かったですね」

笛子は冒頭書いたとおり田舎の風景には映えまくる格好をしているが、実は見た目に反した可愛らしい女性なのである。

「エロいお姉さんになろうというよりは、衣装を決めた段階で、この見た目なら後は勝手にこっちがヒロインを演じていけば、自ずと格好とのギャップは生まれてくると思いましたね。笛子は好きな人のために肉じゃがを作ったり、ちゃんと恋をしている子なので、そんなに役作りしなくてもちゃんと乙女でいられました。ただ『(スカートなので)だいぶ布面積足りないな』ってずっと思いながらやっていましたけど(笑)、それは原作者と松居さんの描く『童貞が求める女性像』というか、『こういうツンツンした女性が肉じゃがとかいいよね』というのはすごく私も分かるんですよね」

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

実際「青年誌をよく読む」という池田ならではの悩みは「読んでいる時は男目線なので、ちゃんと客観的に世界に入り込めるか不安でしたね」ということだった。そんな彼女から見た『チェリーボーイズ』の世界はコメディでありながらきちんとリアリティの感じられるものになっている。

「この話は田舎っていう閉鎖的な環境だからこそ出来るというか…選択肢があまりにも狭かったり少なかったり、極端だったりしますよね? それを映画だからこそちゃんとコミカルに出来たし、あるあるだと思う人はいるんだろうなって思いました。なにより3人の『俺たちは必死でやっているんだよ!』っていう感じがすごく伝わってきますよね」

作品がコミカルになればなるほどこの手のものは過剰演出をしがちだが、それがないのも本作をいい感じにまとめている。

「現場はでかなり集中していて、皆さん役を作り込んでいましたし、撮影はすごく楽しかったですね。そこで私もギリギリアウトとセーフのラインを探りながら『絶対に下品な女性にはならないように』と信念を持ってやりましたし、そのために現場でも戦いましたね。例えば我慢大会みたいなシーンは絵コンテをもらって『どうしてこうしたんですか?』とか、監督たちの意図をなるべく汲みたかったので、いろいろお話を聞いて理解していきました。そこで「こういうのはどうですか?」と提案もさせていただいての撮影だったので、それで監督や松居さんたち物語を温めてきた人たちが『よしっ!』って清々しく撮れたら良いなって思っていました」

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

この提案というのは、池田が演じてきた過去の女性像からではなく、あくまで作品の男性読者目線(=普段自分が読んでいる感覚)の方が多かったようで、「監督も一緒に考えてくれる方だったし、コメディなので作品のテンポも考えながらいっしょに笛子を作れました」という。完成像には「女性でも憧れてもらえる、たくましい信念のある女性になれたと思います。だから女性も笛子目線でいっしょに観てもらえると思うし、彼女は人生うまく行くんだろうなと思いますね」と満足できたよう。

この笛子はもちろん、彼女が恋する一匹狼の五木(演:般若)やチェリーボーイズの3人が頭の上がらない不良気取りの中出(演:石垣佑磨)など、実際の素性がはっきりしないキャラクターも多く、それが話を面白くもしている。現場での絡み方もそれぞれだ。

「(一番絡みのある)林さんとはほとんど喋ってないですね。林さんもすごく集中されていましたし、私も距離を詰める役柄ではなかったので…。多分、国森としても笛子を引きで見たかったと思うし。撮影の最後の方で『バンクシーに関心がある』と仰っていて、それに関する話をしたくらいですかね。逆に(共演はするがセリフをほとんどかわさない)般若さんとはすごくたくさん話しました。石垣さんはすごく喋るしアニキ肌。ただ、普段からとても声が大きいので、それでビクッってなったり(笑)。みなさんが役に徹してくださっていたので、芝居中は気を遣うこと無くフラットにいけました」

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

(C)古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

とにかく打算的ではない、真っ直ぐ過ぎる男たちのドタバタ劇と、ある意味それを全て上から観ている笛子。彼女が劇中に発する「馬鹿じゃん」というセリフは、まさにそんな男たちへ向けたメッセージとなっている。

「全てですよね、あれがもう。『(童貞を捨てるために)襲うしかねぇ!』って。いやいやいや…って思うけど(笑)。でも笛子の『馬鹿じゃん』っていうセリフが言えたことはすごく嬉しくて。あのセリフがないと物語を回収できないというか、決して3人を卑下しているわけでなく『ちょっと楽しいなあの人達』って思う部分もあるのかなって。やっぱり女性はその世界(童貞云々)では蚊帳の外に居るというか、(客観的な)全てが詰まったセリフだったので、これから観る人達にはそのセリフをなぜ言うことになったのかはすごく楽しみにしてほしいですね」


映画『チェリーボーイズ』
2018年2月17日よりシネ・リーブル池袋、渋谷TOEIほか全国公開中

林遣都 栁俊太郎 前野朋哉
池田エライザ / 石垣佑磨 岡山天音 般若
山谷花純 松本メイ 岸明日香 馬場良馬
吹越満 立石涼子

監督:西海謙一郎
脚本:松居大悟
原作:古泉智浩『チェリーボーイズ』(青林工藝舎刊)
主題歌:「GO! GO! Cherry Boy!」MANNISH BOYS(スピードスターレコーズ)
制作プロダクション:マイケルギオン
製作:東映ビデオ マイケルギオン
配給・宣伝:アークエンタテインメント
2018 年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/113 分/R15+

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