【深層インタビュー】キングコング・西野亮廣 “炎上芸人”の本音を語る「『はねるのトびら』の先は崖だった」

ちょっとした冗談のつもりで言っても、揚げ足を取られ、すぐに炎上してしまう。発言に細心の注意を払わなければならず、芸能人にとって生きづらい世の中になってしまった。

それでも、炎上を恐れることなく、思ったことを素直に表現する男がいる。“ミスター炎上”と呼ばれてもおかしくない、キングコングの西野亮廣だ。

なぜ、彼は人に嫌われることを恐れず、発信し続けられるのだろうか。

8月1日(土)に単独ライブ「西野亮廣独演会in日比谷公会堂」を控える本人に直撃すると――。

「『はねるのトびら』の先は崖だった」と語るキングコング・西野亮廣

キングコング・西野亮廣

トンネルを抜けたら…崖

99年、吉本総合芸能学院(NSC)で出会った梶原雄太と「キングコング」を結成し、翌年には19歳でNHK上方漫才コンテスト最優秀賞を受賞。20歳のときに『はねるのトびら』(フジテレビ系)が深夜帯でスタートし、女子高生などに大人気に。アイドル的な存在となる。そして、05年には『はねる』がゴールデン帯に昇格し、毎週のように視聴率20%を記録。傍から見れば、順風満帆過ぎるほどの芸人人生を送っていた。

だが、本人は絶望感に苛まれていたという。

「『はねる』をゴールデンに上げれば、自分がとんでもないスターになっていて、全部ひっくり返ると思っていたんですよ。でも、その上には、さんまさん、たけしさん、タモリさん、ダウンタウンさんたちがいらっしゃる。何にも、ひっくり返っていない。トンネルを抜けたら、すごい世界がひろがっていると思っていたら、崖でした」

“お笑いビッグ3”にしても、一朝一夕で現在の地位に上り詰めたわけではない。『はねる』などの番組をさらに大きくすれば、下克上が起こるとは考えなかったのだろうか。

「25歳のときにそういう状況になっていたら、本当は凄いことになっているはずなんですよ。たとえば、ダウンタウンさんはCDを出したら数百万枚、本を出したら何百万部と売れた。でも、自分には何の影響力もなかった。ただゴールデンの番組を持っているだけ、ただ知名度があるだけのタレントさんになっているなと思ったんです」

『はねるのトびら』、ゴールデン進出でわかった“知名度と集客力”の違い

たしかに、90年代中盤、松本人志の『遺書』、浜田雅功の『読め!』は大ベストセラーになり、H Jungle with tの『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント』は200万枚を超える大ヒットを記録している。ダウンタウンは、無料で観られるテレビで消費されるだけの存在ではなく、“お金を払う客”を確実に持ち、世の中を席巻していた。

芸人のひとつのゴールと思われる“テレビのゴールデン帯で番組をたくさん持つ”という点において、西野はダウンタウンよりも早く辿り着いた。しかし、“お金を払う客”、つまり“熱狂的に応援してくれるファン”がまるでいなかったのだ。

「『はねる』が深夜のときは、お客さんを持っていたんですよ。DVD を出したら、売れましたしね。でも、ゴールデンになった瞬間、知名度は上がったんですけど、お客さんは減った。知名度と集客力は、ぜんぜん違うもの。ライブをしても、『人来るの?』という状態でしたからね」

50代「確認作業するだけ」の自分が見えた

爆発的に売れながら、みずからを「何の影響力もなかった」と評する男は、急ハンドルを切る。「ひな壇番組には出ない」と決意したり、絵本を出版したりと、レールから逸脱した行動をするようになった。

「30代、40代、50代の自分が見えたんですよね。なんとなくテレビに出て、なんとなく右肩下がりで、確認作業するだけの人生になってしまうと。芸人さんって、1年目は『とんでもないところに行ける』という無限の想像力がある。でも、5年、10年と時間が経つと、『だいたいこの辺で落ち着くんだろうな』と見えてきてしまう。僕も25歳のときに、先が見えちゃったんですよね。それが、イヤだった。このまま同じことを続けていても、もう先がないなと思ったんです」

西野

「25歳の時より確実に手ごたえがある」キングコング・西野亮廣

日本人は『テレビに出ない=人気の下落』と単純に捉えがちだ。10年前は今以上に、そう考えられていた。まして、テレビで育ち、テレビでスターダムに伸し上がった西野であれば、なおさらだ。“世間から忘れ去られる恐怖”を感じたことはなかったか。

「そのリスクは絶対あるんですけど、25歳のときに満点を出しちゃっているので、同じことをしても、結局一緒か下かしかないなと」

現在は、月に数えるほどしかテレビ出演をしていない。

「たしかに、『最近テレビで見ないですね』と言われますけど、毎日忙しいんですよね。25歳のときと比べると、活動の内容も規模も大きくなっている。ガツンと掴んだと言ったら噓になるけど、手応えがないと言っても噓になる」

「ウォルト・ディズニーを倒す」発言の意味

テレビに出まくっていた当時はライブをしても、思うようには“お金を払う客”は集まらなかった。しかし、テレビではあまり見掛けない今、2,000人もの会場を埋めている。一見、パラドックスのように思えるが、「テレビに出演し続ければ、宣伝になり、有料ライブのチケットが売れる」という認識自体が誤りなのかもしれない。

「これからは、芸人さんも、『お客さんを持っている人』が生き残るんじゃないですかね。芸人の場合、テレビで有名になるまではお客さんが付いてくる。でも、達成した瞬間、“物語”がなくなってしまい、『次、この人をどう応援したらいいんだろう』とわからなくなってしまい、離れていってしまう。だから、僕は“物語”をわかりやすく提示しています。『ウォルト・ディズニー倒す』と言っている。すごく遠くて、なかなかゴールを切れそうにない。しかも、僕よりちょっと前に、SEKAI NO OWARIが走っていますからね。当面の目標は、5年以内に1万人のライブをコンスタントにすること。そのためには、お客さんが必要ですし、離したくないんです」

「好き嫌いをハッキリ言っていかないと共感してくれない」

「モノを作って、売っていく人間として、当たり障りなく過ごしているのはよくない」キングコング・西野亮廣

「モノを作って、売っていく人間として、当たり障りなく過ごしているのはよくない」キングコング・西野亮廣

身銭を切ってくれる客がいるかどうか。タレントとして好きなことをして生き続けるには、そこに懸かっている。

「当たり障りなく過ごしていたら、『なんとなく好き』『なんとも思わない』という人しか生まれないと思うんですよね。もしかしたら、そのほうが幸せかもしれない。でも、モノを作って、売っていく人間としては良くない。好き嫌いをすごくハッキリ言っていかないと、熱狂的に応援してくれる人や共感してくれる人は発生しない。何かを広めるとき、批判の声は絶対に入れといたほうが良い。10割肯定だったら、すぐに話題も萎んでしまう。批判があると、応酬がありますしね。僕の場合、すぐネットニュースになる。これは、すごい才能であって、あまり消そうとは思わないですね。そのおかげで、ニュースとして取り上げられるので」

芸能界を見渡せば、何十年も活躍し続けているアーティストには、必ず熱狂的なファンが大勢いる。アーティストのメッセージ性のある生き方や言動に惚れ込み、共感したり、同時代性を感じていたりするからこそ、ライブに足を運んだり、CDを買ったりする。無論、アーティストの個性が強ければ強いほど、アンチも湧いてくる。

一時と比べ、カリスマの生まれない時代になった。その背景には、芸能界にも、世間に叩かれないように、穏便に生きることを善とする風潮があるからだろう。人を引っ張る言葉には力がある。しかし、100%の称賛を欲し、1%の批判をも気にする姿勢からは、おざなりな言葉しか生まれない。

批判を全く恐れず、おいしいとさえ思っている西野亮廣。不気味な存在だ。

(文=シエ藤)

キングコング西野の単独ライブ情報
「西野亮廣独演会in日比谷公会堂」
日時:8月1日(土)
会場:日比谷公会堂

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アーティスト情報

西野亮廣

生年月日1980年7月3日(38歳)
星座かに座
出生地兵庫県川西市

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