メディアクリエイター・ハイロックのモノ選びに新境地。新アトリエで見せる「進化」と「原点回帰」とは?

ハイロック

世界中のトピックスとモノを紹介しているウェブサイト「Fresh News Delivery」管理人であり(2018年6月時点、Webメディア「HIVISION」に移転)、雑誌・WEBマガジンなどで“モノ”セレクターとして活躍しているメディアクリエイター・ハイロック。彼が厳選する“モノ”“コト”はエッジー&フレンドリー。自身が手に取ったモノ、購入したモノしか紹介しないというニュートラルな姿勢を貫き、多くのファンの共感を集めている。

そんな彼が、2015年9月、今まで拠点として活動していた東京ではなく、郊外の某所にアトリエを完成させた。なんとすべてDIYで仕上げた空間に、今まで集めてきたモノをディスプレイした、いわばモノのコレクター歴20年の集大成となる場所だ。「モノ選びの進化の過程」と話す、アトリエの内容、現在の思いを聞いた。


モノ提案の進化のために、アトリエは必要だった

――2005年に「Fresh News Delivery」を立ち上げてから10年。ある意味節目のタイミングとも言えそうですが、アトリエを作ろうと思われたきっかけは何だったのですか?

必ずどのメディアからも「モノ選びのコツは?」という質問をされるんですけど、その答えになる、僕のモノの選び方が変わってきたんですね。

今思うと、昔は一点ずつモノを買っていたんです。「Fresh News Delivery」を始めたのも、自分のために、自分の買ったものをアーカイブするという意味合いが強かった。ところがここ5年は、自分がセレクトしたものを人が見てくれているという使命感が出てきました。

そのせいか、最近はモノが置かれるシーンを思い浮かべて選ぶようになったんです。だからモノを紹介するときも、ひとつのモノをポンと単体で紹介するよりは、具体的なシーンを含めて紹介したくなって。だから、そういうシーンを作れる場所が欲しかった。

僕のモノの選び方が進化しているように、モノの紹介の仕方もちょっとずつ進化させていきたいんです。

――新しい提案の形ですね。

このロジックは、モノを売るサイトでもすごく重要だし、これからそうなってくるだろうなと、僕は感じています。実店舗だと、コーナーなどのディスプレイを通じて、店主のセンスでモノをシーンで見せられるじゃないですか。一方、オンラインストアだと簡素化されて、モノが点でしか見えなくなってしまう。だから買い物が味気なくなってくるんですよ。せっかくブランドやモノが持っているストーリーも、ほとんど関係なくなってしまう。

だからオンラインも、モノをシーンで見せられる場所にしていかなくちゃいけないなと思って。アトリエを作ったのは、そういうことの表れ、というところですかね。


――「Fresh News Delivery」や著書『I LOVE FND』(マガジンハウス 刊)でご紹介されているアイテムも、アトリエに多く取り入れられていますね。

アラジンのストーブとやかん

お札のナプキンと100円ショップで購入したトレー

そうなんです。例えばこのやかん。やかん一つ紹介するにしても、アラジンのストーブと組み合わせるとかっこいいですよ、とか。このお札のナプキンは、こういう風に100円ショップで売っているようなトレーに置くとちょっとよく見えますよ、とか。本では単品で紹介していたけど、ここではそういう提案もできる。

――レアものや高級なものから100円ショップのものまで……。本当に柔軟な感覚でモノ選びをされているのですね。

そこは心掛けている点ですね。Cassina(カッシーナ)で150万円のソファも買うけど、100円ショップのトレーも買いますよっていう。基本的にモノの情報って、買えないと面白くないじゃないですか。だから「Fresh News Delivery」で紹介するものは、必ずamazonか楽天、どちらかで買えるものにしているんです。

あと僕は、僕自身が使ったものしか紹介しません。使っていないと、言い切れないのが嫌なんですよ。「これ良さそうです」ではなく、僕はいいか悪いか、はっきり言える。そこもこだわりのひとつですね。

父譲りのDIYスキルを発揮。資材もモノ選びの対象に

――今まで拠点とされていた東京から少し離れた場所にありますが、周囲の環境はいかがですか。

近くにはホームセンターがいっぱいあるんですよ。むしろ東京より環境が良くて。東京だとインテリアショップなどをまわるのが好きだったんですが、今はホームセンターの方が面白いですね。最初は本館しか見ていなかったんですけど、DIYをするようになって、別館の資材館と園芸館も見るようになりました。

DIY用具ですらおしゃれなインテリアに

DIY用具ですらおしゃれなインテリアに

――ハイロックさんはセレクターというイメージがあったので、正直、DIYでイチからアトリエを作り上げたということが意外でした。

DIYは親父の真似をしているだけなんです。すごく器用で、なんでも作っちゃう人。思い返せば、僕も小学生の頃からやっていましたね。ギターを自分で作ったこともありますし。


――素養があって、今回それを発揮された形ですね。より本格的に取り組むようになったのは、今回のアトリエ作りがきっかけですか?

そうですね。ホームセンターには以前は必要があれば行っていた程度でしたが、今は日常的にまわるルートになりました。だーっと早足で見てまわるけど、必要なものには不思議と引き寄せられますね。

ワークスペース

駐車場に敷くためのシートをフローリングのアーロンチェアの下に

例えばこのシート。駐車場に敷くものなんですが、カフェスペースで土足にしていたところに敷いてみました。これを使えば裸足で歩ける!ってひらめいて。クッション性がある低反発素材だから、歩いた感触も気持ちいい。ここ以外にワークスペースのフローリングにも敷いています。傷つき防止になりますし、椅子がピタっと留まるのもいい。これは、高級インテリアショップなどでは絶対に出合わない。ホームセンターの資材館に行かないとないんですね。

農家の菊栽培用のプランターをチョイス

農家の菊栽培用のプランターをチョイス

あとはこのプランター。園芸館の農作業コーナーにあった菊の栽培に使うものなんですが、一番飾り気がなくて、ミニマムでかっこよかった。プランターにもいろいろあるので迷っていたんですが、これに決めましたね。

――本来の用途にとらわれず、使える!と思ったら取り入れているのですね。

そのためにも、いつもあらかじめ、インテリアやデッドスペースなどの場所を大きさを測っておいています。いろんなところを見てまわるなかで、「これはあそこに入りそうだ」って思ったら、サイズを見て、合うなら買う。「ここに合うものを買おう」って決め打ちして探しに行っても、なかなかないじゃないですか。だから、サイズ、データのリストを、頭の中や簡単なメモで常に持っているんです。


喫茶店経営の母の影響も。コーヒーに求めるのは「完璧な道具」

アトリエの「カフェスペース」にあるコーヒーコーナー

アトリエの「カフェスペース」にあるコーヒースペース

――モノ選びのベースには、センスだけでなく、データもあるということですね。

お湯の温度を測る赤外線温度センサー

お湯の温度を測る赤外線温度センサー

きっちりするのが好きで、やるんだったら一番いい状態で作りたいっていうのがあって。

例えば、今回アトリエに作ったコーヒースペースもそうですね。普通、コーヒー器具はコーヒーコーナーで買うんでしょうけど、僕は化学コーナーから買います。

そもそも、コーヒーって豆からいかに旨味成分を抽出できるかっていう化学実験みたいなものじゃないですか。コーヒーメーカーのCHEMEX(ケメックス)も、もともとは化学者が開発したコーヒー器具。だから化学実験の器具とすごく相性がいい。化学実験などで使う赤外線温度センサーでお湯の温度を測って、最適温度で淹れたりします。コーヒー豆を保存する容器も、本来は化学薬品を入れるものを使っています。

化学式を守っていれば、誰でもおいしいコーヒーが淹れられる。それのブレをなくしていくには、データが大事なんですよね。

――そういえば、ハイロックさんは調理師免許もお持ちでしたね。調理道具の中でも、特にコーヒーには気を使っている?

コーヒーはかなり気を使っていますね。完璧な道具に。

うちの母親が喫茶店をやっていたんで、小学生くらいから自分でコーヒーをドリップして淹れているんです。昔は、母親の後を継ごうと思っていたんですよ。結局は20年間グラフィックデザイナーをして、最終的に「LIL' RIRE CAFE」(東京・渋谷)をプロデュースしているっていう。今も、旅行や仕事で他の都市に行くと、そこのおいしいコーヒー屋で必ず豆を買ってきたりもしていますし。

思えば、DIYにせよコーヒーにせよ、両親の姿は今の自分の職業に役立っていますよね。人生無駄なし。本当にそう思いますね。

   

最終的に目指すのは、家づくり

――今後の展望を教えて下さい。

今回のアトリエは、とりあえず自分の中では完成した感じがあります。まだまだ進化はしていきますが。

次はガレージですね。車が2台入りますが、入れるのは1台にして、もう1台分は作業スペースに。あまりきれいに作りすぎないっていうのがポイントかなあと思っていますね。スティーブ・ジョブズも、Appleを創業したのはガレージ。そういうイメージで、いろいろなコードや作業台椅子が置いてあったりする、というスペースにしたいです。

最終的には、家。すごくチャチなプレハブハウスにして、それをガラスで囲もうと思っているんです。僕は外と内の中間みたいな場所が好きなんですよ。土間や、映画で出てくるようなアメリカの家のウッドテラスとか。そこでロッキングチェアに揺られながら本を読んだりして。だから、家を庭ごとガラスで囲えばそういう空間ができるし、面白いかなと思っていて。アトリエとは違って、その家の中に置くモノは少なく抑えます。もしくは何もなくてもいいかな、とも。ノートブックパソコンと本が数冊あればいいっていうくらいの気持ちですね。

――新しい方向性が次々と……。東京都外での取り組みも増えてきそうですが、今後はどこを拠点にされるんですか?

もう、そういう概念がなくなりましたね。東京の仕事があるので定期的には行く必要がありますが、どこで仕事をするかとか、どこを拠点にするとか、そういう概念はだんだんなくなってきました。言ってしまえば、キャンピングカーを買って、路上生活でもいい、くらいの気持ちでもいます。

今は、東京だからカッコイイとか、地方だから仕事に制限が出る、という時代じゃない。どこにいても情報は平等に手に入るし、価値観さえ持っていれば、どこ住んでいても関係ない。

――最後に、ハイロックさんにとって、モノを買う、集める、付き合うとは、どういうことでしょうか。

ここは以前から変わらず、「鏡」ですね。モノを選ぶセンスも好みも、今までの経験値。今欲しいものも、自分の内面から出てくるもの。例えば運動がしたいから運動器具を買う、勉強がしたいから勉強道具を買う、おいしいコーヒーが飲みたいからコーヒー器具を買う。結局、今の自分の中身を映し出す「鏡」なんです。


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■プロフィール

ハイロック

アパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザインを経て2011年独立。表現の場を選ばないメディアクリエイターとしてのキャリアをスタート。2014年、渋谷にLIL’RIRE CAFEをオープン。カフェでの新しいクリエイティブ表現を企画。ローリングストーン誌やファッション誌GRINDでの連載をはじめメディア各方面にてグッドデザインアイテム、最新のガジェットを紹介。著書に『I LOVE FND ボクがコレを選ぶ理由』。2015年9月に新しいモノ提案のステージとなるアトリエを完成させた。

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