松たか子 8年ぶりのオリジナルアルバムはバラエティあふれる楽曲でヴォーカリストとして成長し続ける姿を証明【インタビュー】

松たか子

2017年の松たか子は、ヴォーカリストとしての話題も豊富だった。自ら主演したTBS系 火曜ドラマ『カルテット』では、劇中ユニット“Doughnuts Hole”の一員として、椎名林檎作の主題歌「おとなの掟」を披露。さらにNHK連続テレビ小説『わろてんか』の主題歌「明日はどこから」を担当した。ちなみに、これは彼女自身の作詞・作曲である。さらに今年は、歌手デビュー20周年のアニバーサリーでもあった。

こうした機運もあり、8年ぶりのオリジナルアルバム『明日はどこから』へと至ったのだろう。表題曲など3曲が、彼女自身のペンによるものだ。ほかにも複数のソングライターが楽曲提供し、様々な角度から、その歌の魅力を浮き彫りにしている。

「どなたにお願いするかに関しては、プロデューサーの佐橋さんにお任せしましたけど、そもそも挙がってきたお名前というのが、イヤと言う理由のない方々ばかりでした(笑)。なので、歌うのがすごく楽しみでしたね。アルバムは8年ぶりですが、出すタイミングに関しては、周囲に任せているところもあるんです。ただ、今年はデビューして20周年ということで、“なにかを形にできれば”という想いがあったのは事実です。自分の曲も、少しずつ溜まっていましたし…」

“イヤという理由のない”人達というのは、前述の椎名林檎、加藤ひさし(ザ・コレクターズ)、伊藤俊吾(キンモクセイ)、大貫妙子、などなどである。さらには細野晴臣のカヴァー曲も含まれる。

ところで、アルバム表題曲でもある「明日はどこから」は、どのように誕生したのだろうか。

「いつもは曲から先に書くんですが、この時は、“詞を先に書けないかな”って思ったんですよ。とはいえ、最初はメモ書きみたいなことから始めたんですけど…。事前に脚本も何冊か頂きましたが、それを読み込んで書く、ということではなかったですね。ただ、このドラマが吉本の創業者の話だと伺った時、そこには芸事の世界の厳しさがあって、人を笑わせて幸せにするまでの過程には、辛いこともあっただろうし、だったらそれを、笑いとは逆のことを書きたくなったんですけどね」

実は曲の構想段階では「涙」という言葉も用いていたそうだが、『わろてんか』で、さすがにそれは…ということで、「“涙”を“明日”という言葉にしても、言いたいことは伝わるかな…」という発想を経て、今の形になったそうだ。一聴すればわかるが、この曲は冒頭から鮮やかかつ爽やかで、さらに、ただ繰り返すようで微妙に変化するサビのメロディラインが魅力だ。

もうひとつ、大きな話題となりそうなのが、「おとなの掟」。ボーナストラックを含めて、2バージョンを聴き比べられる。

「そうなんですよ。実は今回、私のソロバージョンもMaki Maki(ドラマの役名・巻真紀からの名前)で録音したんですよ。ドラマのなかで4人で歌ったものと、どちらをメインで入れるかを考えたんですが、松田龍平君が“Doughnuts Hole”としてアルバムに入ることを“楽しみにしてる”という話をマネージャーさんから伝え聞きまして(笑)、やはりそちらをメインにして、私のソロの方をオマケじゃないですが、ボーナストラックにさせていただきました」

椎名林檎からは、直々に歌唱指導もたまわったそうであり、また、ほかにも大貫妙子が提供した「空とぶペンギン」も、作者から直々のものがあったそうだ。松たか子はれっきとした“シンガー・ソング・ライター”だが、自分の世界に閉じ籠もることはない。刺激を受けることができる環境の大切さを、よく理解しているのだろう。

椎名林檎さんには、掌の上で“コロコロ転がしてもらった”というか(笑)、彼女の世界に巻き込まれていくことが面白くもありました。大貫妙子さんの時は、頂いたデモに完璧な世界観がありましたし、最初は近づいてみました。でも、“そこには囚われずに”という言葉をご本人からいただいて、いったん離れて、でも戻るところは戻ったりもしつつ、とても勉強になりました」

このアルバムの魅力は、アップテンポのロック寄りの作品にもある。松たか子といえば、映画『アナと雪の女王』の「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」日本語版での胸のすく歌唱も記憶に残るが、そうした側面を感じ取れる要素も、用意されているのだ。いずれライヴで聴きたい作品達でもあり、例えば「奇跡のオト」などはそうだろう。

「この曲はまさに、前回のツアーの時、最後にステージで演奏できるようなものを、ということで作ってみました。その時はまだ、歌詞も完全じゃなかったのですが、それを今回、仕上げてレコーディングしました。まさにツアーをやっている時の境を描いていますね。『恋のサークルアラウンド』は、ザ・コレクターズの加藤ひさしさんが書いてくださったんですが、私が歌うには音も高いし、最初は歌い切る自信がなかったんですよ。でもバンドの音や、スターダスト☆レビューさんのコーラスに助けて頂き、最後は“チャレンジしてみて良かった”と思えました」

ほかにも細野晴臣の「三時の子守唄」のカヴァーや、キンモクセイの伊藤俊吾が提供した「いのちがつづく」、Sans Seaが提供した「君の雨」が含まれる。どれひとつとして同系色はなく、かといって、悪戯にカラフルというわけでもない、そんな佇まいのアルバムである。

さらにもう1曲。脚本家の坂元裕二が作詞し、彼女が作曲したのが「つなぐもの」だ。来年1月20日に公開される映画『嘘を愛する女』(長澤まさみ高橋一生出演)の主題歌である。

「20周年ということで、デビュー曲『明日、春が来たら』の詞を書いて頂いた坂元裕二さんには、この機会に“何かお願いできたらいいね”、と話をしてたんですけど、あれから時間が経って、再び詞を書いていただくことができました。しかもそれを、自分の曲で歌えたのがうれしかったです。でもこの曲が形になったことで、“アルバムが完成しつつあるんだな”と、実感することもできましたね。実は歌に関しては、ピアノと“せーの!”で録りましたから、とても緊張しました。アレンジについては、木管アンサンブルを活かしたものになっています」

彼女のヴォーカルのファンには、待ちに待った『明日はどこから』だが、8年ぶりとはいえ、彼女のなかの「歌」が、決して止まっていなかったことを、軽やかに証明する内容になっている。(取材・文/小貫信昭)

松たか子 リリース情報

明日はどこから

NEW ALBUM
2017年12月23日レンタル開始
2017年12月6日発売

BVCL-855 3,000円(税抜)

⇒作品紹介・レビューを読む

映画『嘘を愛する女』

映画『嘘を愛する女』

©2018「嘘を愛する女」製作委員会

2018年1月20日より全国ロードショー

●監督/中江和仁 ●脚本/中江和仁、近藤希実 ●音楽/富貴晴美 ●出演/長澤まさみ、高橋一生、DAIGO、川栄李奈、黒木瞳、吉田鋼太郎 ほか

食品メーカーに勤めるキャリアウーマンの由加利(長澤まさみ)は、研究医であり面倒見の良い恋人・桔平(高橋一生)と暮らしていた。ある日、桔平の遅い帰りを待っていた由加利の元に警察官が訪れる。そこで彼女は、桔平がくも膜下出血で倒れたことと、彼の所持していた運転免許証や医師免許証が偽装されたものだったと知り…。人気CMを手掛けてきた中江和仁が長編映画で初めてメガホンをとった、衝撃のラブミステリー。

TBS系 火曜ドラマ『カルテット』

2017年1〜3月、TBS系「火曜ドラマ」にて放送

●脚本/坂元裕二 ●演出/金子文紀、坪井敏雄 ●演出・チーフプロデュース/土井裕泰 ●プロデュース/佐野亜裕美 ●出演/松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし(サンドウィッチマン)、八木亜希子、Mummy-D、藤原季節

5年ぶりのテレビドラマ出演となった、松たか子の最新出演作。真紀(松たか子)はカラオケボックスで偶然出会った演奏者3人とカルテットを組み、音楽活動を目的に軽井沢で共同生活を始める。しかし、彼らの出会いは仕組まれたものだった。4人が出会った理由やそれぞれの背景が明らかになり、切実な想いが複雑に絡み合ってゆくなか、真紀の過去がカルテットの関係を大きく変化させていく。

NHK連続テレビ小説『わろてんか』

月〜土曜8:00〜8:15、NHK総合テレビにて放送中

●制作統括/後藤高久 ●プロデューサー/長谷知記 ●演出/本木一博、東山充裕、川野秀昭 ●出演/葵わかな、松坂桃李、濱田岳、高橋一生、遠藤憲一、鈴木保奈美、竹下景子、千葉雄大、堀田真由、徳永えり ほか

吉本興業の創業者で女性興行師でもある吉本せいをモデルに、脚本家・吉田智子が書き下ろしたオリジナルストーリー。京都の薬問屋に生まれたてんは、笑い上戸のあまり父から“笑い禁止”を言い渡されていた。しかし、祭りで目にした落語や芸の世界に心を奪われてしまう。その時に出会った青年・藤吉と恋に落ち、てんは藤吉の実家がある大阪で自分たちの寄席“風鳥亭”を開業するが…。

松たか子オフィシャルサイト

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アーティスト情報

松たか子

生年月日1977年6月10日(41歳)
星座ふたご座
出生地東京都

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