<インタビュー>「求められるバンドになるしかない」荒川ケンタウロス、メジャーデビューを語る

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国分寺発の5人組バンド、荒川ケンタウロスがメジャーデビューミニアルバム『玉子の王様』をリリースした。

荒川…?玉子?王様?と、いちいち気になるワードに突っ込みたくなるが、そのサウンドは、きわめてエバーグリーン。その普遍的なメロディには、どこかスピッツにも通じる切なさがあり、一筋縄ではいかない奥深さと、遊び心が詰まっている。

今回のインタビューには、バンドの中心人物・楠本(G)と場前(Key)が登場。そこでは、同世代ながら父親のようにバンドをリードする楠本と、その息子のようにバンドを通じて成長する場前という、ふたりの面白い関係が垣間見られた。一見どこにでもいるようで、3月10日にツタロックフェスにも登場する荒ケン、かなりユニークなバンドかも。(インタビュー&文:秦理絵)

場前(Key)の成長記録でもあるんですよ(笑)
荒川ケンタウロスって

―メンバーは楠本さんが中心となって集めたそうですが?

楠本:僕が前にやってたバンドが解散して、ベースの土田と一緒にマイペースでやろうか、みたいな感じでメンバー募集したんです。まったく知らない人とやりたかったから、ネットを使って。どんな感じになるかゼロからやってみたかったんです。

―それで場前さんとも出会うわけですね?

楠本:彼はちょっと後でしたね。最初、ヴォーカルの一戸がメンバー募集に来て。まずは音源を交換して。その声を聴いて、高い声は出るけどちょっと枯れた危うい瞬間がある、みたいな。その歌声に魅力を感じて

会うことにしました。一戸は、昔アカペラをやってたみたいで、ギターを持ったのも遅いですし、バンドを組むのも初めてなんです。それはこの人(場前)もそうですね。コピバンをやってて。

―場前さんは何をコピーしてたんですか?

場前:その時は東京事変のコピーをしてました。

楠本:聴いたんですけど、これがなかなかのクオリティでして…(笑)

場前:今考えると、本当に聴けたもんじゃないものを(笑)。よくそれで入れたと思います。

―じゃあ楠本さんは、どうして場前さんをメンバーに入れたんですか?

楠本:震えてたんですよ、この人が。生まれたての小鹿のような目をしてて。断ったら、こいつはもう今後他のバンド募集に行かないだろうなと思って(笑)。でもね、キーボードを20歳過ぎてからはじめたっていう決断力が、面白そうだなと。なかなかできないなと思ったんですよ。ま、彼の成長記録でもあるんですよね、荒川ケンタウロスって。

やっぱりお茶の間まで届くって意味では、
いろんな人に聴いてもらえる可能性がある

―そこから、2011年には早くもCDリリースがあって、バイヤーさんにプッシュされたり、インディーズ時代はかなり順調に活動しているように見えますが?

楠本:もともと好きだからやってるので楽しかったですよ、ずっと。自分たちが良いと思ってる曲を、好きなアレンジでやってるだけ。それで周りがどんどん評価をしてくれたのは嬉しかったですし。ただ、レコーディングではある程度クオリティを求められるというか、最低ラインがあるので。毎回それをしっかり乗り越えていく壁があったりして。

―最初はマイペースにって言ってましたけど、そういう意味では、けっこうストイックになっていった?

楠本:そうですね。プロデューサーとして、柏井日向さんと高野勲さんが一緒にやってくれたので。まったくバンド経験もない人間がいるなかで、「これは遊びじゃないんだ」っていう、ある意味シビアな環境に置かれて。本当に良いものを作ろうっていう感じはあったので、そこをクリアしていく。それによって押し上げてもらってる感じもしてますね。

―メジャーデビューが決まったときはどんな気持ちでしたか?

場前:僕は、意外と「やったー!」っていう感じもなくて、「その反応、大丈夫?」っていうぐらいでしたね。淡々と「あ、はい」みたいな。わからないことが多すぎて。メジャーって存在は昔から聞いてるけど、改めて「あなたです」って言われると、「え?どういうこと?」みたいな感じで、ぽかんとしちゃってました。

楠本:別に到達地点でもないしっていう感じですね。やっぱりお茶の間まで届くって意味では、ライブハウスに来れる人だけじゃなくて、いろんな人に聴いてもらえる可能性があるから。それを考えたら、メジャーは目標のひとつだったと思います。たとえば武道館でやるなら、その過程では絶対にそこにいくんだろうなと。

場前:だから聞いたときよりも、発表したときのほうが嬉しかったですね。みんなが「おめでとう」って言ってくれたときに、「あ、そうなんだ」。やっとそこで喜びました。

できるバンドは成功する。
できないバンドは終わるだけ

―メジャーデビューミニアルバム『玉子の王様』は、どういうものを作ろうとか最初に決めたりはしましたか?

楠本:それは今回ないです。こういうコンセプトにしようっていうのはなくて。とにかく、それぞれの曲を持ち寄っていきましたね。

場前:1曲1曲をしっかり作って、でも後で聴いたら6曲がちゃんとまとまりました。

―楠本さん、場前さん、あとヴォーカルの一戸さんの3人が作詞作曲してますが、荒ケンは全員曲作りができるんですか?

楠本:目標は全員が作れるようになることです。それに向けて教育してる感じですね。

―教育っ!?

場前:僕はこのバンドで初めて作詞作曲に挑戦したんです。「薄いね」とか言われながら(笑)。大体デモは、みんなで移動の車のなかで聴くんですけど、最初はけっこう笑われましたね。でも、なんとか収録できるくらいにはなったのかな。

―どの曲も荒ケンが持つ、歌の良さがまず一番耳をひくなと思いました。

楠本:おじいちゃん、おばあちゃんから子どもまで歌えるメロディがいいなと思ってて。奇を衒わずに、いつまでも残るメロディっていうのは心がけて作ってます。古くならないもの、ずっと聴いていられるものを目標にしてるというか。

―もう少し解きほぐすと、今メジャーシーンには“良いメロディ”を目指すバンドはたくさんいる。そのなかで荒ケンが目指すものってどんなものですか?

楠本:うーん……他のバンドと比べないからよくわからないんですけど。もし、それができたとすれば、メジャーにいって、かつテレビも出て、武道館だったり、アリーナだったりでライブをやって、誰もが知ってるバンドになりますよね。それが判断材料だと思います。できるバンドは成功する。できないバンドは終わるだけ。

―そういうシビアな世界だと。

楠本:バンドってちょっと間違ったら自己満足になると思うんですよ。誰も求めてないっていう。だから求められるバンドはすごいと思うんです。次のシングルを聴きたいとか。荒川ケンタウロスもそういうバンドになるしかない。じゃないと、必要じゃないバンドは自然と淘汰されて、解散に陥るから。それが一番悲しいですよね。だから、別に誰かと比較するわけじゃないけど、自分たちには自分たちの1本道があるんです。それが結果として売れて、荒川ケンタウロスが全国的に名前が知れ渡れるようにしたいんです。今後そうなるはずと思ってやってますから。

―自信がある?

楠本:まあ……ありますね(笑)。

―だからこそ、いわゆるJ-ROCKシーンで人気のある、踊れるビート感、スピード感とは違う、良い歌に主軸を置いた作品になっている?

楠本:いや、そんなことは何も意識してないです。今の時代がこういのを求めてるからとか、今の流行りがこういうリズムだからとか、そういうのに全く興味がなくて。そもそもJ-ROCKだとも思ってない。僕らはポップスなんですよ。

―なるほど。お話を訊いてると、一見して感じる穏やかなバンドの風貌と違って、けっこう強いこだわりもあって。まあ…頑固だな、と。

楠本:それはよく言われます(笑)。

―それは楠本さんが出す雰囲気なのかな?それともバンド全員?

楠本:どうだろう。でも、バンドみんな、それぞれのパートに関してはそうですね。プロデューサーの高野さん、日向さんとも意見をぶつけ合いながら作ったし。僕らは基本的には曲を作った人が主導権を握る感じでアレンジを進めてます。その点では、彼(場前)だって頑固です。「いや、これはそうなんだ」って思ったら、押し通すこともありますからね。

場前:僕は、楠本さんよりは「あ、そうなんだ~」って感心したら、そっちに流れちゃうタイプなんですけど。「鳩のお嬢さん」っていう曲で、最後の歌詞がレコーディングで削られそうになったんですよ。そこだけは強く言いましたね。なくさないでください!

楠本:「やだやだ~」って、言ってたよね(笑)。

■リリース情報

2015 年2 月4 日発売

玉子の王様

COCP-38946 1800円(税抜)

【CD収録曲】
1.ハンプティダンプティ
2.まぼろし
3.冬の星座
4.鳩のお嬢さん
5.君の季節
6.コイン
全6曲収録

アルバム全曲解説はコチラ

荒川ケンタウロスに「今気に入っているCD」から「子どもの頃なりたかった職業」まであらゆることを聞いた質問20はコチラ

ツタロック詳細はコチラ

◆オフィシャルHP:http://www.arakawakentauros.com/
◆日本コロムビアHP:http://columbia.jp/arakawakentauros/

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