地方都市の風景と“死を想え”というメッセージが一つになった、amazarashiの最新アルバム【インタビュー】

amazarashi

生きることに対する葛藤や苦悩から目を逸らすことなく、どこかに存在しているはずの希望を渇望するような歌詞、そして、ポエトリーリーディングの手法を取り入れながら、一つ一つの言葉を真っ直ぐ、力強く響かせるヴォーカルによって、オーディエンスからの強烈な支持を獲得しているamazarashiが4枚目のフルアルバム『地方都市のメメント・モリ』を完成させた。

シングル「命にふさわしい」「空に歌えば」、先行配信された「フィロソフィー」を含む本作は、amazarashiの音楽が現実世界とさらに強くリンクし、切実な意味を帯び始めていることを告げる作品に仕上がっている。

まずは、2017年のamazarashiの活動を振り返っておきたい。2月にPlayStation4用ゲーム『NieR:Automata』とのコラボレーションシングル「命にふさわしい」をリリース。“命を投げ出すに値するほど、大切なものは何か?”というテーマで制作されたMVも大きな話題を集めた。さらに、3月には初のベストアルバム『メッセージボトル』を発表。2010年から2016年までの活動を総括するこのアイテムは、amazarashiのソングライター/ヴォーカリストである秋田ひろむにとっても大きな節目になったようだ。

「毎回アルバムを出すたびに“今回でひと区切り”みたいなことを言ってしまうんですが、ベストアルバムをリリースしたときは、もっと明確にひと区切りついた気がします。ライヴツアー“amazarashi Live Tour 2017「メッセージボトル」”は大変で、ミュージシャンとしての力量を試される場面が多々あったのですが、“昔だったら乗り越えられないだろうな”っていう瞬間がツアー中にいくつかあったり、古い歌も新しい感覚で歌えて。意識はしてなかったんですけど“昔とは変わったんだな”っていう自覚は芽生えました」

「(ベストアルバムが)その後の制作に影響があったかはわかりませんが、今までの延長線上ではないことをやりたいな、という気持ちはありましたね」という言葉を裏付けるように、今年の夏以降、amazarashiは新機軸と言えるようなシングル曲を続けざまに発表する。TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』OPテーマとして話題を集めた「空に歌えば」、“ダイドーブレンド”ブランドのテレビCMソング「フィロソフィー」。自分自身の切実な感情を直視し、シリアスな手触りの楽曲を数多く生み出してきたamazarashiだが、アニメ、ゲーム、CMなどのタイアップ曲を手がけることで、これまで以上のポピュラリティを獲得していった。

「タイアップの大前提として“先方の意図に沿えるか?”ということがあるんですけど、それプラス、やはりamazarashiとして歌い続けたいという意識があるので、そこが難しいなと思いながら制作してました。タイアップに関しては、何が何でもやらなければいけないというわけではなくて、がんばるだけがんばって、“OKもらえたらラッキー”くらいに思っていて。でもこれらの曲はタイアップがなければ生まれなかった曲たちなので、やって良かったなと思ってます。どの曲も今ではライヴで欠かせない曲になりました」

ベストアルバム『メッセージボトル』、その後の新たなクリエイションによって、大きなターニングポイントの時期を迎えたamazarashi。その最初の成果とも言えるのが、ニューアルバム『地方都市のメメント・モリ』だ。“メメント・モリ”とは“死を想え、死を記憶せよ(=いつか死ぬことを忘れるな)”というラテン語の警句。この言葉を“地方都市”と組み合わせた意図について、彼はこんなふうに語る。

「今回のアルバムはコンセプチュアルなものよりも、もう少しパーソナルで日記的な作品にしたいなと思っていたんですよね。いい楽曲がそろってアルバムにするとなったときに“この楽曲たちをどういう風に切り取るか”という感じでタイトルを付けたのですが、メメント・モリは今までのamazarashiにも通じるテーマだと思います。“地方都市”というのは僕が今住んでる青森のことです。それをもう少し普遍的な方向に近づけたくて“地方都市”にしました」

昨年2月に秋田が電子文芸誌『別冊文藝春秋』に寄稿した詩とエッセイのうちの一つ「青森唱歌」も、彼の生活の場である青森に根差した作品だった。青森という場所は、現在のamazarashiの表現にも深く関わっているようだ。

「東京で暮らした時期もあったのですが、その頃は故郷に対してノスタルジー的な、感傷的な捉え方をしてたと思います。でも青森に住んでもう数年経つので、今はもうちょっと現実的な部分もはっきり見えていて。そういう視点の違いは今回のアルバムに大きく影響が表れてると思います」

では、いくつかの楽曲について記していきたい。まず紹介したいのは“シャッター街の路地 郊外の鉄橋 背後霊が常に見張っている”というフレーズを含んだ「ワードプロセッサー」、そして、“僕らは焦りで満たされた 水槽で生きてるから”と歌う「水槽」。この2曲の背景にあるのは言うまでもなく、地方都市で暮らす人々の心象風景であり、それはアルバム『地方都市のメメント・モリ』のコンセプトとも強く結びついているはず。そのことをもっとも端的に示しているのが「ワードプロセッサー」にある“終わりを逆算、サバービアのメメント・モリ”というラインだ。

「(『ワードプロセッサー』『水槽』は)良い悪いではなく、現状と今の風景を切り取って、“その中にいる自分”という感覚で作りました。田舎は沢山の問題を抱えてますけど、それに関して問題提起とかじゃなく、そこで生活をしてる人から見えるモヤモヤしたものとか、美しいことも含めて表現したかったんです。“終わりを逆算”はまさに僕のメメント・モリですね。多分“音楽を一生続けよう”“青森で生活していこう”と決心した瞬間が昔あって。それはアルバム『千年幸福論』あたりだったと思うんですけど、その時に初めて“終わり”を意識し始めて、それまでに自分に何ができるのか? というメメント・モリが芽生えたんだと思います。時間は限られているので、急がなければという思いもあります」

ポストパンク的な雰囲気を持った「空洞空洞」では、人を貶め、揶揄する言葉が飛び交う現在のSNSの状態が描かれている。また「バケモノ」は“例えば僕は今消えたいのに 嘘をついてる”というフレーズによって、生きづらさを抱えながら生きる人たちを映し出す。現実世界で起きていることを寓話的に表現することで、楽曲に普遍性を与えるamazarashiのスタイルはさらに向上しているようだ。

「『空洞空洞』は愚痴みたいな感じで、意味がありそうでないよっていう曲です。僕はSNSはROM専(見るだけで投稿しない)なので、わりと傍観者だと思いますね。発言しなければ、投稿しなければ何もないのと同じなので、そこにあえて存在する必要はないかなと。SNSはこの先、より平均化されてくだろうなと思いますね。『バケモノ』は“少なからず、みんな嘘をついてるよ”っていう曲なんですが、自分の嘘にそんなに罪悪感を抱えなくてもいいんじゃないかと思ってます。“理想、現実そのずれを 埋めるための仮初めの夢想なら 弱い僕らに嘘は必然か”という歌詞がいちばん言いたかったところですね」

アルバムの最後に収録されている「ぼくら対せかい」も、本作を象徴する楽曲の一つだろう。特に“世界は変わると信じてた 僕らが変えると信じてた”という歌詞からは、現在のamazarashiの切実な世界観が伝わってくるようだ。

「僕が歌う世界っていうのは観念みたいなもので、その時々によって意味合いが変わります。この曲では世界の移り変わりを歌っているんです。青春時代の反抗期みたいな社会に対する怒りから、生活者が感じる、より生活に直結した社会に対する憤りへの変化。どちらにしても“いまだに僕ら世界と戦ってるよね?”という曲ですね」

リアルな生活と風景に哲学的とも言える思考を加えたamazarashiの音楽。その世界を増幅するようなサウンドメイクにもぜひ耳を傾けてほしい。そう、エモコア、ギターロック、フォークなどを自在に組み合わせたプロダクションもまた、このアルバムの魅力なのだ。

「最近、新しい音楽はあまりピンと来てないんですよ。それよりも僕が好きだった時代のエモコア、パワーポップ、UKロックの影響が今回のアルバムには大きいと思います。今さらって感じなんですけど、好きだからいいかっていう心境ですね」

来年4月からは全国ツアー“amazarashi Live Tour 2018「地方都市のメメント・モリ」”がスタート。「まだまだ先なので。とりあえずは目の前にあるものを全力でやってくしかありません」という秋田にとって、ライヴとはどんな場所なのだろうか?

「戦いの場っていう感じもするんですけど、何と戦ってるんだろう? という気もします。ライヴはamazarashiにとっての最前線で、そこを切り開かなければ先に進めない、という感じもありますね。そこで掴んだ実感や感情を次の音楽に還元する、というサイクルができあがった気がします」

目の前の現実と向き合い、そこで生まれた感情をもとにしながら、時代や流行を超えた音楽へと結びつけるamazarashi。その表現は本作『地方都市のメメント・モリ』によって、新たな地平へと辿り着いた。このアルバムのなかにある情景と心情をじっくりと堪能してほしいと思う。そこであなたは“世界と自分との関わり”をより強く体感することになるはずだ。(取材・文:森朋之)

amazarashi リリース情報

地方都市のメメント・モリ

NEW ALBUM
2017年12月13日発売
2017年12月30日レンタル開始

初回生産限定盤A(CD+DVD+365日詩集ダイアリー):AICL-3462~4 4,500円(税抜)※特殊仕様スペシャルパッケージ
初回生産限定盤B(2CD+DVD):AICL-3465~7 3,900円(税抜)
通常盤(CD):AICL-3468 3,000円(税抜)
TSUTAYA 予約/購入特典
先着特典
クリアしおりB
※こちらの特典は、一部お取り扱いのない店舗もございます。

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