愛しい人への色々な想いが詰まった連作短編集『グッド・バイ・プロミネンス』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│8つの短編で描かれる色々な関係性にあなたは何を思いますか?

白昼の職員室。多くの人が見ている前で担任に告白する女子高生から始まるオムニバス短編集『グッド・バイ・プロミネンス』

愛しい人への想いについて描かれた8つの短編の登場人物たちは、それぞれの他の物語の登場人物ともちょっと繋がっているという連作短編の様な1冊です。

第1話でとある女子高生・喜多さんは職員室で担任の笈川先生に告白をした後、事あるごとに「好き」という想いを先生にぶつけていきます。
この行動の裏にある想いは何なのか?
その女子高生の友達である坂井さんを主人公として描かれる物語は、坂井さんの複雑な感情と喜多さんの見え隠れする彼女の抱えた悲しい何かかが重なり、非常に心を打たれる物語となっています。
しかし1話はあくまで学校での喜多さんと坂井さんの物語です。

そんな喜多さんの抱えていた家族の物語は別の短編で語られます。
喜多さんの早くに亡くなった父親の弟であるイツジくん、そして彼女の母親との物語は個人的にはこの一冊で一番印象に残るものでした。
頑なに喜多さんの母親への気持ちを言葉にしないイツジくん。おじさんではなくイツジくんと友達として接する母親。
喜多さんが知る事の無い過去にあった出来事はとても切ないもので…。

人が人を想う形には色々なものがあります。
『グッド・バイ・プロミネンス』にはそんな色々が詰まっているので、感情移入する物語も人物も読む人によって全く変わるのではないでしょうか?

出会いと別れの季節である春にぜひ読んでいただきたい1冊です。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

グッド・バイ・プロミネンス

発売中

著者:ひの宙子
出版社:祥伝社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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