疲れた大人にこそ読んで欲しい。「初めてじゃない」恋の話。『目黒さんは初めてじゃない』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│これまであった現実は無くならない。それでも、好きだという想い

嫉妬の気持ちからの行動ほど残酷なものは無いと思う。

好きという気持ちの裏返りであるにも関わらず相手も自分も傷つけてしまう。
そしてそれは好きになった人の過去に対しても働きかけ最悪の結果をもたらしたりする。

そんな気持ちになった時に優しく寄り添いその行動に対して少しだけ向ける方向を変えてくれるような漫画がある。

『目黒さんは初めてじゃない』

初めてじゃない女の子、目黒さんと初めてだらけの男子古賀の恋の話である本作。
目黒さん、彼女はこの人じゃなきゃダメという気持ちがわからない。告白されれば付き合いすぐ別れてしまうそんな事を繰り返していた。
周りからは酷く言われるがそれに間違いはないので反論する言葉もない毎日。

そんな目黒さんの日々は古賀の告白で少しだけ、でも確かな変化がもたらされる。

経験が多い彼女に対して今までの彼氏たちが思ってきたことは想像できる。決してそれは相手を傷つけようとした事では無くても昔の彼氏への嫉妬の想い。
それをきっかけにきっと傷つき、傷つけ離れていった。目黒さんは自分から彼氏から離れた事はないのだから。

そんな彼女に悩みながらも古賀が抱いた想いは、彼女は誰よりも人を傷つけるのを怖がっててその分たくさん自分が傷ついてきた人、だからこそ自分が守りたいと言う気持ち。

これまであった現実は無くならないし、それを含めてお前が好きだなんて少女マンガのヒーローみたいな言葉じゃないが、この寄り添う気持ちはきっと恋人に言われて一番嬉しい言葉のひとつなんじゃないかと思った。

この漫画は消して若い人に向けたものじゃないと私は思う。
経験が増え、感情が揺れにくくなった自分を目黒さんに重ねて古賀の行動や想いに心を癒される大人は多いのではないだろうか?

決して派手な展開は無いしわかりやすい感情の誘導もない。フラットで小さな細波が感じられるような優しい漫画だからそこ伝えられる大切なものがある。

少し気持ちが疲れたななんて時にぜひ読んで欲しい。
この作品はそんな漫画だ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

目黒さんは初めてじゃない

5巻まで発売中

著者:9℃
出版社:講談社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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