打算的に恋愛をシミュレーションすることは可能なのか?『ラブスコア』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│現実とシミュレーションの真ん中で曖昧な「恋愛」という気持ちを描いた物語。

シミュレーション仮説という話を聞いたことはあるだろうか? これは簡単に言うと私達が生きるこの世界がシミュレーションの中のものであるという仮説だ。
調べて行くと色々興味深い仮説でこの仮説を元に描かれた作品も多く存在する。

今回はそんなシミュレーションの世界の中で何度も恋を繰り返す作品について紹介したい。

恋を繰り返すと聞くとループ物の定番として存在している心を揺さぶる「何度世界が変わろうとたった1人を愛し続ける」作品を思い浮かべた方も少なくないだろう。
例えば高木ユーナ先生の『不死身ラヴァーズ』は何度もたった1人の女性を愛し続ける話だ。
そしてその想いが届き両想いになると彼女はリセットされ記憶をなくし別の彼女としてまたゼロから出会い片想いから恋をまた繰り返す。
『不死身ラヴァーズ』も非常に面白い作品なので読んでいない方がいれば読んで欲しいのだが、今回紹介したい作品は何度も恋を繰り返す所は同じなのだがその相手は全て別の女性であり、「それはあくまでシミュレーション」でしかないのだ。

│「お試しに付き合ってみる」を繰り返す疑似恋愛体験のシミュレーションは現実の気持ちと切り離せるものなのか?

『ラブスコア』は、試しに付き合ってみるという事をシミュレーション出来るアプリを使い誰かとの恋愛体験をシミュレーションし自分に合った人を探す物語だ。
語り部である男性が気になった周りの女性とシミュレーションの恋愛を繰り返す。
付き合って行く中で幸せな時や、そうではない瞬間、付き合った相手にしか見せない可愛い瞬間や、浮気ぐせや逆に束縛のキツさなどを実際付き合う前に仮想空間で恋愛シミュレーションを現実のように体験できる。
そして、シミュレーションが終わると最後には数値で相性が示される。

そこにあるのは打算的で少し味気ない、それこそ強い恋の想いとは真逆にあるものの様に感じるのだが、人の気持ちはそう簡単ではないだろう。
シミュレーションと現実を行き来する人の感情というのは多分曖昧でそこをしっかりと切り離せるものではない。

シミュレーションであんなに自分を好きだと言っていて可愛く甘えてきた、彼女に現実には別に彼氏がいた。そんな瞬間で一巻は終わっている。

この作品がこれからどの様な恋の形を描いて行くのか非常に楽しみだ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

ラブスコア

1巻発売中

著者:LEN[A-7]
出版社:講談社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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