一瞬の気の緩みも許さない絶望から始まるダークファンタジー『レ・セルバン』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│どこまでも容赦なくリアルに描かれていく絶望の連続と綺麗ごとのない登場人物たちの生き様

『はねバト!』は凄い作品でした。
少しずつ終盤に近付くほど濃厚になり緊迫していく物語に目が離せなくなった読者は多いと思います。
『パジャマな彼女。』そしてこの『はねバト!』と全く違う魅力をもつ良作を立て続けに描かれた濱田浩輔先生の新作がついに発売されました。

タイトルは『レ・セルバン』
国を喪った王「セルバン王」と、とある理由でその父である「セルバン王」の記憶だけを喪った娘「アルシノエ」。
ふたりの親子が生きて故郷を取り戻すための旅を描いたダークファンタジーです。

ファンタジー作品はいつからか緩めのストーリーやキラキラした身も心も綺麗なヒロイン、そして何より優しくて何事も上手くいく主人公など、異世界転生物に代表される幸せな世界のイメージがつくようになりました。

しかし異世界転生物などが流行る前のファンタジー作品と言えば、異様な生物が多く存在し、人間同士も争う一瞬の気の緩みも得ることが出来ないような世界だったのです。

ただ普通の人間よりも優れているだけでは自分の国、家族すら守れない。
何かを得るためには命よりも大切なものも失わなければならない。
ヒロインだって身も心も綺麗に生きるなんて事は出来ず、全てを投げ出し尚且つ狡猾に立ち回り、初めて少しの自由を得ることが出来る。

この作品ではそんなあまりに容赦なくリアルに描かれていく絶望の連続と綺麗ごとのない登場人物たちの生き様が描かれていくのです。
1巻、2巻が同時発売されましたが、連載時より100ページを超える大幅加筆修正が加えられており、連載でも凄かったのにそれを超えるとんでもないものになっていました。

読んだ瞬間、月並みですが「凄い作品に出会ってしまった」と鳥肌が立つほど…。

ぜひ気になった方は一度お手に取ってみる事をお勧めします。
ちなみにかなり描き込みも凄く、紙で読んだ時の迫力が凄まじいので個人的には紙のコミック絶対推奨な作品です。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

レ・セルバン

2巻まで発売中

著者:濱田浩輔
出版社:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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