小さな傷から始まる、絡み合う痛みの恋物語『恋傷』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】 Tweet │心が痛むほど感情を揺らされる、きっと誰もが経験したことのある恋の傷 読むと痛みを伴う漫画というものがある。 なぜかそんな作品はずっと記憶に残る作品になったりする。今回紹介する作品は天堂きりん先生の『恋傷』。この作品はそんな痛みが強い大人の「恋」の作品だ。 天堂きりんさんの描く美人の女性はとてもかわいく、清純感あふれる柔らかな笑顔を振りまくタイプが多い。恋傷は連作短編なのだが、その1話目のヒロインもそんな可愛い女性だ。優しい旦那ととても幸せそうな結婚3年目。しかし誰にでも優しい彼になんだかモヤモヤする気持ちを彼女は抱えていた。彼の優しさから取る行動。その行動に疑問を持ち不安になり、どうしようもなくなる。そしてその気持ちは過ちへと向かっていく。第三者から見たら彼女の行動そのものが許せないと映るだろう。しかし、きっと世の中の大半の恋の終わりはそんな小さな綻びから始まっていく。 そしてそんな綻びが絡み合い物語は紡がれていくかのように、この『恋傷』は各短編の主人公同士が接点を持ち、1冊通してその時間・その場所でかかわりあった人達の人生の一瞬が見えるようになっている。 この1冊を読み終えたとき、少しでも重なる想いがある気とは心に何か刺さり痛みを感じるだろう。しかしこの作品のラストは傷を負いながらもまっすぐに進める人の強さを教えてくれる。 私はこの作品の登場人物に関して誰一人好きにはなれなかった。しかしそれでもこの作品にはとても愛しさを感じるのだ。 あなたにこの作品がどんな傷を残すか、ぜひ読んでみて欲しい。 (文:仕掛け番長) │仕掛け番長のおすすめ本 恋傷 発売中 著者:天堂きりん出版社:集英社 商品検索 商品検索 作品詳細 【コンシェルジュ】仕掛け番長 栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』 Twitter(@maron_rikiya)