子供の頃誰もが犯した「罪」に対する報い『クモノイト~蟲の怨返し』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│最近多い驚きで一瞬の怖さを与えてくる作品とは一線を画す、ぬめっとしたなんだかゾクゾクするような怖さのホラー漫画

この作品を初めて読んだときに感じたぬめっとした怖さと悪寒。
最近の「怖い」「恐怖」という言葉で表現されているものは「驚き」に近い感覚の怖さだと私は思っている。
これはTV番組でもそうだが、驚かされること=恐怖的な感覚によるものだろう。
しかしそれとは違う、もっとぞわぞわとするような、ゆっくりとした、しかしそれでいて恐ろしさという嫌な感覚を感じさせる怖さがある。

昔のホラー漫画にはそんな怖さのある作品が多かったのだが、この『クモノイト ~蟲の怨返し~』は珍しく最近の新作でそんな感覚を味わえる作品だと感じた。

主人公は19歳の浪人生。親からの仕送りで一人暮らしをしている。
そんな彼のところに突然美少女が訪ねてくる。天使のように優しい彼女、小学生の頃の知り合いという話をどこか疑いながらも彼女の魅力に惹かれていく主人公。
しかし、彼女の正体は彼が昔××したとある生き物だった。
次々に怨返しをしにくる虫たち。終わりなく続くその連続に読んでいてどんどん怖さが増していく。
著者の荒巻美由希先生の絵柄はどちらかというと可愛らしい。各話の女の子もそうなのだが、ムカデが小学生の使う小さなハサミをこれまた小さなムカデの両腕で持ちチョキチョキしている姿はなんだか愛らしさすら感じる。
しかし、逆にそれゆえにこのおどおどしい内容が、何故か際立ち虫たちの淡々としながらも深みを感じさせる恨みの気味の悪さを強めているように思う。

1巻目では怨返しがなぜ行われているのか、そして主人公に対しても何か秘密がありそうな描写が描かれている。

これからの展開に非常に期待したい今読んで欲しい最新のホラー漫画だ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

クモノイト~蟲の怨返し~

1巻発売中

著者:荒巻美由希
出版社:双葉社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

一覧に戻る