現実的で夢のような物語『夏へのトンネル、さよならの出口 群青』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│現実的で夢のような物語

田舎の高校に都会から女の子が転校してくる。
そんな昔の青春ものでよくあったような物語の始まりをみせる『夏へのトンネル、さよならの出口 群青』。
目立つ転校生「花城」はクラスの女子カーストのトップ「川崎」から嫌がらせを受けるが、それに対して全く信念を曲げずまさかの相手を殴るという行動に出て、それを跳ね返す。
彼女のその行動に対して彼女を意識し始める主人公「塔野」。ここまでは普通のいわゆるラブコメ的な展開だ。
しかしこの作品の真ん中にあるのは、そんなセンセーショナルな登場をした彼女ではない。

ウラシマトンネルという噂話がある。
そのトンネルに入れば欲しいものがなんでも手に入る。しかしその代わり年を取ってしまうというのだ。おじいさんやおばあさんになってしまうくらい。
若さと物欲どちらをとる? というような噂話。

このウラシマトンネルを主人公の少年が見つけてしまう。
中に入ってみるとそこには確かに彼が求めている事の「ひとかけら」があった。
噂話を思い出し怖くなりトンネルから走って飛び出す塔野。ふと携帯を見て見ると、そこに記されていた日にちは自分の認識している日にちから「1週間後」の日にちだった…。

彼の過去の大きな後悔とそこにあるはずだった何よりも大切なものへの想いが、このトンネルという存在と交差し物語は大きく動き出す。
クラスに特別な存在として東京から転校してきた「花城」。
そんな花城との出会いから影響を受け変わっていく「川崎」。

誰もが子供から大人になるきっかけが人生のどこかに存在する。
「大人になったよ」なんて誰も教えてくれない。
この物語はそんな瞬間をファンタジーという舞台でリアルに書いている。だからこそ読んでいてなんだか懐かしさを感じてしまうのかもしれない。

この作品はライトノベルが原作となっている。
ラノベでも話題になった作品なので読んだのだが非常に面白い。そしてこの漫画版はその作画の素晴らしさも加わりよりさらに感情を揺さぶる要素が高まっているように感じる。

ぜひ一度読んでいただきたい。そんな作品だ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

夏へのトンネル、さよならの出口 群青

2巻まで発売中

著者:小うどん、八目迷
出版社:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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