「正義ならば何をしてもいいのか?」現代に一石を投じる衝撃の作品『戦隊大失格』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│『五等分の花嫁』のイメージのまま読むことはオススメしない。
これは全く前作とは異なる読み味を秘めた戦隊漫画なのだから

『五等分の花嫁』はラブコメというジャンルにおいて絶対の地位を築いてしまうほどの特大ヒットを記録した。
1,500万部突破(2021年4月現在)というとんでもない数字もそれを表している。

私は少し前までそんな凄い作品を打ち立てた春場ねぎ先生が次に描く漫画は、同じラブコメジャンルなんだろうと勝手に思い込んでいた。『五等分の花嫁』はヒロイン達の可愛さやその想いの一つ一つを丁寧に描き多くの読者の心を掴んだ。
こんなにも読者の心を掴む春場ねぎ先生は、きっとラブコメを描く事を得意としているのだろうと。

しかしその考えは全く見当違いでしかなかった。

結論から言えば、『戦隊大失格』は全くラブコメでもない。
そしてそのタイトルから連想するような戦隊がバッタバッタと悪を打つ「勧善懲悪」のようなわかりやすい王道作品でもなく、『戦隊大失格』は今の世の中に一石を投ずるような思いもよらない戦隊モノ漫画だったのだ。

簡単にストーリーをなぞると、人類の守護者と言われている竜神戦隊ドラゴンキーパーと世界征服を企む悪の軍団・怪人。
彼らは互いの存亡を懸け、死闘を繰り広げ続けている。
という「建前」を毎週繰り返しているヒーローと悪の軍団の下っ端たち。

実は侵略しにきた怪人たちはわずか1年でボロボロに負けてしまい、すでに幹部も誰一人残っておらず、毎週毎週繰り返しやらせの茶番劇の戦いを強いられていた。
民衆も怪人がやられるその様を楽しみまるでショーのような状況となってしまっていた。
そんな中でその状況を覆すべくドラゴンキーパーの組織に入り込もうとする一人の悪の軍団の下っ端がいた…。というものだ。
1巻に描かれているのはその下っ端の奮闘だ。

きっとこの作品は賛否あるだろうと思う。前作とあまりに違うジャンル、テーマ、読み味。
場面場面の見せ方も大きく変えているように思う。

特に前作、『五等分の花嫁』のイメージを強く持っている読者ほど、そのギャップに戸惑うのではないだろうか。雑誌の方の連載開始時も『五等分の花嫁』とリンクしたキャンペーンを打っていたのもあり、どこか似た作品をイメージしていた読者は私だけではないはずだ。

しかし私はこの1巻を読み、やっぱりこの春場ねぎ先生の漫画が好きだと素直に思った。

全て描かれている事だけが物語を作っているわけではなく、ここにまだ描かれていない今までの登場人物に達の過去の行動など一人一人の物語、それがしっかり積み重なり『戦隊大失格』というこの作品を作り出している事がわかる。そこに私はどうしようもなく惹かれてしまうのだ。

ここからどのようなストーリーが続いていくのか、1巻のラストの段階ではそれが全く読み取れない展開となっている。

色々と今後の展開を予想しつつ、この新しい作品の続きを楽しみに待っていたいと思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

戦隊大失格

1巻発売中

著者:春場ねぎ
出版社:講談社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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