バトル漫画のようなテンションと熱量で読ませる落語漫画!?『あかね噺』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│落語の独特な声のトーンや興味をひく間の取り方まで説明文章なんて一切なく表現だけで読者に理解させてしまうすさまじい漫画力!! これが次にくるジャンプ作品だ!!

私は浅草で生まれ身近に落語を楽しめる環境があったにも関わらず、今まで興味を持ったことすらなかった。そんな私ですら『あかね噺』を読んだ次の日には猛烈に落語を知りたいと思わされてしまっていた。

『あかね噺』の1話目は主人公である朱音の父親の話が描かれる。
落語の厳しい世界の事、父親として、夫としての葛藤そして魅せる最高の舞台と盛り上がり。そして最後に訪れるまさかの結末。
思わず息をのむような全ての始まり。
そして2話目からは本編となる朱音の物語が語られていく。

『あかね噺』オススメポイントは、第一にこの第1話の存在だ。
この作品はミステリー作品ではない。しかしこの1話目には作品を通して読者がなぜ? と追いかける事や細かな伏線が詰まっており、まるでミステリー作品の様に好奇心を掻き立てこの話を読み続けたいと思わせられる。
そして何よりたった1話で主人公「朱音」の存在を読者の心に刻みつけてくる。
1話目で小学生だった彼女から2話目以降の成長した彼女の姿をリアルに想像できるようなブレのない人物描写。コミックスで続けて読むとわかるが、この1話がきっかけとなりとんでもないレベルで読者を物語に没入させてしまう。

そしてオススメポイント2つ目はコマ割り、キャラクターの表情などの演出による落語の描写。
『あかね噺』の落語のシーンはまるで王道バトル漫画のようなスピード感と熱さを読む者に感じさせ心に響くものになっているだけでなく、落語を本当に聞いていないとわからないような声のトーンや興味をひく間の取り方まで説明文章なんて一切なく漫画表現だけで伝えてくるのだ。
落語の面白さを漫画で知らされてしまうというなんとも不思議な感覚に私は襲われた。
これは実際読んでぜひ感じて欲しい所だろう。

│誰にでも「読んで!」と言いたくなる最高にオススメしたくなる作品!

『あかね噺』は落語という題材から敬遠してまだ読んでいないという読者も多いように感じている。しかしこの漫画は落語を全く知らない人にこそオススメしたい作品だ。
事前知識など読むための準備は何もいらない。
そこにこの漫画があればそれだけで最高のエンターティメントが楽しめる。そんな誰にでも「読んで!」と言いたくなる『あかね噺』

次にくるマンガ大賞2022コミック部門第3位にも選ばれたこの作品!
ぜひまだ読んでいないという方はまずは1話目だけでも読んでもらえたらと思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

あかね噺

3巻 10月4日発売、2巻 9月7日レンタル開始

著者:馬上鷹将、末永裕樹
出版社:集英社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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