異世界転生先の元々の体の持ち主の精神はどうなるのか?『世界の愛し方を教えて』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】 Tweet │想像以上に深く考えさせられる恋の物語。 異世界転生物では現代を生きる主人公がどこか別の世界の誰かになるものが多い。ではその元々の誰かの心はどこに行ってしまうのか?消えてしまうとすればそれは死ぬ事と同じなのではないだろうか? 『世界の愛し方を教えて』は私たちの世界と何も変わらない世界の物語だ。一つ違うのは異世界病という突然知らない誰かに心だけ入れ替わってしまう奇病が流行っている事。昨日まで一緒にいた誰かが突然自分の全く知らない誰かになってしまう。家族や友達や愛する人も。 そして変わってしまったその人はもう二度とその人に戻ることはない。同じ姿で、同じ顔で目の前で生き生きと話している彼や彼女はもうよく知るその人ではないのだ。それはまさしく突然訪れる死となにも変わらない。 この作品の主人公の大好きだった彼女も今は全く違う異世界人として生活をしている。そんな彼女の事を青年はもちろん好ましくは思っていない。 │叙述トリックや仕掛けはないだがこの「解答」には思わず衝撃を受けずにはいられない この物語は基本的に主人公の一人称で書かれている。しかしこれにトリック的な要素は何もない。人を好きになる気持ち自体が最大の謎であり最大のミステリー要素と私は思っているが、そういう意味でこの作品が最後に導き出す答えは非常に切なく、そしてリアルなことだと私は感じた。 主人公が行きついた答え。そしてヒロインがこれから行きつくであろう答え。 ラストには思わず息苦しい思いをする方も多いだろう。しかしそれこそが人間の強さだと思わずにはいられない。 この世界の愛し方をあなたはどう感じるのか。ぜひ一度読んでみて自分なりの答えを見つけて欲しい。 (文:仕掛け番長) │仕掛け番長のおすすめ本 世界の愛し方を教えて 発売中 著者:ヰ坂暁出版社:講談社 商品検索 商品検索 作品詳細 【コンシェルジュ】仕掛け番長 栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』 Twitter(@maron_rikiya)