第3回TSUTAYAえほん大賞授賞式、2年ぶりの登場となった横澤夏子さん。大賞の『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』(ヨシタケシンスケ先生)に「共感力がすごい」と絶賛

(左から)タケトさん、ヨシタケシンスケ先生、阿部結先生、横澤夏子さん、CCC キッズプロジェクト担当・村辻さん

10月26日、代官山 蔦屋書店にて第3回目となる『TSUTAYAえほん大賞』授賞式が開催され、現在2児の母となったお笑い芸人の横澤夏子さんが第1回に続いてゲスト登壇した。

TSUTAYAえほん大賞は、全国のTSUTAYA・蔦屋書店の児童書に関わる担当者が、「自分の子どもに読み継ぎたい・語り継いでいきたい50年後も読まれている作品をTSUTAYAで育てていきたい」という願いを込めて、直近1年間に出版された絵本の中から作品を選出する絵本賞。なお、TSUTAYA・蔦屋書店の店頭では、10月27日からをTSUTAYAえほん大賞フェアを開催する。

※1~10位受賞作は、刊行直近1年間(2021年8月1日〜2022年7月31日刊行)、新人賞作品は新刊刊行直近2年間(2020年8月1日~2022年7月31日刊行)の作品の中から選定されている。

│絵本を通じて共感できるってすごい幸せなこと

2年ぶりの登場となった横澤さんは「なんて素敵なお仕事なんだろう」と久々のえほん大賞にテンションも高めで「今日は本当に嬉しいです」と喜びを語った。そしてこの2年で年子の母になったことにも「大賑わいっていうか、お祭り騒ぎです」と子育ての近況を明かしつつ、「ちゃんとえほんも読んでます。1歳と2歳半となると、読みたい本が違うんですよね。だから私の前に行列ができている状態。好きな本も歳によって変わってくるんだなと。でも、お姉ちゃんも妹も共通して好きな絵本が今日発表される中に何冊かあるんです」と話し、村辻さんも「すごい楽しみですね」と頷いていた。

そして司会のタケトさんから「えほん大賞3回目を迎えました。振り返ってどういう絵本が心に残る絵本だと思いますか?」との質問に村辻さんは「2020年ごろからお家時間が増えて、一緒に過ごす時間が増えましたよね。何度も楽しめるのが絵本。それでコミュニケーションの手段として浸透してきていると感じています」とコメント。
「絵本の流行りも変わってきていますか?」との質問にも「大人が触れる機会も増えたので、絵本に出てくる登場人物に起きていることというのが、大人の身の回りでも起きていることが多いと思います。そこで改めて再発見の気持ちを発見させてくれる本が増えてきている気がしますね」と続けた。

これに横澤さんも「ほんとに増えてますよね。大人が見て『こういう感情懐かしい』ってわかっていったはずだけど言葉にできなかった感情が絵本によって具現化されているんですよね」と話し、タケトさんも「絵本から再確認と言うか、学び直すことが大人でも全然ありますよね」と反応していた。

│名作揃い! すごい。全部喋りたい!!

そしてまずは4位までの結果発表を受け、「名作揃い!すごい。全部喋りたい!!」と興奮気味の横澤さん。各作品のやりとり、コメント抜粋は以下の通り。

10位:ゆかしたのワニ

横澤:歯磨きが嫌いな子が歯磨きをする立場になるんですよね。歯磨きって冒険なんだってことになリ、させてくれるようになったんですよ。「あなたはワニなのよ」って口を開けさせて私が探検者として。これはまた新しい感覚だなと思って。斬新でした。
タケト:ワニのように口を開いてくれる、ママさんのお供ですね。

9位:あなたがうまれたとき

横澤:1ページ目からずっと泣いてますね(笑)。愛が本当に詰まっている一冊。涙なしには読めない。どうです?泣かないで読める方いらっしゃるんですか?チャレンジャー求むって感じで(笑)。
村辻:いま真っ最中のお母さんにも、これからの方にも経験済みの方にも読んでいただきたいですね。私は自分も母親にこう思われていたんだなと思って涙が出ますね。
タケト:パパ目線でいうと、より奥さんを尊敬できますよね。ありがとうと思えます。

8位:ドーナツペンタくん

横澤:まさかのヒーローだったんだ、って。ページをめくるごとに賑やかになっていくこの感じがまた良いですよね。
タケト:普通は結末を言うとあれなんですけど(笑)、えほんは逆に結末知って読んでもらいたいんですよね。なんでこれめちゃくちゃいい予告してくれましたね(笑)。

7位:ねこいる! 

横澤:これ、横澤家のヒット作でしたね。子供は2人とも笑っていますし、夫に読んでるもらっているのを聞いていても笑えるんですよね。ただ猫がいるだけなんですけど…。
タケト:うちも異常に子供が爆笑していましたね。実はこの先生と縁があるんですよね。
横澤:芸人さんで、オンエアバトルで共演したことがあって、2人とも確かオフエアだったんですけど(笑)。こういう才能が。
タケト:芸人さんだからフリがうまいですよ。ページめくったらオチっていう。

6位:ひよこはにげます

横澤:五味太郎さんのテイストが懐かしいなって思いながら。そう思えるのがすごい幸せで。子供もいつかそういう時が来るのかもしれないって思うと、語り継いでいきたいなって思いますよね。カラフルでやさしくて。
タケト:この絵に共感しない人いないですよね。

5位:戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦

横澤:絵本を通じて知らなかったことを知って。戦争中に…びっくりでしたけどすごく心温まる話で泣けましたね。子供時代に読み聞かせでわかってもらってたら色んな感情を知ってもらえるんで。タイトルの意味もわかって。

4位:さかなくん

横澤:これはなんですか一体? 新しい…。弱点だったり凹んだ姿も見せてくれるから「こういうときもあるよね」っていう部分がすごく詰まっていますよね。さかなくんを愛せますよね。
村辻:抱きしめたくなりますね。
タケト:うまくいかないところもその子の個性だよね、というところね。泣けますね。

 

4位までを熱く語り尽くしたところで「ちょっと水飲みます(笑)」という横澤さんにタケトさんは「喉潤してください。ここまでね、一個ずつ話す予定じゃなかったんですよ(笑)。でもこのくらい話していきましょう」と話し、続いて2位までの発表。 

3位:パンどろぼうとなぞのフランスパン

横澤:今回も面白かった。てっきりこっち(うさぎ)かなと思ったんですが…違いましたね。これもオチを言っちゃうけど、パンおじさんが上手くならないのよ…。
村辻:全然上達しませんよね(笑)。
タケト:この先、先程登場したドーナツペンタくんとのコラボとかないのかな…とか。僕らが勝手に言ってるだけなんですけどね(笑)。
横澤:あると思いますよ、きっと。

2位:大ピンチずかん

横澤:こんな面白い本あります?大人が見ても。格好悪いあるあるがいっぱい詰まっていて。私が一番好きなのはお風呂でのピンチです。
タケト:ピンチの度合いも面白いですよね。
横澤:ピンチが起きても恥ずかしくないよ、って勇気を持てるというか凹まないでいられそう。めくればめくるほど楽しかったですね。

│新人賞『なみのいちにち』―海の包容力だったり優しさ、それを感じられる1冊でした

そして大賞の前に発表となった新人賞には、阿部結先生の『なみのいちにち』が選ばれた。
阿部先生は「なみのいちにち」は私が生まれ育った宮城県気仙沼市の海を思いながら作った絵本です。その絵本が語り継いでいきたい本として選ばれたことを大変嬉しく思います。これからたくさん絵本を作っていきたいと思っているので見ていただけたら嬉しいです」と受賞の喜びを語りました。

この本の感想を聞かれた横澤さんは「波の音ってだいたい『ざぶーん』しか聞いたことなかった。『さん ささーん』って。聞いたことある!って一気に穏やかな波の風景が出てくるんですよね』と話し、この『さん ささーん』が生まれた経緯は「思い浮かべていたら文字になって出てきました」と明かしてくれた阿部先生。横澤さんは改めて「私も新潟の海の街で育ったので海の包容力だったり優しさ、それを感じられる1冊でした」とこの本の魅力を語った。

村辻さんも「波が絵本の主人公になっているのは触れたことがなかった。ずっといる波が人の営みを見守って寄り添ってきてくれていたのかと思うと愛おしくなって、急に海を見る目が変わりましたね。本当に素晴らしい作品です」と作品についてコメントした。

│大賞『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』―だから共感力がすごいんですね。面白い!

見事第3回のえほん大賞(ランキング1位)に選ばれたのは、ヨシタケシンスケ先生の『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』。

ヨシタケシンスケ先生は「いいことも悪いことも自分の受け取る順番なんだなと。世の中の有り様みたいなものをそのままの形で本にできないかなと常々思っていまして、それが今回本にできたことは自分の中で嬉しかったですね。本の構造的なものを利用していろんな読み方ができる本が作れたらいいなと思っていたので、今回作っていてとても楽しかったです。絵本として考えるとなかなかちょっと変な内容ではあるんですけど、そういうものが絵本の中に入っていける、しかも評価もしていただけるということで絵本のジャンルの懐の深さ、奥深さを感じることができました。自分もその場所に行っていいと行っていだだけていることがすごく嬉しくて、これからも絵本の世界でなにかやっていけたらいいなと思いました。この先も変なテーマを変な形で本にして、見てくださった人に素敵な苦笑いを提供できるような本が作れたらなと思います。今回書店員の皆様に投票していただけたことはすごく勇気づけられました。ありがとうございました」とこちらも受賞の喜びを語りました。

この本について横澤さんは「こんな…一枚めくるごとに面白い気持ちになって、また、ぐっと泣けるときもあって。この繰り返しすごいなって。でも分からない気持ちが一切ない。いろんな世代、どんな人でも当てはまるページがあって、すごい背中を押されたというか、すごい幸せ、また頑張ろうという気持ちになりました」と感想を述べ、タケトさんからは「ポジティブ始まりでネガティブ終わりで文脈が来るじゃないですか。普通逆じゃないですか?」と本作の構造についての質問も飛び出した。

これにヨシタケシンスケ先生は「それは僕が普段そういう順番で物事を考えちゃうからなんですよね。だれよりもネガティブで困ってるんですよ(笑)。1位もらって今日の帰り何が起こるんだろうって(笑)」と答え、さらに「ネガティブなものはポジティブ・ネガティブどっちも救えるんですよね。そういう経験があるから」と話すと「だから共感力がすごいんですね。面白い!」と横澤さんは深く感心している様子。

村辻さんは「これ私?、そうそうという共感があって。そこをつまんで風穴を開けてくれるような作品。老若男女普遍のテーマを扱っているので、まさにな作品だと思います」と作品の魅力を語ってくれた。

そしてイベントの最後に最後に横澤さんは「今回も素敵な作品にたくさんで合わせてくれてありがとうございましたっていう感謝の気持でいっぱい。親子で楽しめるっていう時間が増えると思うのでこれからも読んでいきたいと思います」と今日のイベントを振り返り、村辻さんも「TSUTAYAの店頭では作品を囲んで今のようなお話をお客様にしていただきたいですし『こういう本があったね』とTSUTAYAを出ても絵本を通じて語り合うシーンを提供していきたいと思っています」とコメントしてイベントを締めくくった。

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