『宇宙兄弟』最新41巻発売記念! 小山宙哉先生インタビュー【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】
©小山宙哉/講談社
累計2,800万部突破の大人気漫画『宇宙兄弟』。5月23日(月)には最新41巻が発売されます。今回はそんな『宇宙兄弟』についてまだまだ多くの方に手に取ってもらいたいという思いから著者である小山宙哉先生にインタビューをさせていただきました!
春というこの季節、『宇宙兄弟』は頑張りたいあなたの背中を押してくれるような熱い作品です。小山先生へのインタビューでその魅力の一端をぜひ感じていただけたらと思います。
【プロフィール】小山宙哉
漫画家。京都府出身。デザイン会社のサラリーマンを経て、『モーニング』に持ち込みをした『ジジジイ』で第14回MANGA OPEN審査委員賞(わたせせいぞう賞)受賞。『劇団JET’S』で第15回MANGA OPEN大賞受賞。
2007年12月からモーニングで連載している『宇宙兄弟』は初の週刊連載作品。
│主人公が夢を叶える場所を、「何気ない公園」にした理由
栗俣(インタビュアー):『宇宙兄弟』は兄弟揃って月に立つと幼い頃に誓ったムッタとヒビト二人の物語です。第1話では兄であるムッタはとある事件から無職となり、弟であるヒビトは月へ向かう宇宙飛行士となりインタビューを受けている、そんな対照的な展開が描かれています。そしてこの第1話の最後には「すでに自分の夢は終わってしまった」と思い込んでいる多くの読者に「まだその夢は終わっていないのではないか?」と心にグッと火をつけるような展開が待っています。
『宇宙兄弟』にはそんな読者の気持ちを揺さぶる展開が多く描かれているのですが、まずは小山先生が『宇宙兄弟』を描かれている中で思い出深いシーン3選を序盤の展開の中からお伺いさせていただきたいと思います! 小山先生が『宇宙兄弟』を描かれている中で思い出深いシーン3つを1巻~9巻の中でお伺いせていただいてもよろしいでしょうか?
小山先生:まずは、ムッタが宇宙飛行士に合格するシーン(8巻#71)。JAXAの星加がムッタを何気ない公園に呼び出して合格を告げ、握手して、その間を子供が自転車でシャアーー、と通っていく、というシーンです。主人公が夢を叶える場所を、「何気ない公園」にした理由は、この物語が、現実と地続きなことを表現したかったからです。「宇宙飛行士が誕生する」という、大きな事が起きてるその瞬間にも、同時に、普通の人の普通の日常は存在してるよな、という気持ちがあって、それを表現したのですが、リアリティ感じられる描き方になったな、と気に入っていますね。
栗俣:誰もが想像できる日常の中だからこそこんなにも心の奥底から湧き出るような感動を生んでしまうんですね!! 読者としてもあのシーンは今思い出しても目頭が熱くなるほどの感動でした…。2つ目はどのシーンでしょうか?
小山先生:閉鎖環境訓練中にムッタのいるA班がうどんを作り、ムッタが「ここにいたんだ」と感じるシーンも好きですね(4巻#37)。例えば僕は、サディという編集者(宇宙兄弟の初代担当編集者、佐渡島庸平氏)と会った時、話してみると、まず好きな漫画家さんがほとんど同じで、さらにその漫画家さんたちの作品の好きなところもすごく似ていて、このムッタのような気持ちになりました。このシーンは、僕だけじゃなく、誰もが一度は思うであろうことを描けたなと思っていて、気に入ってます。
栗俣:誰もが共感できるポイントが多い宇宙兄弟の魅力はそんなところから生まれているのですね! 3つ目はどのシーンでしょうか?
小山先生:3つ目は、日々人の事故にまつわる一連のシーンのなかで、酸素生成ローバー“ブライアン”が到達するあたりですね(9巻#82~#85付近)。ブライアンと日々人の過去エピソード、酸素が少なくなった日々人がブライアンの人形を見つける動き、そしてローバー到着、という一連の流れがうまく重なって、いいシーンになったと思います。
│モブのつもりが、大活躍することになった人
栗俣:実は『宇宙兄弟』の登場人物には多くの実在するモデルが存在するんですよね! 例えば3次試験でムッタと同じグループで2週間を過ごした眼鏡のおじさん「福田直人」には植松洋彦さんというモデルさんがいて、この方は宇宙船開発にチーフエンジニアとして関わる技術者で私も「宇宙兄弟OfficialWeb 宇宙兄弟リアル」のインタビューを読んでその想いの熱量に気持ちが高ぶりました! この「宇宙兄弟OfficialWeb 宇宙兄弟リアル」には宇宙兄弟の登場人物のモデルとなった方が皆さん登場しその宇宙にかける思いが記事として読めるようになっています。
この宇宙兄弟リアル私もイチ読者として「このキャラにもモデルが!?」とモデルになった方を知る事でさらに作品の深堀が楽しめているのですが『宇宙兄弟』の登場人物にはこの宇宙兄弟リアルに登場していないキャラでもモデルがいる人物はまだまだいらっしゃるのでしょうか? もしあればそのキャラとモデルになった人物の事をお答えできる範囲で教えて下さい!
小山先生:『宇宙兄弟リアル』でご紹介いただいたように、もちろん人物としてのモデルになった方もたくさんいますが、人物ではなく、顔というか、絵のモデルもいます。例えばムッタは、アメリカのロックバンド『ザ・ストロークス』のギタリスト、アルバート・ハモンドJr.の似顔絵を描いてる時に生まれましたし、ピコは、俳優のトム・ハンクス。ベティのモデルは、『バイオハザード』などに出演されている女優のミシェル・ロドリゲス、他にもいろいろいて、ファンクラブでは詳しく話したりしてます。キャラクターを作るときに、似顔絵を描いてみて作っていくことも多いですね。
栗俣:逆に全くモデルがいないキャラで小山先生が「こいつは想像以上の活躍を見せている!」と思えてしまうようなキャラはいたりするのでしょうか? その理由と合わせお伺いさせていただきたいです!
小山先生:これは、エディですね。エディは最初、モブだったんです(※注:エディ初登場は2巻#17)。日々人は名前を読んでますが、本当にここだけ登場って感じで描いたんですが、その後ブライアンを描くことになって、描いてみたら、エディに似ちゃって。「じゃあ、兄弟にしようか」となり、エディが「兄」になり。そして本格的に登場し直して、今の活躍ですからね。何回も表紙になって(笑)。ムッタにも大きな影響を与えてます。モブで登場させたのにあそこまで活躍する人いないでしょう(笑)。
栗俣:実は以前担当さんより小山先生がファンクラブでラジオ番組をされているとお伺いしました! どんな事を話されているのかとても気になりまして、ぜひお話しできる範囲でお伺いしてもよろしいでしょうか?
小山先生:番組名は『小山宙哉のノンノ・バビア』といって、基本的にはおたよりを読んで、読者のかたからの質問に答えるかたちで、宇宙兄弟のキャラクター、たとえばムッタをどうやって作ったかとか、シーンごとの裏話、せりかの涙のシーンはいつごろから考えてどうやって作ったか、とか、あと漫画を描く時に大切にしてること、なんかを話してますけど、たまに、映画の僕なりの解説や、このシーンはこう修正した方が面白い! というような、作り手として思ってることを話したりもします。今までは洋画だと『レヴェナント 蘇りし者』、邦画だと『怒り』の解説なんかをしましたね。あとはスタッフが作ってくるバラエティ的なコーナーでモノマネしたりとか…(笑)。スタッフと一緒にワイワイ楽しんでやってます。
栗俣:むちゃくちゃ楽しそう!これはすっごく聴きたくなります…。最後に『宇宙兄弟』のファンの方、そしてこれから作品を読みたいと思っている方それぞれにメッセージをお願いいたします!
小山先生:まずはファンの方へ。「いよいよ」という感じになってきたと思います。まだ、「終わりの助走段階」の41巻ですけど、ここから、本格的に終わりに向けて描いていきたいと思っているんで、楽しんでください。そしてこれから読む方へ。まだ読んでないなんて、うらやましいですね(笑)。これからめちゃくちゃ楽しめますからね。たっぷり、ゆっくり、楽しんでください。41巻もある漫画で腰が重いと思いますが、3巻まで読めば、その心配はいらなかったことがわかるくらい、楽しんでもらえると思います。
栗俣:小山先生、今回はありがとうございました!
<スタッフよりお知らせ>
インタビューでも出てきた、宇宙兄弟の制作裏話やキャラクター創造秘話が作者本人からたっぷり聞けるラジオは、ファンクラブ「コヤチュー部プレミアム」で聞くことができます! 入会特典、会報誌、アニメ版の声優さん動画企画、イラストギャラリー、壁紙プレゼントなど豊富なコンテンツで、小山宙哉と宇宙兄弟を応援することができます。ご興味あるかたはこちらのページから。
│仕掛け番長のおすすめ本
【コンシェルジュ】仕掛け番長
栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』