現在『月刊good!アフタヌーン』にて連載中の『ビンテイジ』。
古着×キャンパスライフコメディーというあまりないジャンル作品である本作。私はどことなく特殊な世界のイメージで古着というものに触れにくいイメージを持っていたのですが、この『ビンテイジ』を読むとなんだか想像していたのとは違う、魅力あふれる古着になんだか凄く興味がわいてきました!!
今回はそんな『ビンテイジ』の著者である赤堀君先生に色々聞いていきたいと思います。
【プロフィール】赤堀君
かつて古着屋で働いていた。著作に『にこめっこ』『ガカバッカ』(講談社)など。現在『ビンテイジ』と並行して、ヤンマガWeb連載『金曜日のバカ飯先輩』(作画/よしづきくみち)の原作も執筆中。
Twitter(@pon_kan_tii)
│服は好き。でも「古着の漫画とか読みたい奴いるんか?」と思っていた
栗俣(インタビュアー):まずお聞きたいのは、この『ビンテイジ』の物語の中心になっている古着についてです。古着というテーマの漫画作品はかなり珍しいジャンルだと思うのですが、古着を軸として作品を描こうと思ったきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか?
赤堀君先生:前回の連載が終わった後、紆余曲折経てアフタヌーンの現担当さんに声をかけていただき、一発目の打ち合わせで僕が学生の頃古着屋でバイトしていた話をしたら『古着漫画ありなんじゃないですか?』と小盛り上がりし、正直その時は『古着の漫画とか読みたい奴いるんか?』とか『そんなことよりとにかく三つ編みの男が描きたい』とか思っていたんですが、とりあえず描いてみて編集さんに送ったら『面白いですね!」と言っていただき、1話目のほぼ原型が出来上がった感じです。自分でも描いてみたら意外と描きたくなってきたのと、三つ編みもねじ込めたのでやってみようかな、と。
©赤堀君/講談社
栗俣:『ビンテイジ』には古着の知識がこれでもかというほど詰まっています。個人的にはスニーカー「ERA」の話は身近なものであるという事もあり、色々な違いやサイドテープのデザインなどとても興味深く読ませていただきました! やはり赤堀君先生も古着がお好きなのでしょうか? また、一番の古着の魅力についてもお聞きしたいです。
赤堀君先生:元々服は好きだったのですが、前述の古着屋バイトがきっかけで好きになりました。ビンテージからブランドものの古着も扱うお店で、買取もあったので勉強しなければいけなく、自然と深入りしていきました。今も趣味で集めたりしてます。見ながら酒飲む気持ちもわかります(やりませんが)。
古着は、今では買えない過去のものが手にできて、さらに温故知新、今につながる新しい発見があったりすることが魅力かと思います。あと人と被らないカッコができることも魅力かと思います。
│古着は面白いと知ってほしいし、この漫画が「その次が知りたい」きっかけになれれば嬉しい
栗俣:『ビンテイジ』は古着を中心に主人公エイジのキャンパスライフを描く作品です。エイジは誰もが通ってきた「特別と思える何か」を探しているころの自分のような存在だと思います。エイジという主人公を通して描かれる『ビンテイジ』に、私は今まさにエイジと同年代の読者、そして若者だった多くの読者へのメッセージが詰まっているように感じました。
『ビンテイジ』で描かれているメッセージの中の大きな一つに「好きかどうかよりもまず知る事」があると私は思います。この「知る」というのはネットで簡単に調べて知った気になる「知る」ではなく、しっかりとそれ自身や、それを取り巻く人達の心に触れる事で初めてわかる「知る」を指しているかと思います。特に作中のアヤメのエイジへの「もう知っちゃった君はこっちの仲間入りだね」というセリフのシーンには心に込み上げる熱い物がありました。赤堀君先生の考える「知る」事の大切さ、それにより得るものについてお伺いしてもよろしいでしょうか?
©赤堀君/講談社
赤堀君先生:単純な知識欲というのは人間誰しもあると思うのですが、ただの蘊蓄とオタク的な愛から来る知識欲との違いは「好きだからどうでもいい事すら知りたくなる」所だと思っていて、テスト範囲外の歴史の話とかモジュロ演算の公式とか、ちょっと好きじゃないと知ろうとも思わないしすぐ忘れると思うんですよね。知らなくても生きていけるので。でも好きだから知りたい、だと前のめりで頭に入ってくるというか。きっかけはネットで見たとか友達の一言とかなんでもいいけど、その次の『知りたい』『好きかも』そして本当の『知る』が尊いと僕は思うので、誰かのそのきっかけにこの漫画がなれば嬉しいです。
©赤堀君/講談社
栗俣:その他にも沢山のメッセージが詰まっている『ビンテイジ』という作品ですが、先生ご自身がこの作品を通して読者に一番伝えたい事をお伺いしてもよろしいでしょうか?
赤堀君先生:古着は面白いという事と、ぼーっとしてると人生は矢の如く過ぎるぞという事です。
栗俣:『ビンテイジ』についてのインタビューでこれを聞かないわけにはいかない! という事でぜひ『ビンテイジ』を読んで古着に興味を持った読者に、古着初心者がまず古着を楽しむにはどうしたらいいかについてお伺い出来ればと思います!「古着が見てみたい!」「着てみたい」と思った時にまずどうしたらいいんだろう? という最初の部分なのですがやはり古着店などのお店に行ってみるのがいいのでしょうか?
赤堀君先生:都市部とかだとお店が沢山あるところも多いので実際に行ってみるのがいいと思うのですが、今だとアプリ等でも買えるのでそこからでも全然いいと思います。ただサイズとか似合わなかったみたいな失敗もあるので初めは実店舗の方がやらかさない気はします。
栗俣:作中で最初に入るなら「ミリタリー」というお話がかなり詳しく描かれておりますが、やはり最初に古着を楽しむならオススメはミリタリーものなのでしょうか?
赤堀君先生:古着の起源的な面でミリタリーを導入として描いたのですが、実際に三次元の世界で考えると別にミリタリーが最初じゃなくてもいいかと思います。下手すると『軍人さんかよ』みたいな格好になったりするので。でも個人的にはブカブカでボロい軍もの着てる女の子とかかわいいと思います。
©赤堀君/講談社
栗俣:ブカブカでボロボロの服を着た女の子ですか!? あ、でも想像すると確かに剃れ可愛いかもと思ってしまった自分がいました(笑)。古着をこれから楽しみたいと思っている方にアドバイスがあればお願いいたします!
赤堀君先生:エイジじゃないですが失敗を恐れず買って着て知って、モテてほしいです。間違っても漫画描いたりする青春は避けてほしいです。ライバル漫画家が増えるかもしれないので。
栗俣:最後に『ビンテイジ』読者、そして赤堀君先生のファンの皆様にメッセージをお願いいたします!! また、今後の作品展開で注目してほしい点があれば教えてください!!
赤堀君先生:うまく着地できるかわかりませんが、主人公が古着を知って変わっていく姿を見届けてもらえたらありがたいです。単行本1巻が3月7日発売なのでよろしくお願いします。あとTwitter(@pon_kan_tii)で作品のことなど呟いたりしてるのでこちらもよろしくお願いします。
栗俣:赤堀君先生、今回はありがとうございました!
(文:仕掛け番長)
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【コンシェルジュ】仕掛け番長
栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』
Twitter(@maron_rikiya)