2021年もっとも話題になった初巻発売作品のひとつ『スイカ』/森とんかつ先生へのインタビュー【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

現在『月刊good!アフタヌーン』にて連載中の『スイカ』。
その独特で一度読んだら忘れられないような内容から、2021年もっとも話題になった1巻目発売作品のひとつではないでしょうか?
今回はそんな『スイカ』の著者である森とんかつ先生に超絶個性的なホラーコメディ作品の本作について色々伺っちゃいます!

【プロフィール】森とんかつ

ヤングマガジンで新人賞を受賞後、WEB漫画を中心に活動。ホラーテイストのギャグ漫画や独特の世界観を持った少年・少女の日常を描き、支持を集める。2019年good!アフタヌーンで『スイカ』の読み切りを掲載。多くの反響を呼び連載獲得。毎度原稿が遅く、担当編集をハラハラさせるのが得意。

Twitter(@tonkatsu_mori)

│担当編集者の後押しでブラッシュアップして生まれた「スイカ」

栗俣(インタビュアー):『スイカ』は1話完結型の連作短編で描かれたホラーコメディで、今連載されている多くの漫画の中でもかなり異彩を放つ作品ですよね。森先生が漫画に関わっていくことになるきっかけや、結果的に『good!アフタヌーン』の「第5回ギャグオーディション」に「スイカ」で参加するに至るまでの道のりはどんなものだったのでしょうか?

森先生:漫画は子供の頃からずっと好きでしたが、漫画家という職業に憧れを持つようになったのは、望月ミネタロウさんとさくらももこさんの影響です。お二人の描くような漫画を目指して描き始めたんですけど、1ページも描けなくて諦めました。それからしばらくしたある日、友達に遊びで書いたコントの脚本のようなものを見せたらすごくウケたので、ギャグ漫画やったら描けるかもなと思い、ヤングマガジンの月間新人賞に送ってみたところ賞を頂いた、というのがきっかけです。

それから何回か賞を頂いたり、別の出版社さんにもお世話になったりしたんですが、連載には至りませんでした。その後『DAYS NEO』という漫画投稿サイトに、今連載している『スイカ』の原型のような漫画を投稿したところ、それを見て担当になってくれた編集さんが「スイカで連載を目指しましょう」と言ってくださったので、連載を意識してスイカを作り直し、ギャグオーディションに参加させてもらうことになりました。

©森とんかつ/講談社

栗俣:原点は望月ミネタロウさんとさくらももこさんだったのですね! 言われてみると『スイカ』にそのエッセンスを感じる気がします! ギャグとホラーの絶妙な掛け合わせであったり、連作短編としているところなど、「スイカ」におけるこだわりポイントはどんなところでしょうか?

森先生:連作短編なのは特に意図したわけではなく、今までそのスタイルでしか描いたことがない、というのが正直な所ですね。気持ちの悪い話やけど気持ちのいいテンポとキャラクターで、読み終わった後は「アホやな~」と思ってもらえるように描いています。

栗俣:そうそう! 気持ち悪い話だけど気持ちいいテンポとキャラクターがまさに『スイカ』の魅力ですよね。

│ふと出会った2人の漫画家作品に衝撃を受けた結果、「森とんかつ」誕生へ

栗俣:『スイカ』は漫画表現も独特で、昭和や平成初期のホラー漫画やギャグ漫画を思い出させるような印象を受けます。それは当時の漫画を読んでいた読者には懐かしさを、また現在の若い読者には新鮮な楽しさを感じさせてくれます。そんな森先生が漫画を描く上で影響を受けた作家さんや作品がありましたらお聞かせください。

森先生:めちゃめちゃたくさんあるんですけど『スイカ』で言うと、わかりやすいかなと思うのは『Dr.スランプ』(鳥山明先生)ですね。

栗俣:鳥山先生でしたか! 『スイカ』と『Dr.スランプ』言われてみると確かに通じる面白さがありますね! ちなみに、ご自身の作風に影響を与えたような体験や経験などはありますでしょうか?

森先生:ヤングマガジンの編集者さんに担当についてもらっていた頃、ご飯を奢って貰いに東京へ行った時、帰りの新幹線での暇つぶしにと思って買った天久聖一さんの『お前』と押切蓮介さんの『おばけのおやつ』には衝撃を受けましたね。「このままじゃだめだ、もっと自分にしか描けないものを描かないと!」と思い、なぜかペンネームを森とんかつに変えていました(笑)。この二作品は、自分の好きなものとか、かっこいい、面白いと思うものをもっと正直に出そうと思うようになったきっかけになる漫画でしたね。

©森とんかつ/講談社

│スイカは好きなように解釈してもらって作品を楽しんでくれれば

栗俣:関西弁ツッコミ教師「園渚」と、高校の百七不思議の一つというよくわからないけどなんだか可愛い「物部スイカ」の2人が中心となり毎回話が進んでいくのですが、園とスイカのテンション高めでリズミカルなボケとツッコミがキレよく展開され、そして怖いんだか怖くないんだかわからない怪異の皆さんが毎回ゲストのように登場し読者を飽きさせません。この怪異がどのキャラも非常に個性的で、私は異様に美人な「事故で右手を失いし漫研少女」や「テスト中に鼻でグゥリグゥリする天狗」が大好きです。そんな怪異の皆さんの中で森とんかつ先生ご自身のお気に入りの怪異と、その理由も教えていただけますでしょうか?

森先生:牛の首です。初めて『スイカ』で描いた怪異なんで思い入れがあります。また出したいですね。

©森とんかつ/講談社

栗俣:ちなみにホラー要素とギャグ要素を1話の中で収めていくことのバランス感については、どんなことを気にされているのでしょうか?

森先生:1話の中で、驚いたり、ゾッとしたりもしてほしいんですけど、読み終わった後の感想は「しょうもな(笑)」と言ってもらえるように、ホラーに引っ張られすぎないようにしています。

栗俣:私もいつも「しょうもな」と思って読み終えてます(笑)そんなハイテンションなホラーコメディである『スイカ』なのですが、実は一部読者の間で「物部スイカ」について考察もされております。見た目は小学生女子、百七不思議の一つで突拍子もない行動が多く、作中で時間や空間を超えてしまっているよね!? という部分もちらほら。しかし時折少女らしさも見せる、何ともつかみどころのない不思議な魅力の詰まった少女ですよね。

©森とんかつ/講談社

森先生:ホラーという側面から見た時に、ちゃんとした設定があるとキャラクターの色気が無くなるような気がするので、スイカに関しては好きなようにさせているといった感じです。スイカという名前も、身に着けている黒いランドセルも、読者が好きなように解釈してくれたらという意味を込めています。ただ、園先のことを気に入っているということだけは確かです。

栗俣:森とんかつ先生が考える物部スイカの魅力はどんなところにありますか?

森先生:園先のことを気に入っていること以外は、何もわからないのが魅力かなと思います。

栗俣:なんだかインタビューさせていただきよりスイカの謎度が上がった気が(笑)。最後に『スイカ』読者、そして森とんかつ先生のファンの皆様にメッセージをお願いいたします!! また、今後の作品展開で注目してほしい点があれば教えてください!!

森先生:いつもスイカを読んでくださり、ありがとうございます。一度出したキャラも使いまわしつつ、百七不思議、百七キャラ目指して頑張ります! 単行本一巻が絶賛発売中です! そしてTwitter(@tonkatsu_mori)もぎりぎりやってるんで、よろしくお願いします。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

スイカ

1巻発売中

著者:森とんかつ
出版社:講談社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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