現在週刊ヤングジャンプにて連載中の『九龍ジェネリックロマンス』。
はじめに作品の空気感で多くの読者の心を掴み、まさかの展開にド肝を抜かれ、ファンが急増中!多数の漫画賞の上位にランクインするなど『九龍ジェネリックロマンス』は『恋は雨上がりのように』と同様に漫画ファンからの評価が非常に高い作品となっています。
そんな『九龍ジェネリックロマンス』について作者である眉月じゅん先生に色々お話をお聞きしていきたいと思います!
│多くのヒット作品を手がける編集者とつくりあげた、未来に繋がる『九龍ジェネリックロマンス』
栗俣(インタビュアー):眉月先生、お久しぶりです! 実は『恋は雨上がりのように』でも眉月先生にインタビューをさせていただきました。『恋は雨上がりのように』も本当に大好きな作品でかなりテンション高めにお話させていただきました。
眉月先生:お久しぶりです! その節はありがとうございました。楽しいインタビューだったと記憶しております。今回もお声をかけていただいて嬉しいです。よろしくお願いいたします。
栗俣:よろしくお願いいたします。『恋は雨上がりのように』の連載終了後、初期短編集『さよならデイジー』の発売、そして満を持しての連載『九龍ジェネリックロマンス』がスタート。連載1回目から作品から漂う雰囲気がたまらなくて夢中になって読んでしまいました。また、前連載の『恋は雨上がりのように』と比較して大きく世界観が異なることが連載開始時、漫画読みの間で話題になりましたが、本作の世界観を描くことになったきっかけなどあるのでしょうか?
眉月先生:本作のテーマを決めたきっかけはほとんど覚えていないです! 当時、担当編集の大熊さんをご紹介いただき、『あの大熊さんを納得させるネームを見(魅)せなければならない』というプレッシャーを強く感じていたことばかり覚えていますね。
ただ、漫画を描き始めてから『恋雨』が“今までの自分の経験や思い出”をテーマにしていたとすれば、『九龍ジェネリックロマンス』は自分の過去に加えて“現在”見つけたこと、そして“未来”に繋がるようなものを描こうと思いました。
©眉月じゅん/集英社
そして実は『九龍』を舞台にした漫画はいつか描きたいとずっと思っていました。九龍を知ったきっかけは小学生の頃に見たドキュメンタリー番組、高校生の頃にプレイしたゲーム『クーロンズゲート』(かなり序盤で挫折)でした。当時購入した九龍の写真集は、今では背景参考資料として大活躍しています。
栗俣:あの“大熊さん”とつくり上げた作品なのですよね。そして、小学生の頃に出会った九龍を舞台にした漫画を今描かれていると思うと浪漫を感じますね。
│服装から癖や仕草まで、細かく「自分らしさ」が吹き込まれた登場人物たち
栗俣:さて、『九龍ジェネリックロマンス』は緻密に組まれた伏線。そして徐々に明かされる「九龍」の謎が魅力の一つです。しかし個人的にはそんな得体のしれない「九龍」の中にあっても、それぞれの登場人物が自分らしく生きている姿が大好きです。毎回お昼は同じ店で同じものを食べるとか、私も決まったお店で決まった自分のお気に入りのものをずっと食べるタイプなので「わかるー!」と共感しながら読みました。タバコとスイカが合うとか、金魚は飼わないとか、この作品にはそれぞれの登場人物の「自分らしさ」があります。そしてそれこそが本作の大きなテーマではないかと思うのです。
眉月先生:私はRPGゲームで例えるとすれば、“大きなイベントの前に起こる村人絡みのプチイベント”みたいなものが大好きで、一見あってもなくてもいいようなシーンを通してキャラの個性を描きたいし、読んでいる人にも親しみを感じて欲しいと思っています。ですので栗俣さん、意図を汲み取っていただきましてほんとにもう、ありがとうございます。
©眉月じゅん/集英社
そして、私がこういう嗜好になったきっかけはおそらくRPGゲーム『moon』の影響がかなり大きいと思います。ゲーム内の住人を観察して癖や習慣を把握し、謎解きをするゲームなのです。このゲームも中2くらいの時にプレイして、本当に大好きです。(最近満を持してSwitch版が出ました)
栗俣:RPGの住人一人ひとりにはしっかりとセリフと役割があって、制作側の何かしらの思いが込められていますから、ひたすらレベルを上げてクリアを目指すのではなく、そこに注目するとゲームの世界観にどっぷり浸れますよね。眉月先生が登場人物一人ひとりの個性・らしさを表現する上で大切にしていることなどありますか?
眉月先生:気をつけているのはキャラの洋服ですね。このキャラはこういう趣味なんだなとか、コイツは着ることができればなんでも良いんだななど、現実でもそうですが服はその人を知る重要な要素だと思います。“そのキャラらしい”服を着せるように心がけています。
ちなみにゲームの話ばかりしていますが、小中学生の頃人並みに遊んでいただけでゲーマーというわけではないです。でも、ゲームのプレイ動画を観るのは好きですね。
栗俣:私もゲーマーのようにRPGを語ってしまいましたが、私も違います。さて、一人ひとりが「自分らしさ」を持って生きている本作。眉月先生のお気に入りのキャラクターをお伺いしたいです!
眉月先生:全キャラ好きで、描けば描くほど大好きになっていっているのですが、最新6巻で新キャラとして登場した汪先生がとても好きです。
理由は何だろう…頼りにできる、人格者っぽいところ…? 原稿を描き始める前から「かっこいい爺さんを描くぞ!!」と気合は入れていましたが、脱稿後ただただ「この先生好きだわ…」という気持ちになりました。
│何も起こらない? もうすでに起きている? 今後の伏線回収に期待大!
栗俣:今回眉月先生にぜひお伝えしたいことがあるのですが、第5巻おまけページで衝撃の「グエンさんの秘密」が描かれていたところについてです。もう個人的に衝撃的過ぎて放心状態になりました! 本当に眉月先生の第六感が働いてよかったです!(笑)
そして、まさかのみゆきちゃんとの絡みも当初は予定されていなかったとのことなのですが、その他にも「制作秘話で実は…」という読者が驚くような裏話があればお聞かせいただけないでしょうか?
眉月先生:連載会議に提出したキャラ表では鯨井さんのもみあげが長かったのです。そんな鯨井さんを見た編集部のどなたかが「主人公のもみあげに不安を感じる」とおっしゃったそうで、それを聞いて短くしました。本当によかったです。どなたか存じませんがありがとうございます。
©眉月じゅん/集英社
栗俣:そうなのですか!? ぜひ、この記事を通じて鯨井さんのもみあげに不安を感じてくださった編集部の方に眉月先生の思いが伝わることを祈っております。
では、最後に読者のみなさんへメッセージをお願いできますでしょうか?
眉月先生:あってもなくてもいいようなシーンを描くのが好きだと言いましたが、ちゃんと九龍の”謎”部分も動いております。(笑)
何も起こらない?もうすでに起きている?
いろいろと考えを巡らせながら、作品を楽しんでいただけたら嬉しいです。
また、紙版のコミックス限定でプレゼント企画などもやっておりますのでご興味ありましたら是非!
栗俣:眉月先生、本日はありがとうございました!
(文:仕掛け番長)
│仕掛け番長のおすすめ本
【コンシェルジュ】仕掛け番長
栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』
Twitter(@maron_rikiya)