これは「どこにでもある」家族の物語。『そんな家族なら捨てちゃえば?』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│1から10を知った気になる思い込みの激しい妻と、考えすぎて自分の気持ちを伝えることが苦手な夫

主人公である令太郎には妻と娘がいる。
家族がいる家に彼が帰ると、その廊下にはテープが張られている。
彼はそのテープを超えることは許されず、ちょっと線を踏んだところを妻に見つかればガラス瓶が飛んでくる。そんな家で彼は息を殺して生活をしている。
そんな令太郎の趣味は謎解きを考えSNSに投稿する事だった。

令太郎の妻である和美は思い込みの激しい性格で、1を見て10を知った気になってしまう人だった。その性格もあり、娘の生まれる前の令太郎のとある一言から彼の事を極端に避けるようになっていた。

ふたりの娘、一花は令太郎の謎解きアカウントを父親とは知らずにフォローし、問題を解くことを楽しみにしていた。
一花は父親の事を嫌っているわけではなくむしろ仲良くしたい思いもあるのだが、母親の事もあり共に避けるような生活をしてしまっていた。
令太郎も娘の一花も自分の気持ちを言葉にするのが苦手。
相手の事を考えすぎる、優しすぎる性格ゆえに、相手を傷つけないように言葉を選び話すからなかなか言葉を発する事が出来ないのだ。

そんな家族崩壊寸前の家族3人の元にそれぞれにとっての救いの人が現れる。
ふらついて危なかった所を助けてくれた女性。その息子である引っ越してきた同級生、そして娘の担任の先生。
それぞれの人間関係が絡み合う中で令太郎達家族はどうなっていくのか…。

│目に見えるものが正しい事の方が少ない世の中にある家族の物語

「人を誤解しやすい」人間は多い。

この『そんな家族なら捨てちゃえば?』は家庭崩壊の中にある家族を中心としつつ、そんな世の中のリアルを描いた作品だ。

加害者と責められているものが本当は被害者であったり、加害者でも被害者でもないとされている第三の人間が一番の元凶だったり。
本人の想いをしっかりと聞いたわけでもないのに「〇〇はこうだから」と決めつけてしまう。自分の中に空想のその誰かを作り勝手にレッテルを張る。

そんな中、色々なレッテルを張られながらも相手の事をしっかりと知ろうと思考をめぐらすことをやめない令太郎と一花。人間関係の中にある相手の想いをどうにか紐解いていく事を物語の中心に置いた漫画というのは今まであまり読んだことがなく、夢中になって読んでしまった。

個人的には一花に感情移入する部分も多く、一花が中心となるエピソードは特に切なく苦しい思いがした。

この作品は、読んだ人に自分自身を見直すきっかけを与えてくれる作品だと思う。
人間関係に疲れていたり思い悩んでいたり、そんな時はこの漫画を読んで欲しい。
きっとその悩みを解くヒントがこの作品にはあると思うのだ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

そんな家族なら捨てちゃえば?

4巻までレンタル、5巻まで発売中

著者:村山渉
出版社:芳文社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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