事件が甘く溶ける。リアル推し文化×本格ミステリーの破格な1冊!『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】 Tweet │ここまで今を映したリアルなミステリーは他にはない!! ミステリー小説は「誰が犯人か」を当てる面白さや「どんな手口を使って」その犯行を実行したのか、例えば密室殺人の謎というようなトリックを暴く楽しさがある。そしてさらにもう一つ「なぜその犯行に及んだのか?」という動機。この動機の部分が一番大切というミステリー好きな本読みも少なくないだろう。 今回ご紹介する『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』は、ライトな読み味ながら犯人当てもトリック考察もかなり高レベルで楽しめる本格ミステリー小説となっている。本作の探偵役は黒苺フガシという美人メイド。大好きなものを並べたというふがし好きな彼女は、メイド喫茶専門の探偵というかなり異色の存在だ。第1話ではメイド喫茶で発生した密室殺人事件に彼女が挑むのだが…。 トリックも今の時代をしっかりと踏襲しなかなか驚きの手口が用意されているのだが、この作品のいちばんの面白さはそれ以上に「コンセプトカフェ」「推し」などの概念が理解できているものならばもはや納得せざる得ない、その事件を起こした犯人の動機だ。 │犯人の動機の異質なリアル感の再現こそこの小説一番の魅力 その概念に理解のないものは「なんでそんなことで」と思うかもしれない。しかしそのわかる人には深く刺さってしまうような個人的な想いの集合体が動機となる事件こそに、リアルさを感じずにはいられない。 キャラクター性の強い探偵役を中心に置きつつ、秋葉原という実在の場所をかなり細かな描写で表現しつつリアルな動機を用意する。この面白さは他の小説ではあまり味わえないものだと感じた。 また第2話では「人から推されるのは、こんなに怖いことなのだ」となかなか衝撃的なキャスト側の思いが冒頭から語られていたり、推し文化やコンセプトカフェに知見のある柴田勝家先生だからこそかけた本格ミステリー。 仕事柄数多く新作小説も読んでいるが、今年読んだ新刊ミステリーの中でも1、2を争うほど異質で面白いこの『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』。気になった方はぜひ一度手に取っていただけたらと思う。 (文:仕掛け番長) │仕掛け番長のおすすめ本 メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿 発売中 著者:柴田勝家イラスト:望月けい出版社:講談社 商品検索 商品検索 作品詳細 【コンシェルジュ】仕掛け番長 栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』 Twitter(@maron_rikiya)