彼女の浮気から始まる90年代トレンディドラマのような恋!?『カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│大学生のリアルな恋模様をしっかりとベースに置きつつ今の時代の憧れを物語の中に取り込んだ、まるで90年代のトレンディドラマのような時代を象徴する誰もが楽しめる作品

クリスマス直前。付き合ってもうすぐ1年になる彼女が知らない男と浮気をしている姿を目撃してしまう。
そんなシーンから始まる本作。

大学2年生の羽瀬川悠太は、その浮気が原因で彼女と別れて1ヵ月。
そのショックからなかなか立ち直れずにいる彼と、彼の高校から仲のいい女友達である美濃彩華、そして悠太がクリスマス直前の街で偶然知り合ったサンタコスでチラシ配りのバイトをしていた彼氏の浮気に悩んでいる大学1年生の志乃原真由。

『カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています』はそんな3人を中心とした恋愛ストーリーだ。

タイトル的にも原作小説がスニーカー文庫から発売されている事からも、どうしてもラノベのイメージを強く持ってしまいそうになるが、内容は大学生のリアルな恋模様をしっかりとベースに置きつつ今の時代の憧れを物語の中に取り込んだ、まるで90年代のトレンディドラマのような時代を象徴する誰もが楽しめる作品となっている。

│人としてマイナスな面もしっかり描いている嘘のないラブコメ展開

この作品は浮気から始まる恋と言っても、別に殺伐、どろどろとした物語では全くない。
「主人公である悠太の家に小悪魔系の後輩である真由が転がり込んでくる」という、それだけ聞くと本当にラノベだよね?と思うような内容なのだ。
しかしこの物語がそれでもリアルに感じるのは、登場人物たちの背景や心理描写、そして人としてマイナスな面もしっかり描いているという部分が大きいだろう。

例えばこの作品のヒロイン真由が付き合っていた元カレは恐ろしくチャラい性格で、彼女の周りにはそういった人間が多くいることも描かれているし、彼女がそんな彼と話している姿から彼女もそんな中の一人である事は容易に読み取れる。
すぐに距離を詰めてくる性格が発動されるのは主人公にだけというご都合主義ではなく、そういう性格で元々いるからこういう関係性になれるという納得感があると同時に、どうしてもそんな彼女に対しての不安も読者はどこかで感じる事になる。

それはもう一人のヒロイン彩華にもそして主人公である悠太にも言えるのだ。
また、心の在り方に影響を与える環境部分もしっかりと描かれているなど、ドラマ的に場面を表現されていることもリアルさを読者に感じさせる大きな理由だろう。

原作はカクヨムで掲載されていたものが書籍化されたものなのだが、原作小説も地の文がしっかりとしておりコミカライズ同様のリアルな憧れの恋を楽しめるようなものになっている。
しかし最近のカクヨム発の作品はレベルの高さに驚くことが本当に多い。
コミック、原作ともに普段ラブコメを読まない、ラノベ的なご都合主義が苦手という方にこそぜひ読んでいただきたい作品だ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています

1巻発売中

著者:香澤陽平
キャラクター原案:えーる
原作:御宮 ゆう
出版社:KADOKAWA

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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