超話題作『地獄色』の浄土るる先生、最新作1巻がついに発売!『ヘブンの天秤』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│称賛されている事、正しいとされている事とは何なのか?

浄土るる先生の前作、短編集『地獄色』の衝撃は本当に凄まじかった。
SNSなど各所で「問題作」「考えさせられる作品集」「近年まれにみる胸糞作品集」「リアルすぎて心が痛くなる」など様々な意見が交換され多くの方の心を掴み、特にいじめの本質をとらえたような作品「鬼」は一度読んだら最後のシーンが脳に焼き付いてしまうほどに強い印象を残した。

そんな浄土るる先生の最新作である『ヘブンの天秤』1巻がついに発売された。
天使たちが住む世界ヘブンで、天使としての基本的な心が備わってないと言われた主人公の天使メロ。
彼は天使鑑定の結果堕天使になったと通告を受ける。
しかし本来堕天使となったら消えるはずの頭にある神に仕えるものの証の刻印は消えずにいる。
これはヘブンでは前代未聞の事であり、この刻印が消えていない限りは堕天使としてヘブンから追放は出来ない。その結果メロは下界に降りて迷える人間を救い堕天レベルを下げ天使に戻るための試練が与えられるのだった。

早速下界に降りたメロを待っていたのは母親と女の子。
そしてその女の子を殺そうとしている包丁を持った青年だった。

緊迫した場にいきなり落とされたメロ。
メロは状況を理解しようと青年に話しかける。

青年は、自分の妹はこの女の子に陰湿ないじめをされそれを苦に死んだ、だからこいつが生きていていいはずはない!と叫ぶ。
しかし女の子は必死に虐めていたのは私じゃないと涙ながらに話し、母親もこの子は虐めなんかしない、傷つけるなら私をと青年に懇願する。
それを見て、お前らが虐めを認めて謝るなら俺はこんなことはしなかった、とさらに荒ぶる青年。
メロはこの危険な状況の中で「どちらが救済対象」なのか悩みながらも決断をして行動を起こすのだが…。

│狭い中での常識が世界の常識の様になっているヘブンという場所。
まるでどこかの会社が学校を映し出しているようでゾッとせずにはいられない。

世間で称賛されている事、正しいとされている事とは何なのか?
加害者とは何か、被害者とは何か? 弱さとは? 辛さとは? 本当の事とは? 嘘とは?

メロという存在を通して語られるお話は、様々な普段は考えないようにしてしまっているような本質的な疑問を読者に投げかけてくる。
そしてまた物語全体に立ち込める何とも言えない違和感と不安がそれをさらに煽る。

その狭い中での常識が世界の常識の様になっているヘブンという場所での天使の考え方は、どこかの会社や学校の本質を映しているようで私はゾッとせずにはいられなかった。

『ヘブンの天秤』がこれからどのようなものを私たちに見せていくのか。
またメロは色々な経験をしていく中で一体どんな人物になっていくのか。

この作品はきっと読んだ人にとって確実に意味のある作品となるだろう。人生の中でこういう作品に出会える事を私は本当に嬉しく思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

ヘブンの天秤

1巻まで発売中

著者:浄土るる
出版社:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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