妻の死の理由を病により暴く。手に汗握るミステリー漫画!『めぐる未来』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│衝撃的な冒頭の展開に隠れた主人公「未来」の異常性

この作品の始まりは、マンションの屋上から人が飛び降りた瞬間を14歳だった頃の主人公「未来」が目撃するシーンから始まる。
そして未来はその飛び降りでぐしゃぐしゃになった人を見ながら、ただその人を助けたいと思っていた。

この最初のシーンでの未来の感情はありえない。
私は実際自分の2~3m前に突然人が落ちてきた経験がある。
もうちょっと早く歩いていたら激突したであろう近くに落ちてきたそれを、私はかなり長い間、人間であるという認識が出来なかった。
それを思い出してみても決して「助けたい」なんて思う事が出来なかった。通りかかった人に声をかけられてようやく救急や警察に連絡したがそれまで頭が真っ白になっていた。

人が飛び降り、地面にたたきつけられた瞬間にその場でただ純粋に助けたいと思えてしまう。
それ自体がすでにかなり異常な事なのだ。しかしそう彼が思えるのは彼がとある病に侵されていたからだと作品を読んでいくとわかることになる。
この彼の感情がどれほどリアルに描かれたものなのか。そこにこの作品の面白さのひとつが隠れている。

│人間の感情や行動の描写がリアルだからこその緊迫感。
めぐるの死の真相を知り彼女を助けたいと願う未来。

この物語は、未来が妻であるめぐると結婚して4年目のとある日から始まる。
明るい妻との幸せな生活の中でふと出た会話。もう34歳になる彼女の子供が欲しいという願いに、彼はとある理由から今のままでも充分幸せと否定をしてしまう。
それを聞いて明るくつくろう彼女の中にある寂しそうな笑顔に罪悪感を持つ未来。
子供を作ることに消極的な理由は彼のもつ病が子供に遺伝するから。そしてその特殊な病について彼は妻にも話せないでいるのだ。

そんな会話をした3日後めぐるは遺体となって発見される。

この物語はSFミステリー。
主人公未来が病により妻であるめぐるの死の真相を追い彼女を助けたいと願う物語。

誰が何故、妻を殺したのか。
そしてもう一つの読みどころとしては、主人公未来の人間性。病ゆえに彼を取り巻いてきた環境による人格形成などがかなりリアルに描かれ、彼が何故めぐるのような人を愛したのかもそれが直接描かれていなくてもとてもよく理解できる作品になっている。

未来を侵す病以外の要素をリアルに描いたゆえのミステリーの面白さ。ぜひ気になった方はこの作品をお手に取っていただき味わってもらえたらと思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

めぐる未来

1巻発売中

著者:辻やもり
出版社:芳文社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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