超美麗作画と圧倒的なリアリティで描かれる本格医療ファンタジー!『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│突然、医療が全く発達していない世界にたった一人で飛ばされてしまった医師の姿を描いた物語

日本は人口1,000人に対して医師の数が2.4人なのだそうだ。
これはOECD加盟国の中で下から5番目。
この数字をみて私は日本の医師の数が思ったより少ないと感じた。

しかし東アフリカ・タンザニアでは1,000人あたりの医師の数はなんと0.06人なのだそうだ。
ではもっともっと人口当たりの医師の数が少ない地があるとしたら。
そんな場所で医師はどうあるべきなのだろうか?

この『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』は突然、医療が全く発達していない世界にたった一人で飛ばされてしまった医師の姿を描いた物語だ。
タイトルこそ今時で、しかも舞台が異世界なのでどうしてもファンタジー要素が強い作品を想像するだろう。もちろんこの作品もその世界自体はファンタジー感満載であり、スライムやキマイラなどのモンスターも登場する。
しかし主人公である天海は、自らが身に着けていた医療技術以外は何も持たない、ただ目の前にいる傷ついた人をほっておけない医師の青年であり、彼に対しては特殊能力などのそういった要素は一切ない。

結論を率直に言えばこの物語はファンタジー世界を舞台にした本格医療物語なのだ。

│繊細な作画で描かれる圧倒的にリアルな手術シーン!!

『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』は、とても美しく繊細な作画で物語が紡がれていく。その綺麗な作画でリアルに描写される手術シーンは、圧巻で思わず息をのんでしまう。
よくモンスターに刺さった槍をサクッと抜いてモンスターに喜ばれる、なんてシーンがファンタジーものではある。しかし実際の所そんな簡単にモンスターに刺さった槍が抜けるものだろうか? そしてそんなにグッと抜いてしまいその後そのモンスターにとって、そしてそれを行った人物にとって下手をすると死に至ってしまうような最悪な事態、例えば感染症などになる事は無いのだろうか?

この作品でもキマイラに刺さった槍を抜き取るシーンが存在する。
しかしこの作品には患者以外のファンタジーはなく、「異物摘出術」まさに大手術と言える場面が展開されていく。麻酔など一般人でも何となく想像できる部分だけでなく、本当の意味でリアルな手術シーン。槍が動脈を傷つけていたために起きる予想外の事態や、その後の対応、目からも血液の中のウイルスが感染する可能性があるため、目まできっちり術後洗わないとなど、読んでいて勉強になるような細かな部分までしっかりと描かれていく。

医学が発達していない、そんな世界でたった一人の医師となった『天海』。
彼がこれからこの世界でどのように生きていくのか。

濃厚でリアリティのある物語と、それを描き切ることが出来る繊細な作画で紡がれていく、本格医療×異世界もの『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』。
ついに1巻が発売となったこのタイミングで、ぜひ気になった方はお手に取っていただけたらと思う。今本当にオススメしたい作品の1つだ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

高度に発達した医学は魔法と区別がつかない

1巻発売中

著者:瀧下信英、津田彷徨
出版社:講談社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

一覧に戻る