ハマる人続出!! スリリングで魅力的な復讐の物語。『悪役令嬢の中の人』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│残酷性が垣間見える瞬間、少しずつパズルのピースを埋めるように進められていく復讐の計画…

「悪役令嬢もの」というジャンルの作品は非常に人気が高い。
そのため毎月新作が多数登場しており、どの作品を読んだらいいか迷ってしまうという読者も多いだろう。

今回紹介したい『悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~』(以下:悪役令嬢の中の人)も、そんな悪役令嬢もののひとつであることはタイトルからもわかると思う。
しかし私はあえて言いたい。この作品は悪役令嬢ものをベースとしているが、今まで描かれてきたそれとはまったくの別物であると。
例えば、『デスノート』をジャンプで初めて読んだ時のような、ジャンプ漫画なのにジャンプ漫画とはどこか一線を画した存在。それが悪役令嬢ものにおけるこの作品なのだ。

まず漫画を担当しているのが「白梅ナズナ先生」であることは、私がこの作品を紹介する上で避けては通れないポイントだ。
私が愛してやまない『月見月理解の探偵殺人』という作品がある。
ライトノベルでありながら高いレベルでミステリーとして完成された作品でり、非常に難解でロジカルな要素が多い原作を白梅ナズナ先生はその魅力を余すことなく、洗練された表現で漫画として描き上げたのだ。原作も非常に好きだった私は、この白梅先生の描く『月見月理解の探偵殺人』を読んで受けた感動と興奮は今でも忘れられない。

そんな白梅ナズナ先生が、悪役令嬢ものでありながら複雑な設定とロジカルで繊細な物語性が魅力である『悪役令嬢の中の人』を漫画として描いている。

│これは愛するエミを裏切った全ての存在に復讐を誓い、エミを陥れた本来の主人公を死ぬ以上の地獄に落とすことを決意した悪役令嬢レミリアがエミを通して知った知識、持ち前の頭脳からそれをなそうとする物語

『悪役令嬢の中の人』は、とある悪役令嬢に転生した少女が大人になり、いわゆる断罪イベントを迎えるというシーンから始まる。
幼い頃に高熱を出して倒れた悪役令嬢レミリアに、その乙女ゲームの世界の知識を持った少女エミが転生する。そしてその持てる知識から周りの人間たちを救い、断罪イベントを回避するようなストーリーに変わっていく…この流れは、いわゆる悪役令嬢転生ものそのものだろう。
しかしこの作品の主人公はエミではない。転生した悪役令嬢レミリアなのだ。
レミリアはエミに体を奪われた後も意識があり、エミと記憶を共有し、そしてエミの優しさに触れ、姉妹のような存在として彼女を好きになっていった。

時は流れ、エミは持ち前の優しい性格から周りから愛される存在になり、ゲームの舞台である学園生活をおくっていた。そこに本来のゲームの主人公が現れる。最初は誰からも愛されなかった彼女だが、実は彼女も転生者だったのだ。知識や回りの人間たちの感情をコントロールするマジックアイテムなどを使い、学園を掌握。
エミを見事に断罪イベントに導いた。何をやっても信用されなくなり、心がギリギリの状態まで追い詰められていたエミは、この断罪イベントで全てに絶望してしまい心を手放してしまう。その瞬間、その体には本来の体の持ち主レミリアの意識が戻る…。

これは愛するエミを裏切った全ての存在に復讐を誓い、エミを陥れた本来の主人公を死ぬ以上の地獄に落とすことを決意した悪役令嬢レミリアがエミを通して知った知識、持ち前の頭脳からそれをなそうとする物語。
レミリアの悪役令嬢と本来至っていたはずの何とも言えない残酷性が垣間見える瞬間、少しずつパズルのピースを埋めるように進められていく復讐の計画の歩み。
まだコミックス1巻では、それがいったいどんな状況につながっていくのかも視えない伏線の数々が、本当にたまらなく読者の好奇心を煽っていく。

またそんなレミリアの存在に白梅先生の描く悪い笑顔が非常に似合い、スリリングでミステリアスな魅力を表現していく。

本作は第1が刊行されたばかりにも関わらず、じわじわと口コミで話題になり、色々な書店や電子書店のランキング入りを果たしている。
この面白さは他の作品では味わえない、まさに唯一無二の存在である『悪役令嬢の中の人』。気になった方はぜひ読むことをオススメする。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~

1巻発売中

著者:白梅ナズナ、まきぶろ
出版社:一迅社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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