最終話を読んであまりの感動に思わず書いてしまったレビュー!『タコピーの原罪』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│丁寧に描かれた細かな描写の数々がこの最終話までの今までの物語を思い起こし、涙が出てしまうのを必死にこらえてしまうほど私は感情を揺さぶられた。

結論から言えば『タコピーの原罪』最終話は私にとって「タコピー以前かタコピー以降か」という言葉が心に生まれてしまうほど凄い作品だった。

このレビューを書く前にちょうど更新された『タコピーの原罪』の最終話を読んでしまい、あまりの感動にもう他の事が考えられなくなってしまったので、今回は気持ちが冷めやらぬ中このタコピー最終回について書かせていただきたい。

この最終話、衝撃的や物語的ではない、読者の感情を無理やり引き出すような派手な演出があるわけではない。
しかし、丁寧に描かれた細かな描写の数々がこの最終話までの今までの物語を思い起こし、涙が出てしまうのを必死にこらえてしまうほど私は感情を揺さぶられてしまった。

例えばこの物語の二人のヒロイン、しずかちゃんとまりなちゃんのボールペンを指さす爪の長さだけで二人の今を思い起こさせたり、二人で歩く後ろ姿でしずかちゃんはまりなちゃんに手を伸ばし、まりなちゃんも少しだけ手のひらを広げしずかちゃんの伸ばした手に応えようとしていたり、以前の未来のしずかちゃんとは違い最終話の未来のしずかちゃんの制服のリボンが少し緩んでいたり。
その全てが今までのタコピーを読んでいる読者に涙腺が緩んでしまうほどそこにあるそれまでの二人の関係を想わせるものになっている。

今まで多くの読者を惹きつけ人気作と呼ばれてきた作品は「今泣くところ」「今盛り上がるところ」「今面白い所」などわかりやすく提示される感情表現を多大に使ったものが多かった。
しかし小説読みが言う“行間を読む”というものと同じように、そこに描かれた小さな描写からそこにある物語を読者が想像し、それを漫画の表現として楽しめる作品が最近は大きな人気を得るケースが増えてきた。

まさに『タコピーの原罪』はそんな作品の代表作と言えるのかもしれない。
ひとコマひとコマに込められた情報量の多さで物語をそれぞれの読者の中で完結させるとでもいうのか……本当に「凄い」の一言だった。

もうすぐ下巻が発売となるが、上巻、下巻通してまたじっくり『タコピーの原罪』を読み込めることが今楽しみで仕方がない。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

タコピーの原罪

上巻発売中、下巻4月4日発売

著者:タイザン5
出版社:集英社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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