犯した罪の重さを自分自身と引き換えに知る償いの物語。『償い魔法少女カレンザ』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│そして彼女は「言葉通りの意味」での自分自身と引き換えにその罪を償う手段を手に入れる

『償い魔法少女カレンザ』の表紙は、綺麗な夕暮れの中で高校の屋上のような場所でスマホを見る仲のよさそうな女子高生二人が描かれている。
タイトルは強調されておらず、一目見るだけだと思わず緩やかな日常ものの作品だと思うデザインだろう。
しかしこの作品を一ページめくるとそこに描かれているのは、切り落とされてしまったような腕と足で涙を流しながら歩いている三人の苦しそうな少女の姿。
真ん中にいるのは表紙でほほ笑んでいた少女のひとりヒナ。

表紙から受けるイメージとは違う、あまりに悲惨な姿に思わず驚いてしまう読者は多いだろう。続けて語られていく日常のシーンも表紙で受けるそれとはあまりに違うガールズバーのような場所で、嘘のような笑顔で接客をするヒナに戸惑わずにはいられない。
それはむしろ同じ人物なのかと疑ってしまうほど。

この少女「ヒナ」の目を疑うような変化は何故起きてしまったのか?
第1話ではその理由、そして彼女は「言葉通りの意味」での自分自身と引き換えに、その罪を償う手段を手に入れるまでが描かれていくのだ。

悲しい運命を背負った魔法少女作品は『魔法少女まどか☆マギカ』以降多数世の中に生まれてきた。主人公を含む少女たちが魔法少女として自分たちの置かれた残酷な運命に立ち向かう姿は、悲しみの中で勇気を与えてくれるものだと思う。
しかし『償い魔法少女カレンザ』の少女たちが背負っているものはそれとは少し異なっている。タイトルにある「償い」の言葉の通り、カレンザで少女たちが背負うのは自分たちの犯した罪だ。

│幸せな時間を取り戻したいと願う心と、どうしようもない罪悪感。

表紙のイラストを先に見せる事でヒナの今の感情と、ヒナと共に表紙で笑う少女「ユキ」の感じた絶望や苦しみを何倍にも膨れ上がらせ読者の心を揺さぶる。
正直な所、私自身1巻を読んでいてユキの置かれた状況には目を伏せたくなるほどだった。
まだ1巻しか読んでいないのにここまで感情移入出来てしまうのは、表紙のイラストによるところが非常に大きいように思う。

かなりキツイ描写もあり読む人を選ぶ作品である事は間違いない。
しかしヒナの感じた罪悪感とそこにある本気のユキへの償いの想いに何も感じないという人はいないのではないだろうか?

迎える未来に完全なハッピーエンドはないだろうが、表紙の幸せな時間を少しでもヒナとユキが取り戻せたらと思わずにはいられない。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

償い魔法少女カレンザ

1巻発売中

著者:下内遼太、宮月新
出版社:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

一覧に戻る