感情の再現が上手すぎてめっちゃ恋がしたくなるっ…!『つむぐと恋になるふたり』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│本を開いて数ページ、気が付いたころには自分の中に紬という少女に共感や感情移入が完成され、もうこの『つむぐと恋になるふたり』を読むことを止められなくなってしまうのだ。

タアモ先生の漫画は数ページ読むとその作品がどんな内容なのかすぐにわかる。

ページをめくるとそこには主人公のモノローグとそれをイメージできるようなイラストが描かれており、それだけで主人公のキャラクター性に触れられるようになっている。短い文章の中に人となりをイメージできるような言葉がしっかりとちりばめられ、それが嫌味なく自然に頭に入ってくる。例えば子供のころ何かを見て理屈なく素敵だと思った瞬間のように自然とそれを理解できるそんな始まりがタアモ作品なのだ。

現在『デザート』で連載中の『つむぐと恋になるふたり』も同様に、主人公である女子高生の紬が一人でいる事がなぜ好きかを紡ぐ言葉で物語が始まっていく。そしてそんな言葉に合わせコマの中では「この小説も最高だった…!」と身を震わせるほど感動し目を輝かせている紬が描かれる。

ひとりが好きで、「この小説も」というという事は定期的に小説を読むほどには本が好きで、「最高だった…!」と感動を素直に表す真っ直ぐな子であると最初のたった2ページで読者は紬の性格を知る事が出来るのだ。

そしてそこから彼女が周りからどう思われているのか、そして過去に何があり、彼女という性格が形成されたのかを本当に数ページの中で説明となるものはほとんど無しで、いつの間にか読者は知ってしまう事になる。

そしてその頃には自分の中に紬という少女に共感や感情移入が完成され、もうこの『つむぐと恋になるふたり』を読むことを止められなくなってしまうのだ。

│少女漫画は「恋をするというストーリー」を楽しむものではなく、読むことで「恋をする過程」を楽しむもの

作品紹介レビューという形式上、本当はここでこの作品がどんなストーリーなのかを書かなければならないとも思うのだが、少女漫画、特にタアモ先生作品に関してはストーリーを文字で紹介するというのは避けたいと思ってしまう。それがなぜかというと、少女漫画は「恋をするというストーリー」を楽しむものではなく、読むことで「恋をする過程」を楽しむものだから。特にそれがタアモ先生作品には強く、ストーリーを文字で読んだり聞いたりするのと、実際コミックスで読むのとでは感じ方が全くちがうのだ。

多くの恋の感情を1枚の絵と言葉少なめな一言だけで伝える。
逆にその表現でしか伝わりっこない感情を読者に与えてくれるのだ。

ちなみに今回紹介した『つむぐと恋になるふたり』と同時発売の『愛しの彼女は隠れオタク』はそんな最高の表現力で描かれたオタクショートギャグ作品で、思わず笑いを止められなくなるほど面白いのでこちらも一緒に楽しんでいただきたい。

一度読みだしたら抜けられなくなるタアモ作品ワールドをぜひご堪能いただけたらと思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

つむぐと恋になるふたり

1巻発売中

著者:タアモ
出版社:講談社

愛しの彼女は隠れオタク

1巻発売中

著者:タアモ
出版社:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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