涙を流さずにはいられない。1400年前の悲しい恋の物語。『トニカクカワイイ』22巻【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│それは1400年前、ある日、竹取の翁が竹藪の奥で光る竹を見つけるところか始まる切なくて寂しい恋物語。

『竹取物語』は日本でもっとも有名な物語の一つだろう。
かぐや姫を中心として書かれたそのお話は、遠い昔から現代まで多くの人を魅了してきた。

『トニカクカワイイ』は長い時を生きてきた超美少女・司ちゃんと、その司ちゃんを大好きなナサ君の愛溢れる日常をメインに描いたラブコメだ。
笑いとドキドキをいつも提供してくれる本作なのだが実はもう一つの側面がある。

詳しくはネタバレになるので語るのを避けるが、人間が生き、関係を作っていくという事の本質をこの作品は描いており、その側面を知る事で普段の甘々なラブコメパートが「良かったねぇ……」と感動せずにはいられないほど深みを増してしまうのが『トニカクカワイイ』の大きな魅力の一つだ。

そんな『トニカクカワイイ』
ちょうど作者の畑健二郎先生の20周年を記念する21巻収録の第197話から22巻209話まで物語の核心部分にも近いであろう過去のお話しが描かれた。
それは1400年前、ある日、竹取の翁が竹藪の奥で光る竹を見つけるところか始まる切なくて寂しい恋物語。

│「ほとんどの場合人の死は悲劇」

出会った瞬間に一目ぼれして思わず告ってしまった結果、輝夜に思いっきりフラれた帝がまだ人だった頃の司ちゃんにアドバイスをもらいながら、輝夜に何とか好きになってもらおうと頑張る思いっきりラブコメな前半と、そして日本一有名な物語の一つであるがゆえにほとんどの読者が知っているその恋の切ない結末までを描いたこの物語。

はまさに「ほとんどの場合人の死は悲劇」と涙を流す司ちゃんの想いと同じ感情がこれを読んだ読者のほとんどは胸に刻まれた事だろう。

この1400年前の恋物語は22巻のみでも楽しめるよう構成が組まれている。
このタイミングで『トニカクカワイイ』を紹介させてもらったのは、20巻を超える作品となると1巻から読み始めるのはなかなかハードルが高いと思うが、私はこの22巻から読むという読み方をオススメするべきだと思ったからなのだ。

この22巻に収録された物語には『トニカクカワイイ』の魅力が濃縮されており、この巻を面白いと感じた人は間違いなく『トニカクカワイイ』全編を楽しめると断言できる。

ちなみに今回の個人的な押しポイントとして、まだ人だった頃の司ちゃんが帝に紙に手紙を書くことを提案する場面がある。このシーンが私はとんでもなく好きだ。
紙に想いを綴る事をオススメしたその理由から、最新のものを取り入れながら古いものを再構築するという発想自体。そして最後にわかる物語として2度目に読むときは涙を流さず読む事が不可能になるほどのこのシーンにある大きな意味。
このシーンにもぜひ注目をしながら22巻を読んでいただけたらと思う。

特殊なオススメの仕方かもしれない。
だが私は『トニカクカワイイ』が気になっていたけど長いからなかなか手を出せないでいた方はぜひこの22巻をまずは読んでみる事を強く推奨したい。
そして気に入ったあなたにはこの冬の一気読みのおともにぜひ全巻楽しいでもらえたらと思うのだ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

トニカクカワイイ

22巻まで発売、21巻までレンタル中

著者:畑健二郎
出版社:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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