ヤンキー男子の永遠に揺るがない優しい瞳に恋がしたくなる!!『ひかえめに言っても、これは愛』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│私はどうしても「絶対的に一途なヒーローである事」を少女漫画には求めながら読んでしまう

恋愛をテーマにした少女漫画を読むときに何を求めるか。

読む人によってそれはもちろん異なると思うが、私はどうしても「絶対的に一途なヒーローである事」を求めながら読んでしまう。
主人公である彼女をどこまでも真っ直ぐ好きでいながら、誰からも持てるようなカッコよさを保ち続けるというのは、まさにファンタジーだからこそ叶う理想のヒーロー像だ。

「天川理沙」は人に頼ることが苦手な女子高生。頼ってねって言われても素直に頼ることが出来ず、その性格ゆえになんでも自分で解決する事が身につき、それゆえに周りからはなんでもできる、そんな風に思われている。

そんな彼女はある時、雨の降る公園で傷だらけで倒れている男子高校生を見かけ、彼に声をかける。いつも持っているであろう折り畳みの傘とタオル、そしてその場所から歩いて行ける緊急外来の病院の住所を彼に渡し、その場を去る。

それから数日後、彼女の前に突然あの雨の中傷だらけで倒れていた彼「禅」が現れる。
禅は、あの時のお礼に今度はオレがあんたの力になりたいと伝えるのであった。

│少女漫画は吹き出しのないコマにこそ心情が溢れている。この『ひかえめに言っても、これは愛』はそんな要素が特に多い作品だ

この作品の主人公である天川理沙は、多くの人が今の時代で感じている人付き合いの難しさを体現しているように感じた。
人に頼るのが苦手な事を表しているひとつひとつのシーンも、そんな自分に対して自分自身の性格を悔やむシーンも、そこに共感し想いを重ねる読者は少なくないと思う。
ギャグシーンとして描かれている禅が近くに寄ると異常なほどに避ける仕草も、人と必要以上に距離が近くなる事に臆病な気持ちの表れとしても受け取れる。

そんな人付き合いに臆病になっている彼女の心にズケズケと入り込んでいく禅。
文章でこれだけ書くと「ちょっと気に行った女をひっかける悪い男」にも聞こえるだろう。しかしこの作品を読んだ読者は、誰一人としてそう思った人はいないのではないだろうか。

その理由は理沙を見つめる禅の表情、もっと言えば瞳の優しさだ。
多くの読者が、この彼女を見つめる瞳に禅の想いは永遠に揺るがないと感じただろう。
目を奪われるほどこの禅の表情には優しさと想いが溢れているのだ。

少女漫画は吹き出しのないコマにこそ心情が溢れている。
この『ひかえめに言っても、これは愛』はそんな要素が特に多い。

ぜひ集中して読める週末などにこの世界観にどっぷりと浸かり作品を堪能していただけたらと思う。

今かなりオススメの1冊だ。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

ひかえめに言っても、これは愛

1巻まで発売・レンタル中

著者:藤もも
出版社:講談社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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