これは別れが約束されている少年とロボットの恋の物語『ココロのプログラム』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】 Tweet │少年が少しづつ大人になり、心の成長と共にいちこへの想いが募っていく。そんな瞬間瞬間を綺麗で繊細なイラストで切り取り描いていく 人間そっくりのロボットの物語というのは時代を超えて多くの作品が誕生し、人を魅了する。『ココロのプログラム』もそんなロボットとの日常を描いた作品だ。ある夏休み、母と暮らす少年の元に人間にそっくりのロボットがやってくる。ホストファミリーという、ロボットに心を理解させるためのホームステイ制度。成長段階の子供と過ごす中でロボットは心のプログラムを学び、また一人親のサポートをロボットがする事で家庭も助かる。心のプログラム完成までにかかる期間は5年から8年。人間の少女そっくりな見た目のロボット、いちこと少年九。心を学ぶためロボットであるいちこも九と同じ小学校に通うようになる。1巻ではそんな小学校時代と中学に入学するまでが描かれている。少年が少しづつ大人になり、心の成長と共にいちこへの想いが募っていくそんな瞬間瞬間の感情を、中村ひなた先生が綺麗で繊細なイラストで切り取っていくのだ。 │繊細な表現で魅せるココロのプログラムの成長と少年の成長。そして募らせていく恋心 ロボットであるいちこの背は九の母親と同じくらい。1話目の初登場時は、着ていた服もあって高校生くらいの少女の印象を受けた。九との出会いから夏休みの日々、九と心を通わせるエピソードが描かれる第1話の冒頭では、漫画やアニメでは自然と感じる、例えば「秘密だよ」とひとさし指を唇に沿えるラブコメヒロインのような感情表現を彼女は取る。笑顔もヒロインそのもののハニカミながら読者をキュンとさせるような表情。もちろんこの作品も漫画なわけなのでそこに違和感は全く感じない。しかしそこから2話目以降小学校へ通う中でそういったラブコメヒロインのような表現は少なくなり、どこか不安げな表情や仕草が増えていく。鞄のひもをギュッと握るような繊細な感情表現をするようになるのだ。その一つ一つがココロのプログラムの成長を感じさせ、そしてそれと同時にプログラムの完成は九といちこ二人の別れの日も暗示させるのだが…。私はこの『ココロのプログラム』はアプリ連載でも読んでいたのだが、紙のコミックスで読んだことでよりこの作品の面白さにどっぷりハマってしまった。スマホでサクッと読むのではなく、1冊の本として没入して読むことによりその魅力を発揮するタイプの作品であると私は思う。第1話冒頭、いちこといちこの背を大きく抜き成長した九の姿が描かれている。この未来がどんな未来なのか想像しつつ、この作品を読んでいきたいと思う。 (文:仕掛け番長) │仕掛け番長のおすすめ本 ココロのプログラム 1巻まで発売中 著者:中村ひなた出版:集英社 商品検索 商品検索 作品詳細 【コンシェルジュ】仕掛け番長 栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』 Twitter(@maron_rikiya)