ストーカー義妹の見せる変化。物語は2巻で大きく動く!『群舞のペア碁』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│大好きな人、いつも一緒にいた義兄。幼馴染…。そんな二人だけの強い関係性からストーカー行為をしてしまうほど一途に群舞を思い続けてきた叶海の見せる変化

『群舞のペア碁』の2巻が発売となった。
1巻の時点から高木ユーナ先生の新作という事で注目をしていた本作。
私は、この作品は自分の気持ちを伝えるのが上手くない少年が囲碁を通して多くの人と繋がりを持ち、強く成長をしていく人間ドラマものであると考えていたのだが、2巻を読んでその考えを改める事になった。

主人公である「群舞」
彼を支えるヒロイン群舞のストーカー件義妹の「叶海」

1巻では絶対的に群舞を偏愛している叶海の姿が描かれ、彼女は囲碁の場でもその偏愛と異常な頭の良さから、群舞と亡くなった囲碁のプロであった群舞の師匠で叶海のおじいちゃんである「白」とが打っていた棋譜を全て覚えている事を強みに、囲碁素人でありながら群舞とのペア碁であれば異常な強さを発揮するという場面が描かれていた。

全てそんな囲碁ですら自分の恋敵と断言するほどの群舞への愛ゆえのものだ。
それを表すかのように1巻では「好き」という言葉や表現が溢れまくり、それこそ群舞の気持ちなどお構いなしに気持ちをぶつけていた。
それこそ思いっきり一途に。他の者には目もくれず。

しかし2巻ではそんな彼女の姿が違って見えてくる。
もちろん彼女の中心には群舞がいる事は間違いない。しかし少しずつ「それだけではなくなっていく姿」が描かれていくのだ。
大好きな人、いつも一緒にいた義兄。幼馴染…。そんな二人だけの強い関係性からストーカー行為をしてしまうほど一途に群舞を思い続けてきた叶海。
彼女はペア碁を群舞と打ったことをきっかけに少しずつ変わって来ていたのだ。
それが明確にわかるシーンが2巻に描かれている。
見開きで引きの場面に叶海の自分の気持ちがこぼれ落ちたような「一言」
非常に印象的に描かれたこの場面は読む者の心を掴みその後の展開に一気に引き込む者になっている。

『群舞のペア碁』は群舞とヒロイン叶海二人が囲碁を通して自分たちの世界を広げ、そして「二人の関係を深めていく」物語だ。

│第9話の気持ちの引っ張りの強さ、そして一気に世界が開け晴れわたるような感動は、まさに高木ユーナ先生作品だからこそ味わえる感覚のそれだ

私は今まで高木ユーナ先生の魅力はジェットコースターのような感情の動きでそれこそ「細かいことはどうでもいい!」というような想いきりの良さと、繊細な切ない想いの絡み合いが魅力だと思っているが『群舞のペア碁』ではそんな表現は少ない。
だがしかし2巻の最後に収められた9話の気持ちの引っ張りの強さ、そして一気に世界が開け晴れわたるような感動は、まさに高木ユーナ先生作品だからこそ味わえる感覚のそれに他ならなかった。

『群舞のペア碁』は一度読んだだけではなかなか登場人物の感情を全て理解するのは難しい作品だろう。特にヒロイン叶海の感情は、真っ直ぐな様で複雑で何度も読むことでようやく裏側にある想いに気が付けるだろう。
特に9話を読んでから1話から読み返すとその気付きはひとしおだ。

この9話の後にどんな物語が紡がれていくのか。
3巻以降の展開が本当に楽しみで仕方がない。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

群舞のペア碁

2巻まで発売、1巻までレンタル中

著者:高木ユーナ
協力:公益財団法人日本ペア碁協会
監修:藤沢里菜 女流四冠
出版:双葉社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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