明確な答えが示される驚愕のループミステリー『はっぴぃヱンド。』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│のんびりした日常のシーンの中に隠されたひとつひとつのピースがつながり大きな答えへとつながっていく

1997年初夏、なんやかんやで姉の住むド田舎に引っ越してきた中学二年生の少女茜。
彼女がそんな田舎で姉が教師をしている分校に通いそこで出会った仲間たちとのほのぼの物語…。という感じで幕を開けるこの作品は1話目ラストから一気にその表情を変える。

全5巻で完結している本作は、最初から最後まで綺麗に伏線が施され、明確な答えが提示されるループものSFミステリー漫画である。
ほのぼの描写とホラー的な展開の描写の高低差半端ない表現の変化や、のんびりした日常のシーンの中に隠されたひとつひとつのピースがつながり、大きな答えへとつながっていく。

│『はっぴぃヱンド。』はミステリー的な目線で見て納得のできる結末が用意されている、数少ないループ作品のひとつだ

ループものというテーマの作品は『STEINS;GATE』や『ひぐらしのなく頃に』など人気作も多く、一つのジャンルとしてファンを獲得している。
ループものはループしている世界からの脱出方法や、何故ループが起きているかというループそのものへの考察、最も幸せな未来へ進むための答えを導きだすまでの過程など人気の理由を考えると止まらなくなるほど魅力が多いのが特徴だろう。
しかし意外にも、結末で答えが提示されない作品も多く、エンタメとして面白くてもミステリー作品として納得のいくものは少ないように感じる。
そんな中で『はっぴぃヱンド。』はミステリー的な目線で見て納得のできる結末が用意されている、数少ない作品の1つだ。

その納得のいく結末はループが何故起きているのかだけではなく「ループがどうやって起こされているのか」「ループからの脱出が何を意味するのか」「この世界は一体何なのか」などその全てに明確な回答が用意されており、さらに犯人当ての要素として「ループを起こしているのは誰か?」にもしっかりとした答えが作中で明かされるのだ。

ちなみに私は無事犯人当てには成功したのだが、その他の部分で色々考察ミスをしていた。
ヒントが伏線として提示されていたりするのに読み返して気が付いて「あぁー!」と悔しい思いが込み上げてくるのは、まさにミステリーならではの楽しみなのだが…。しかし悔しい(笑)。

『はっぴぃヱンド。』はループものをよく好んで読む漫画読みなどの間では非常に有名な作品なのだが、まだ一般読者まで名前が知られている作品にはなっていないと感じる事が多い。
完成度も高く、読みやすい絵柄で非常に楽しめるオススメの作品なので気になった方は是非一度お手に取っていただけたらと思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

はっぴぃヱンド。

全5巻発売、レンタル中

著者:有田イマリ
出版社:スクウェア・エニックス

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

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