今年のゴールデンウィークは最大で9連休! 5日出かけても4日は映画をみてだらだらする日をつくれますね……連休最高! ということで今回は、時間をたっぷりかけて考察するのにオススメな映画をご紹介いたします。
ご紹介する『NOPE』の監督であるジョーダン・ピールさんといえば、『ゲットアウト』や『アス』で一躍ブレイクした今最も注目されているホラー映画監督です。最近ではドラマ『トワイライトゾーンジョーダン・ピールていたりと、目覚ましい活躍をしている彼の最新作とあって公開当初はホラー界で大注目されていました。それまでの経歴は前述した映画2本を撮ったきりでしたが『NOPE』撮影時は多額の出資を受け、ハリウッド超大作を撮ってきたメンバーを迎えています。中でも注目されていたのは『TENET』や『インターステラー』も担当していた撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマさん。まさしく作中に出てきた「不可能を可能にする」撮影技術で、全く新しいSFホラー映画を完成させました。
ジョーダン・ピール監督といえば!な演出として『アス』でも謎の男が掲げるボードに旧約聖書の引用をしていましたが、今回の作品でも冒頭にナホム書第3章6節として以下の引用がありました。
And I will cast abominable filth upon thee, and make thee vile, and will set thee as a spectacle.
わたしはあなたに汚物をかけ、あなたを辱め、あなたを見せ物にする
今回の作品は「見せ物」というテーマを扱ったストーリーだという明確な提示。この旧約聖書の言葉は、かつて暴力のみで国を支配していたアッシリア帝国に対して神が言ったとされているようで、不当に支配している者への鉄槌ともとれる言葉です。
今までの監督作品では、こうした隠されたメッセージが分からなくても人種差別や階級差別というテーマがキャッチーだったため作品を楽しむことができましたが、今作はこのメッセージが明確でないと「?」となってしまう可能性が高いため載せておきます。
監督は本作を作るにあたって、影響を受けた作品に『ジョーズ』や『オズの魔法使い』、『未知との遭遇』を挙げています。メイキングインタビューでも「『ジョーズ』の水の中での恐怖を、雲の中で作りたかった」と語っており、竜巻を発生させるUFOが登場していたりと、名作からのアイディアはそこかしこにあります。
動かない雲に隠れる謎の存在、それを解明するために奔走する主人公兄妹(OJとエメラルド)と仲間たち。南カリフォルニアの周りに山しかない土地で馬と一緒に育ったOJだからこそできた、一方的な支配ではなく互いを尊重する考え方ができるかどうかというテーマをまさかのUFO登場で描くとんでもSFホラーとなっています。馬と相対するときは絶対に正面や後ろから近寄って行かずに、馬の視界に入るように横からそっと近づくような優しさが、つまりは最強なわけです。
この作品を「あまり怖くない」と話す人もいますが、実際に過去に起きた猿の事件をオマージュしていたり、閉所恐怖症の私としては戦慄するシーンがあったりと、ホラー要素は満載。こうした作品を見た後は、NG集を観るとホッとするのでオススメです。私の問題のシーンはこれで撮影裏を知ることができたのでだいぶ安心しました。笑
この監督の作品を楽しむ方法として、他にもオススメしたいのは登場するモチーフにも注目してみることです。『アス』の時にはオープニングのシーンに作品全体を示す意味のある物をごちゃごちゃっと配置されていたことが鑑賞した後にみると判明して驚いた経験があったので、今回もあるのかなと探すのが楽しかったです。
例えば、OJとエメラルドの仲間として加わる監視カメラ担当のエンジェルが着ているTシャツには「earth」と書かれていてその後に「俺たちは地球を救うんだ」という台詞があり、この偶然は狙っていたのではと睨んでいます。
後半では兄弟の家に飾ってあるポスターの西部劇映画に登場するカウボーイの姿に兄OJの姿が重なったり。探せばキリがないほど、この監督は作品の中にこうした伏線を置いているのでじっくり観ているとさらなる新しい発見があるかも知れません。
さらに作中のキーワードとして「Bad Luck(最悪の奇跡)」という単語が出てきていました。空から降ってきたコインが当たって父を亡くしたOJが、この悲しい出来事をそう表現していましたが最後に彼が乗る馬の名前はLuckyです。最悪の奇跡で父を失った彼が、最後に「奇跡、幸運」と一緒に駆け出す姿はとてもいい対比になっています。
一つずつのシーンを語っていたら、とてもとても終わらないくらい考察のしがいがあるジョーダン・ピール監督の最新作。ぜひ、連休のお供にゆっくり鑑賞するのはいかがでしょうか!
製作年:2022年
監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンコット ほか
【Editor】septmersfilms
三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!
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