タイムリープするSFホラー!伏線盛りだくさんな謎解きと正体不明のホラーのミックス…映画『ハウンター』

HAUNTER (COPPERHEART) PRODUCTIONS INC. (C)COPYRIGHT 2013

│ハウンター

気づいた時には、もう出られない。

<あらすじ>
霧の深いある朝、リサは奇妙なことに気づく。 朝から昨日と同じことの繰り返しなのだ。トラ ンシーバーから響く弟のモーニングコール、 母の作る食事のメニューに、調子の悪い洗濯 機。そしてガレージで車を修理する父。何から 何まで昨日と同じなのだ。そして彼女は、自 分が 16 歳の誕生日の前日を毎日繰り返し過 ごしていることに気が付く。しかし、庭の外に 出ようにも、なぜか外に出られない。一体何 が起きているのか?彼女が家中を調べ始め ると、その家に住む“もう一人の少女”の存在 に気が付き、ある驚愕の真実にたどり着く。し かしそれは、少女の孤独な戦いの始まりに過 ぎなかった…

│タイムリープする原因は…?謎が深まる設定!

肌寒くなってきて夏とは違ったホラーの楽しみ方ができる季節になってきましたね。夏といえばキャイキャイ騒ぐ人たちに忍び寄るホラー!やアジアではジメジメしたホラー!という感じですが、秋冬はしっとりとした怖さが沁みます。

今回ご紹介する『ハウンター』は2013年にカナダ、フランスによって製作された作品で通常のホラー作品とは少し違った設定が特徴です。ホラー作品といえば家に幽霊が憑いていたり、幽霊がいる場所に行ってみたりすることによって主人公が恐怖に支配されていくのが大筋ですよね。ところがこの作品は始まった直後からタイムリープが始まっているのです。

タイムリープといえば日本で有名な『時をかける少女』や、ホラー好きからの支持が厚い『ハッピー・デス・デイ』シリーズのような同じ時間を繰り返し体験する現象を指しています。どの作品でも主人公が同じ1日を繰り返して「あれ?なんで同じ時間になってるの?」となるのが一般的です。ところがこの『ハウンター』では開始当初から主人公のリサは自分がタイムリープしていることに気づいているのです。(そしてなんと解決することを諦めているのです。)

なんとなくこういった設定だと、観客と主人公が同じ目線で現象に対して向き合って「何が原因なんだろう?」「なんだこれ?」というような感情を共有していく流れをイメージしますが、このリサは「はいはい、またこの日ですわ。」というテンション。観客だけ「???」という状態です。

15歳最後の日、明日が16歳の誕生日という日を気付けば1週間ほど繰り返していたようで「洗濯物は冷水でね」「お昼はマカロニチーズで、夜はミートローフね」「クラリネット吹いてたら呼ばれるね」というように1日の全ての流れを記憶していました。

しかしある日、いつもは起きない夜中に目を覚ますと自分の部屋の前に誰かが立っているのが見えました。そして別の誰かが「リサ!」と呼んでいます。怖くなったリサは目を瞑り、翌朝目を覚ますとまた同じ朝が来ていました。母親に言われた通りに洗濯物をしているとまた「リサ!」と呼ばれる声。さらに以前から気になっていた洗濯機の後ろを覗くと小さな扉があるのでした。一体この扉はなんなのか?誰が名前を呼んでいるのか?なんでタイムリープしているのか?分からないことは降り積もっていきます。

│えげつない数の伏線と後半の回収

前述している通り、最初から登場人物は状況を理解しているので観客はついていくのに必死という感じです。これはどことなく『テネット』を初めてみた時と同じ感覚でした。この会話の意味あるのかな、というものが全て後半に回収されていくのは爽快感を感じるほど。これも『テネット』と似たものを感じました、こういうパズル的要素のある作品は少ないのでたまに鑑賞するとスッキリしていいですね。

例えばなぜ、家の周りの霧がひどくて外に出られないのか?序盤から「外は霧がひどくて危ないからでちゃダメだよ」と母親に言われたり、ニュースでも霧の状況を伝えているシーンがありました。なんとなくの演出で外に出られないようにするためなのかな〜くらいで思っていましたが、後半で「そういうことか…!」となるので注目してください。

もう1つ上手いな〜と感じたのは、「お昼はマカロニチーズで、夜はミートローフね」という台詞です。序盤はそれを逆手にとって、同じメニューでうんざりするリサの姿を映すという茶化すようなシーンに使っていましたが、後半になると今マカロニチーズを食べているからこの時間帯か…という時間の流れの指標になっていることに感心しました。同じ毎日の繰り返しで、終始画面が暗いので今どこの場面なのか?昼なのか夜なのかがこんがらがることになってしまうのをこの演出で整理しているのがニクイです。こうしたなんとなく言っている台詞やアイテムが後半に効いてくるのはこの映画の強さです。

この作品を手掛けるヴィンチェンゾ・ナタリ監督の他作品といえば『CUBE』があります。こちらも設定が急に箱の中で目を覚ました人が抜け出すために移動を続けるという他にないものでした。この監督は他の作品では見られない不思議なストーリーが多いのですね!最新の『イン・ザ・トール・グラス』でも、ただ背の高い草むらに迷ってしまうという状況だけであんなに怖い作品が作れるかね??という唸ってしまうような設定でした。一癖あるホラー作品が観たい!という方にはかなりおすすめの監督なのでぜひチェックしてみてください。


ハウンター

製作年:2013年
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演:アビゲイル・ブレスリン、スティーヴン・マクハティ、ミシェル・ノルデン ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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